11.腎臓がん

【2026年更新】腎臓がんの薬物治療について詳しく解説。分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬の種類と名前、最新レジメンまで

腎臓がんで使われる薬(抗がん剤・分子標的薬)

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

腎臓がん(腎細胞がん)の薬物治療は、この10年ほどで選択肢が増えています。かつては有効な薬が少なく、治療に苦慮することも多かったのですが、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、治療成績は改善傾向にあります。

この記事では、腎臓がんで使われる薬の種類と名前、最新のレジメン(治療計画)について解説します。薬物治療を検討している患者さんやご家族が、治療の選択肢を整理するための参考にしていただければ幸いです。


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腎臓がんの薬物治療の概要と歴史的な変遷

腎臓がんは、腎臓の尿細管上皮から発生する悪性腫瘍です。日本では年間約3万人が新たに診断されており、男性に多く、60〜70代での発症が中心となっています。

腎臓がんの特徴として、従来の殺細胞性抗がん剤(シスプラチンなど)が効きにくいことが挙げられます。そのため、2000年代半ばまでは、インターフェロンやインターロイキン2などを用いた「サイトカイン療法」が主流でした。

しかし、サイトカイン療法の奏効率は10〜20%程度にとどまり、多くの患者さんにとって十分な効果を得られないことが課題でした。

2008年にソラフェニブ(ネクサバール)が日本で承認されて以降、複数の分子標的薬が登場し、治療の選択肢は広がりました。さらに2016年以降は免疫チェックポイント阻害薬が使用可能となり、現在では分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が標準治療の中心となっています。

腎臓がん薬物治療の歴史

時期 主な治療法 特徴
2000年代前半まで サイトカイン療法(インターフェロン、インターロイキン2) 奏効率10〜20%、副作用として発熱・倦怠感など
2008年〜2015年頃 分子標的薬の単剤療法 スニチニブ、ソラフェニブなどが登場、生存期間の延長に寄与
2016年〜現在 免疫チェックポイント阻害薬、併用療法 ニボルマブ+イピリムマブなど、長期生存例の増加
2024年〜 HIF-2α阻害薬の登場 ベルズチファンが承認、新たな治療選択肢に

腎臓がんの薬物治療で使われる薬の種類

腎臓がんの薬物治療で使われる薬は、大きく分けて以下の4種類があります。

薬の分類 作用機序 代表的な薬剤
チロシンキナーゼ阻害薬(TKI) 血管新生を阻害してがんへの栄養供給を断つ スニチニブ、アキシチニブ、カボザンチニブなど
mTOR阻害薬 がん細胞の増殖シグナルを遮断 エベロリムス、テムシロリムス
免疫チェックポイント阻害薬 免疫細胞のブレーキを外してがんを攻撃 ニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブなど
HIF-2α阻害薬 低酸素応答経路を阻害 ベルズチファン

それぞれの薬について、詳しく見ていきましょう。


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チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の種類と名前

チロシンキナーゼ阻害薬は、腎臓がん治療において中心的な役割を果たす分子標的薬です。血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)などを阻害することで、がんへの血液供給を減らし、腫瘍の増殖を抑制します。

腎臓がんは血管が豊富な腫瘍であり、VEGFを多く産生する特徴があります。そのため、血管新生を標的とした治療が効果的とされています。

主なチロシンキナーゼ阻害薬一覧

一般名 製品名 投与方法 主な標的 承認年(日本)
スニチニブ スーテント 経口 VEGFR、PDGFR、KIT 2008年
ソラフェニブ ネクサバール 経口 VEGFR、RAF 2008年
アキシチニブ インライタ 経口 VEGFR 2012年
パゾパニブ ヴォトリエント 経口 VEGFR、PDGFR、KIT 2014年
カボザンチニブ カボメティクス 経口 VEGFR、MET、AXL 2020年
レンバチニブ レンビマ 経口 VEGFR、FGFR、RET 2021年(腎細胞がんに対して)

スニチニブ(スーテント)

スニチニブは、腎臓がん治療において長年にわたり使用されてきた薬です。VEGFR、PDGFR、KITなど複数のチロシンキナーゼを阻害するマルチキナーゼ阻害薬です。

通常、4週間服用して2週間休薬するスケジュールで投与されます。主な副作用として、高血圧、手足症候群(手や足の皮膚が赤くなる、痛む)、倦怠感、下痢、食欲不振などがあります。

アキシチニブ(インライタ)

アキシチニブはVEGFRに対する選択性が高い薬です。現在では、免疫チェックポイント阻害薬との併用療法として一次治療で使われることが多くなっています。

1日2回の経口投与で、効果や副作用に応じて用量調整が行われます。高血圧、下痢、疲労感などの副作用に注意が必要です。

カボザンチニブ(カボメティクス)

