膵臓がんに関する検査には
・血液検査
・画像検査(エコー、CT、ERCP、MRIなど)
・細胞診
・腫瘍マーカー検査
などがあります。
血液検査の目的
血糖値の変化や血中酵素で膵臓がんの可能性を見ます。
血液検査は非常に重要視されており、その理由のひとつは糖尿病との関係です。
膵臓がんと糖尿病にはそれほど強い因果関係はありませんが、膵臓がんになると糖尿病が悪化することがあります。そのため血糖値の変化には充分な注意が必要になります。
また、膵臓がんになると、大半は膵液の流れが悪くなります。膵液の流れが悪くなると、膵臓の酵素が黄疸とおなじように血中へ逸脱するため、アミラーゼに代表される血中酵素が高くなります。
画像検査(エコー、CT、ERCP、MRI)検査の目的
患者さんの40~50パーセントは最初に腹部超音波検査(エコー)で異常が見つかっています。
この検査は気軽に受けられ、患者に身体的負担がほとんどないのが利点です。
エコーで膵臓に異常を指摘され、次に実施する精密検査で最終的に膵臓がんと診断される患者がもっとも多く、早期がんの発見のきっかけになることもあります。
ただし、太った人や上腹部の手術をうけた人では膵臓が見えないこともあります。
CT検査は膵臓や周囲の臓器が明瞭に描出され、膵臓がんの診断に有用で、とくにがんの拡がりを診断し、手術の可否を判定するには優れた方法です。
CT検査をエコー検査と両方行なえば、膵臓の異常、がんの疑いとなる腫瘍を70~80パーセント見つけられます(エコー検査で見つけられなかった場合、CT検査で20~30パーセントフォローすることができる)。
ただし、放射線被爆、造影剤の副作用の問題や小さな膵臓がんでは見落とされることがあること、CTでは腫癌(かたまり)を作るすい炎を膵臓がんと時々間違えることがあり、この検査にも限界があります。
内視鏡的膵管胆管造影検査(ERCP)は、日本で特に普及した検査法です。
口から十二指腸へ内視鏡を入れておき、胆汁と膵液が一緒になって出る乳頭から細い管を膵管のなかに入れて、そこから造影する検査です。
これは膵管の微細な変化がよくわかる検査法で、そういう点では優れた検査法ですが、合併症があるうえ、重症急性膵炎で死亡したという報告例もあるため、最近では別の検査法に切り換える施設が増えています。
MRI検査はMRI(磁気共鳴映像法)を使って胆管や膵管を撮影する検査法です。
患者さんは寝たままでよく、大きな合併症もなく放射線被曝もないため、現在では主要な検査手段の1つとなっています。
膵液の細胞診とは
細胞診では膵臓に細い管を入れて細胞膵液を取ってきて、がん細胞の有無を確かめます。膵液ではなく、直接組織を取ってくることもあります。組織を取って検査するため、プラス(陽性)になれば膵臓がんが確定します。
ところがこの検査の場合、たとえマイナス(陰性)でも膵臓がんではないと断定することはできないという弱点があります。
それは、本当は膵臓にがん細胞があるのに、たまたまそれが取れなかったからマイナスになった、という可能性があるためです。
なお、比較的新しい検査法としては、超音波内視鏡下生検があります。これは、内視鏡の先端に超音波をつけて、それを見ながら膵臓がんの組織を取る手法です。
超音波内視鏡検査は、膵臓がんの診断には現時点でもっとも信頼性の高い検査法です。
直径2cm以下の小さな膵臓がんでも発見可能であり、またこの内視鏡を利用して組織を採取すれば90%以上の確率で確実に診断が可能です。
しかし、特殊な内視鏡が必要で、かつこの検査に熟練した医師が必要であるなど、どこの病院でも行える検査法ではありません。
膵臓がんの腫瘍マーカー
腫瘍マーカーとは腫瘍が産生する物質で、血液内のこれらの物質を測定することによって腫瘍の存在が確認できるものです。
膵臓の腫瘍マーカーはCA19-9が最も代表的なものです。
ただし、腫瘍があってもCA19-9が陰性に出ることもあります。しかも、小さな膵臓がんでは陽性率が低く、CA19-9が絶対というわけにはいきません。
それではCA19-9が高ければ必ず膵臓がんかというと、CA19-9は胆嚢炎や閉塞性黄疸、胆管炎などでも数値が高くなりまずから、必ずしもそうとはいえません。
こうなるとCA19-9の意味がわからなくなりそうですが、間違いなくいえることは、CA19-9が非常に高い場合には膵臓がんの疑いが濃厚だということです。
腫瘍マーカー検査は早期診断にはあまり役立ちません。膵臓がんの治療効果判定(手術や化学療法の前後など)や、再発の兆候を確認するために使われます。