乳がんの再発は、多くの場合、初期診断後の治療(主に手術)から2~3年後に起こります。
乳がんは他のがんと比べるとゆっくり進行するため、10年以上たっての再発も稀ではありません。再発しやすい時期は、乳がんの進行やサブタイプなどによって違いがあります。
タイプでいうと、乳がんのサブタイプのHER2タンパク陽性やトリプルネガティブのタイプでは、手術後2~3年で再発しやすい特徴があります。いっぽうでホルモン受容体陽性のタイプは、がん細胞がゆっくり増殖する性質のため、5年目以降の再発も多くみられます。
乳がんの再発・転移の症状
再発・転移の症状は、がんがあらわれた部位によって異なります。
温存した乳房内やわきの下のリンパ節への局所再発は、しこりや皮膚の変化で気づくことが多いようです。
骨転移では、骨の痛みが特徴的です。肺転移では、息切れや痰、咳などがあらわれ、脳転移では、吐き気やめまい、頭痛などで気づくことがあります。
肝転移は、初期は症状がみられませんが、進行すると腹部の腫れやみぞおち付近の痛み、黄疸などがあらわれます。
ただし、こうした症状は、個人差が大きく、まったく症状を示さない場合もあるので注意が必要です。
痛みが長く続く場合は再発を疑う
基本的には再発した乳がんも、もとの性格をもっているので、ゆっくりと進行していきます。痛みがあらわれたときに、再発によるものかどうかを見きわめるポイントとしては、次に述べる症状の、どちらに当てはまるかをみてみましょう。
「急に強い痛みがあらわれたものの、様子をみていたら痛みがおさまってきた」という場合は、がんのほかに原因があることが多いと考えられます。
いっぽうで「痛みはさほど強くないが、長く続く」場合は、がんの再発の可能性が高いと考えられます。
それに加え乳がんのセルフチェックで、乳房やその周囲にしこりや腫れが見つかったら、局所再発の可能性が考えられます。
術後10年間は定期検診を受ける
病院では、5年再発がなければ治癒とみなすという目安としての考え方がありますが、あくまで目安です。
乳がんは、術後10年たったあとも再発する可能性があるため、10年までは定期検診を受けたほうがよい、といわれています。
術後1~3年目までは3~6か月ごと、術後4~5年目は6か月~1年ごと、術後6年目以降は1年ごとに問診と視触診を行い、必要に応じて血液検査や画像検査をします。
このほかにも、手術した反対側の乳房に新たにできたがんは、早期の発見で切除できる可能性が高いことから、年1回のマンモグラフィや超音波検査がすすめられます。
再発・転移を心配しすぎないことも大切
がん治療を経験し、早期発見の大切さを身をもって実感した患者さんなればこそ、「再発・転移」もいち早く見つけなければと、焦る気持ちをもつ人が多いです。
なかには、再発転移への不安から頻繁な検査を望む患者さんもいます。
しかし、再発・転移を検査で早期に発見しても、なにか症状が出てから治療を開始しても、その後の生存期間にほとんど差はないことがわかっています。
再発・転移を過度に心配して焦ったり、不安になったりせず、定期検診を受けつつ、セルフチェックも怠らずにいれば十分です。そしてもし、ふだんと違う症状が続く場合は、すみやかに主治医に相談するようにしましょう。
再発・転移がわかったときにどう受け止めるか
主治医から「再発・転移がある」と告げられたときの患者さんのショックや悲しみは、乳がんを告知されたときよりも大きいといわれています。
再発したことの不安、初期治療でがんが取りきれなかったことへの怒りなど、さまざまな感情が交錯します。なかには、強い喪失感や死への恐怖などから、うつ状態に陥り、適応障害やうつ病を発症する人も少なくありません。
こうした気持ちをすぐに整理することは難しいことですが、落ち着いたら、主治医に再発部位やがんの進行状況、治療法の選択肢などを説明してもらいましょう。
治療方針を決めるうえで最も大切なのは、患者さん自身の希望です。
「どのような治療を受けたいか」「どう過ごしていきたいか」などを伝えて、家族と主治医、医療スタッフと、治療や支援の方法を考えていきましょう。
再発・転移の治療においても、初期治療のときと同じく、主治医や看護師のほかに、精神腫瘍医、臨床心理士、薬剤師など、さまざまなスタッフがサポートする形になります。