カボザンチニブは、VEGFRに加えてMETやAXLも阻害する特徴があります。これらの経路は、他のチロシンキナーゼ阻害薬への耐性に関与することがあり、二次治療以降でも効果が期待できます。

近年では、免疫チェックポイント阻害薬との併用療法として一次治療でも使用されるようになっています。

レンバチニブ(レンビマ)

レンバチニブは、VEGFRに加えてFGFRやRETも阻害します。腎臓がんでは、ペムブロリズマブとの併用療法として承認されており、一次治療の選択肢の一つとなっています。

mTOR阻害薬の種類と名前

mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク)は、細胞の増殖や代謝を制御するタンパク質です。mTOR阻害薬は、このシグナル経路を遮断することでがん細胞の増殖を抑えます。

主なmTOR阻害薬一覧

一般名 製品名 投与方法 承認年(日本)
エベロリムス アフィニトール 経口 2010年
テムシロリムス トーリセル 点滴静注 2010年

エベロリムス(アフィニトール)

エベロリムスは経口投与のmTOR阻害薬です。かつては、チロシンキナーゼ阻害薬の後の二次治療として広く使用されていました。

現在は、免疫チェックポイント阻害薬や新しいチロシンキナーゼ阻害薬が登場したことで、使用される場面は限られてきていますが、特定の状況では選択肢となり得ます。

主な副作用として、口内炎、間質性肺炎、高血糖、感染症などがあります。特に間質性肺炎は注意が必要な副作用であり、息切れや咳などの症状が現れた場合は速やかに医師に相談することが重要です。

テムシロリムス(トーリセル)

テムシロリムスは点滴で投与されるmTOR阻害薬です。予後不良因子を複数持つ患者さんに対する一次治療として承認されていましたが、現在は他の治療法が優先されることが多くなっています。


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免疫チェックポイント阻害薬の種類と名前

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫から逃れる仕組みを阻害することで、体の免疫システムによるがん細胞への攻撃を促す薬です。腎臓がん治療において重要な役割を果たしています。

主な免疫チェックポイント阻害薬一覧

一般名 製品名 標的 投与方法 腎細胞がんでの承認年(日本)
ニボルマブ オプジーボ PD-1 点滴静注 2016年
ペムブロリズマブ キイトルーダ PD-1 点滴静注 2019年
イピリムマブ ヤーボイ CTLA-4 点滴静注 2018年
アベルマブ バベンチオ PD-L1 点滴静注 2019年

ニボルマブ(オプジーボ)

ニボルマブは、免疫細胞(T細胞)の表面にあるPD-1という分子に結合し、がん細胞による免疫抑制を解除する薬です。

腎臓がんでは、イピリムマブとの併用療法として一次治療で使用されるほか、チロシンキナーゼ阻害薬との併用、あるいは二次治療以降の単剤療法としても使用されます。

ペムブロリズマブ(キイトルーダ)

ペムブロリズマブもPD-1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬です。腎臓がんでは、アキシチニブやレンバチニブとの併用療法として一次治療で広く使用されています。

イピリムマブ(ヤーボイ)

イピリムマブは、CTLA-4という分子を標的とする免疫チェックポイント阻害薬です。ニボルマブとの併用療法として使用されます。

CTLA-4とPD-1は異なる免疫チェックポイント機構であり、両方を阻害することで、より強力な抗腫瘍免疫反応が期待できます。一方で、免疫関連の副作用が出やすくなる傾向があります。

アベルマブ(バベンチオ)

アベルマブは、がん細胞表面のPD-L1に結合する抗体です。アキシチニブとの併用療法として一次治療で使用されます。

免疫チェックポイント阻害薬の副作用

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫システムを活性化させる薬であるため、自己免疫疾患に類似した副作用(免疫関連有害事象)が起こることがあります。

影響を受ける臓器 主な症状
皮膚 発疹、かゆみ
消化管 下痢、大腸炎
肝臓 肝機能障害
間質性肺炎(咳、息切れ)
内分泌系 甲状腺機能障害、下垂体機能低下症、副腎不全
腎臓 腎機能障害

これらの副作用は、早期に発見して適切に対処すれば、多くの場合コントロール可能です。体調の変化を感じたら、早めに担当医や看護師に相談することが大切です。

HIF-2α阻害薬という新しい選択肢

2024年、日本でベルズチファン(製品名:ウェルアイリー)が承認されました。これはHIF-2α(低酸素誘導因子2α)を阻害する新しいタイプの薬です。

腎臓がん(特に淡明細胞型腎細胞がん)の多くでは、VHL遺伝子の異常によりHIF-2αが過剰に活性化しており、これがVEGFなどの産生を促進してがんの増殖に関与しています。ベルズチファンは、この経路を上流で遮断する薬です。

