大腸がんからの肺転移が起きたときの症状
肺は、呼吸で取り入れた酸素を全身に送る臓器です。肺の末梢にある肺胞には、酸素の運搬役をする血液が集まってきます。
そのため、肺胞にがん細胞が引っかかって、血行性転移が起こりやすくなります。
せき、たん、呼吸困難も
肺への転移は、最初のうちは自覚症状がありません。
しかし、肺胞にがん病巣ができるため、進行すると、呼吸に関係するさまざまな症状があらわれてきます。
たとえば、せきやたんが多くなり、気管の粘膜が侵され、血たんが出ることもあります。
非常に進行してくると、肺転移のがん病巣の増大によって気管支や気管が圧迫され、狭窄や閉塞が生じます。そのため、息苦しさを感じたり、ゆっくり寝ていることもできなくなることもあります。
大腸がんの肺転移の診断と治療方針
肺への転移が疑われる場合は、胸部X線検査や、胸部CT検査などで詳しく調べ診断します。
肺に転移が見られた場合も、まずは、肺のどの部分に転移巣がいくつあるか、転移巣がすべて取り切れるかどうか、肺のほかに転移している臓器がないか、手術後の生活に支障がないだけの肺が残せるかどうか、患者さんが手術に耐えられるかどうかを検討します。
手術が可能と判断された場合には転移巣のある部分の肺を切除する手術が行われます。
最近では、胸に小さな穴を数か所あけて、そこから内視鏡と手術器具を入れ、モニターに映る映像を見ながら手術を行う「胸腔鏡手術」という方法が主流です。
この方法によって、小さな傷で肺を部分的に切除することができ、手術後の痛みも少なく、回復もかなり早くなりました。
完全に切除されれば改善するケースも比較的多く、切除可能であれば積極的に切除すべきだといいう考え方が一般的です。
しかし、肺の左右両葉に5個以上の転移巣があるときは、切除しても1年以内に再発がみられることが多く、治療成績がよいとはいえません。
治療成績は、はじめての再発転移で肺だけに転移していた場合、手術で切除した患者さんの5年生存率は約40%というデータもあります。
ただし、肝臓と違って肺には再生能力がありません。
したがって、切除後もう1度肺に再発が確認された場合でも、それ以上切除したら肺機能を維持できないと判断されれば、手術ができないこともあります。
手術でがんをすべて取り切ることができない場合、または肺以外にも転移がある場合には、化学療法(抗がん剤などの薬物による治療)が提案されます。
また、転移のできた場所や転移巣の数、患者さんのからだの状態によっては、放射線治療やRFAが行われる場合もあります。
大腸がん肺転移時の化学放射線療法とは
肺転移で切除手術ができない場合には、複数の抗がん剤による全身化学療法を行なうのが一般的です。
使用する抗がん剤は、原発部位が肺である場合の肺がんの治療に用いられるものとは種類が異なります。あくまで大腸がんとして、大腸がん用の薬が使われます。
定位照射をすることも
化学療法の効果が不十分なときに、放射線治療を組み合わせることがあります。
転移がんの数が少ない場合(3個以内)は、定位照射という放射線治療が行なわれることもあります。
また、重粒子線(炭素線)という特殊な放射線を用いた治療が行なわれることもあります。