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50.症状と対処法

がん闘病中に生理が止まる、こない。考えられる原因と対策は?

婦人科系のがん(子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がん)の治療中に、生理が止まったり、生理が来なかったりする、いわゆる「月経停止(無月経)」「閉経」の状態になることがあります。

主な原因となるのは手術による卵巣機能の低下や喪失、抗がん剤やホルモン剤の副作用によるものですが、それだけが理由ではありません。

この記事では、がん闘病中に起る生理停止や閉経の原因や、実施可能な対策や治療についてまとめています。

※医療用語としての「月経停止」とは?

これまであった月経が停止すること。妊娠、出産、授乳のような生理的無月経以外で3か月以上停止したものを連続性無月経と呼ぶ。「閉経」は卵巣の活動性が次第に低下し、月経が永久に停止すること。月経が12か月以上ないことをいう。


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がん闘病中の生理が止まる、閉経の主な原因

がん(腫瘍)によるもの

・脳腫瘍または脳転移(視床下部・下垂体系ホルモンの分泌障害)

手術によるもの

・切除手術による卵巣機能の低下や喪失、子宮の喪失(子宮全摘、両側付属器(卵巣)摘出術では必発。卵巣がん摘出術(一部切除)では卵巣機能が低下しうる)

化学療法(抗がん剤などの投薬)によるもの

・薬剤の副作用(発生頻度は使用する薬剤・投与量によって異なる=後述)。抗がん薬だけでなく、ホルモン療法薬によっても起こりうる。

放射線治療によるもの

・照射の副作用(発生頻度は照射部位・照射量によって異なる)

その他の要因によるもの

・加齢(卵巣機能の低下)

・精神的・心理的刺激や精神的ストレス

・社会・生活環境の変化(視床下部・下垂体・卵巣機能の低下)

・内分泌疾患、視床下部疾患、摂食障害(視床下部・下垂体・卵巣機能の低下)

【起きやすい状況や環境】

・子宮や卵巣の摘出、体重減少、ストレス、40歳以上、経口避妊薬の内服経験

・アルキル化薬と放射線(全身照射・骨盤照射)の併用、シクロホスファミド使用、プロカルバジン使用、テモゾロミドかカルムスチンと頭蓋照射の併用。

手術によって生理が止まる(来ない)原因と対策の詳細

手術で生理が止まる理由

・子宮や卵巣の摘出により、生殖機能が喪失または低下することによって生じる(卵巣が残っていても、手術時の血流障害や化学療法・放射線療法などの影響で、閉経が早まることがある)

・子宮全摘(月経は停止する)

・両側卵巣切除(卵巣機能が消失)

・片側卵巣切除や卵巣部分切除(卵巣組織内の卵子数が減少する)

・残存した卵巣組織が役割を補うことが多いが、卵巣組織や卵子数の減少が著しい場合は卵巣機能不全となる。

主な対応・対策・治療法

・子宮が温存される場合、卵子・受精卵などの凍結保存を実施する場合がある。

・卵巣欠落症状に対しては、ホルモン補充療法が検討される。

・精神症状に対しては、症状により抗不安薬や抗うつ薬が提案される。

・卵巣切除後に生じる卵巣欠落症状、女性性の喪失による性交痛や膣炎などの症状、生活に与える影響をチェック。早期に適切な治療とセルフマネジメントができるよう指導される。


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化学療法(抗がん剤などの投薬)によって生理が止まる(来ない)原因と対策の詳細

投薬で生理が止まる理由

・抗がん薬には、卵巣機能に大きく影響するものと、ほとんど影響しないものがある(薬剤の性腺毒性が強いほど、さらに年齢が高くなるほど、障害が強く起こりやすくなる)

・タモキシフェンに代表されるホルモン療法薬では、卵巣への直接的な毒性は少ないが、年齢によってはホルモン療法を終えるころに閉経を迎える。

・ホルモン療法によってホルモン分泌のバランスが崩れることで、月経異常や月経停止が起こることがある。

・抗がん剤、ホルモン療法に関連した月経停止には、薬物による生殖器および性腺への直接的な影響と、治療の副作用や精神的ストレスなどによる間接的な影響によって起こるものがある。

