言葉の意味として「播種(はしゅ)」とは、"種をまく"という意味です。
大腸がんの場合、がんが大腸の壁に深く食い込んでいくと、やがて壁を突き破って、大腸の外側に顔を出すようになります。
すると、ここからがん細胞がおなかの中の空間(腹腔)へこぼれ落ち、そこで増殖することがあります。
胃や腸など、おなかの中にあるさまざまな臓器は、腹膜という膜にくるまれた状態で
おなかの中に収まっています。
この腹膜に種をまくように、おなかの中全体にがん細胞が散らばり、しこりをつくったり、表面から水を出したりするようになります。
これを「腹膜播種」または「がん性腹膜炎」と呼びます。
腹膜に転移したがんが大きくなると、内臓を圧迫して食べものや便の通りが悪くなったり、播種を起こしたがんが出した水(腹水)がたまり、おなかが張って苦しくなったりします。
大腸がんからの腹膜播種
播種はがん細胞が散らばって広がるタイプの転移であり、だいぶ進行した場合に起きてきます。
最初は無症状ですが、進行すると、おなかの振り(膨満感)、痛みを感じたり、便秘があらわれたりします。
おなかが張る原因は「腹水(ふくすい)」がたまってくるからです。
これを腹水貯留といいます。
おなかがふくらんでいるので腹水を採取して検査したところ、がん細胞が見つかり、腹膜播種がわかることもあります。
腹膜播種が進行すると腸管の圧迫や狭窄、閉塞を引き起こします。腹水貯留や腸閉塞を起こすと、食事をとれなくなり、衰弱が進むこともあります。
大腸がんが腹膜転移した場合の診断と治療法
腹膜への転移は超音波画像やCT、MRIなどで診断しますが、病巣が小さいため早期発見は容易ではありません。
腹腔に穿刺針を刺して腹水を採取し、腹水中にがん細胞が見つかって診断されることが少なくありません。
治療法として腹膜転移がーか所に限局していることが明らかである場合は切除手術を提案されることがあります。
(播種によって、腸に狭いところができて食事がとれなかったり、吐いたりするなど、つらい症状があるときは、症状を和らげるための手術(バイパス手術や人工肛門を造設する手術)を行うこともあります9
腹膜転移は腹腔内にいくつも散らばっていることが多いので、切除の対象となるケースは少なく、全身化学療法(抗がん剤などによる薬物治療)となることがほとんどです。