【卵巣への直接的障害】

抗がん剤による卵巣機能障害の多くは、卵胞への直接作用が原因。抗がん剤が、血液を介して卵胞へと移行し、顆粒細胞のバリアを超えて原始卵胞や発達段階の卵胞に直接障害を与え、破壊することにより発育卵胞が減少または消失し、月経が停止する。

【ホルモン分泌の障害による性腺抑制】

多くの抗がん剤は血液脳関門を通過しないため、中枢への影響はの障害による少ない。

しかし抗がん剤の投与によるステロイド代謝酵素の誘導や、支持療法で使用されるセロトニンやドーパミンなどの薬物が視床下部にダメージを与え、ホルモン産生に関与している伝達経路に影響を及ぼすことで性腺機能が抑制され、月経周期の異常が起こる。

【副作用や精神的なストレスによる影響】

化学療法によるストレスや、低栄養、体重減少などによって視床下部や下垂体異常が生じ、無月経を起こすことがある。

閉経前の人では、化学療法によって早期閉経が引き起こされ、更年期様症状が出現することがある。卵巣機能の衰退だけでなく、心理的な因子(疾患や治療によるストレス)や睡眠不足なども関係している。

無月経になるリスクのある化学療法、放射線治療

(米国臨床腫瘍学会 (ASCO)の2013年の指針による)

【高リスク 70%未満の女性が治療後無月経になる】

・アルキル化薬+全身照射

・アルキル化薬+骨盤照射

(アルキル化薬とは=ブルスファン、カルムスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファランなど)

・シクロホスファミド総量5g/㎡(40歳以上)

・プロカルバジンを含むレジメン(レジメン=薬の組み合わせ)

・テモゾロミドまたはカルムスチンを含むレジメン+頭蓋照射

【中間リスク 30~70%の女性が治療後無月経になる】

・シクロホスファミド総量5g/㎡(30~40歳)

・乳がんに対するAC療法X4サイクル+パクリタキセルかドセタキセル

・モノクローナル抗体(ベバシズマブなど)

・FOLFOX4(フルオロウラシル・フォリン酸・オキサリプラチン)

・シスプラチンを含むレジメン

【低リスク 30%未満の女性が治療後無月経になる】

・アルキル化薬以外や、低レベルのアルキル化薬を含むレジメン

・シクロホスファミドを含む乳がんに対するレジメン

・アントラサイクリン系+シタラビン

●主な対応・対策・治療法

※化学療法による卵巣機能低下予防目的での卵巣保護(GnRHアゴニスト)の効果に関して、現時点では、十分なエビデンスがない。

・長期に月経が回復しない場合には、エストロゲンを主としたホルモン補充療法(カウフマン療法)が提案される。

放射線治療によって生理が止まる(来ない)原因と対策の詳細

放射線で生理が止まる理由

・放射線は卵巣内の原始卵胞数を減少させる。(直接照射による放射線被曝のみではなく、散乱した放射線被曝も考慮)

・骨盤への放射線照射=卵子数を減少させ、卵巣機能低下を起こすため、月経が停止する。

・総照射線量の増加=治療後早期の永続的な卵子消失、ホルモン産生能低下が生じる。

・照射線量と卵巣機能障害発症の関係性は年齢によって異なり、年齢が高いほど影響を受けやすい。

・脳(視床下部や下垂体)への放射線照射=排卵障害を生じることがある。

無月経になるリスクのある放射線治療

【高リスク 70%未満の女性が治療後無月経になる】

・アルキル化薬+全身照射、アルキル化薬+骨盤照射

・テモゾロミドまたはカルムスチンを含むレジメン+頭蓋照射

・全腹部/骨盤照射(線量と年齢による)

・全身照射(40Gy未満)

・頭蓋照射(40Gy未満)

【中間リスク 30~70%未満の女性が治療後無月経になる】

・腹部/骨盤照射 (初経前の10~15Gy未満の照射、初経後の5~10Gy照射)

【超低リスク】

・放射線ヨウ素

主な対応・対策・治療法

・骨盤に放射線照射を行う場合、生殖機能の保護や温存のために、治療開始前に卵巣位置移動術や卵子・卵巣などの凍結保存を実施する場合がある。

・卵巣欠落症状や無月経期間が長期にわたる場合には、ホルモン補充療法が提案される

 

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

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「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

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