ベルズチファンは、複数の治療歴がある患者さんに対する治療選択肢として位置づけられています。また、フォン・ヒッペル・リンドウ病に伴う腎細胞がんにも適応があります。

腎臓がんの一次治療で使われる主なレジメン

腎臓がんの一次治療(初回の薬物治療)では、患者さんのリスク分類に応じて治療法が選択されます。リスク分類には、IMDC(International Metastatic RCC Database Consortium)リスクモデルが用いられることが多いです。

IMDCリスク分類の因子

リスク因子 内容
診断から治療開始までの期間 1年未満
全身状態(PS) Karnofsky PS 80%未満
ヘモグロビン 基準値下限未満
補正カルシウム 基準値上限超
好中球数 基準値上限超
血小板数 基準値上限超

リスク因子が0個の場合は「低リスク」、1〜2個の場合は「中リスク」、3個以上の場合は「高リスク」と分類されます。

一次治療の主なレジメン

レジメン 薬剤の組み合わせ 主な対象
ニボルマブ+イピリムマブ 免疫チェックポイント阻害薬同士の併用 中・高リスク
ペムブロリズマブ+アキシチニブ 免疫チェックポイント阻害薬+TKI 全リスク
ペムブロリズマブ+レンバチニブ 免疫チェックポイント阻害薬+TKI 全リスク
アベルマブ+アキシチニブ 免疫チェックポイント阻害薬+TKI 全リスク
ニボルマブ+カボザンチニブ 免疫チェックポイント阻害薬+TKI 全リスク
スニチニブ単剤 TKI単剤 低リスクまたは併用療法が適さない場合
パゾパニブ単剤 TKI単剤 低リスクまたは併用療法が適さない場合

現在のガイドラインでは、中・高リスクの患者さんには免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法が推奨されています。低リスクの患者さんでは、チロシンキナーゼ阻害薬の単剤療法も選択肢となり得ます。

ただし、どのレジメンが最適かは、患者さんの全身状態、合併症、自己免疫疾患の有無、希望する治療スタイル(通院頻度、経口薬と点滴の選好など)によって異なります。担当医とよく相談して決めることが大切です。

二次治療以降の薬物療法

一次治療で効果が得られなくなった場合や、副作用で継続が困難になった場合は、二次治療に移行します。二次治療以降の選択肢は、一次治療で何を使用したかによって異なります。

二次治療の選択肢

一次治療 二次治療の選択肢
免疫チェックポイント阻害薬を含む併用療法 カボザンチニブ、アキシチニブ、レンバチニブ+エベロリムスなど
TKI単剤療法 ニボルマブ単剤、カボザンチニブ、アキシチニブなど

三次治療以降では、それまでに使用していない薬剤から選択することになります。ベルズチファンは、複数の治療歴がある患者さんの選択肢として位置づけられています。

サイトカイン療法の現在の位置づけ

インターフェロンやインターロイキン2によるサイトカイン療法は、かつては腎臓がん薬物療法の中心でした。現在では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が優先されるため、使用される機会は減っています。

ただし、肺転移のみなど転移巣が限局している淡明細胞型腎細胞がんでは、インターフェロンが選択肢となる場合もあります。サイトカイン療法で長期生存が得られる患者さんも一部存在するため、完全に使われなくなったわけではありません。

サイトカイン製剤

一般名 製品名(例) 投与方法
インターフェロンα オーアイエフ、スミフェロンなど 皮下注射、筋肉注射
インターロイキン2 イムネース 点滴静注

薬物治療を受けるうえでの心構え

腎臓がんの薬物治療は、多くの場合、がんを完全に消失させることを目的とするのではなく、がんの進行を抑えて生存期間を延ばすことを目標としています。

ただし、免疫チェックポイント阻害薬を含む治療では、一部の患者さんで長期にわたりがんが制御される「長期奏効」が得られることがあります。完全奏効(画像上でがんが消失した状態)に至る患者さんも報告されています。

薬物治療中は、定期的な画像検査や血液検査で効果と副作用を確認しながら治療が進められます。副作用が強い場合は、用量調整や休薬、支持療法(副作用を和らげる治療)が行われます。

治療の選択にあたっては、以下の点について担当医と話し合っておくとよいでしょう。

・治療の目標(がんの縮小、進行抑制、症状緩和など)

・予想される効果と副作用

・通院頻度や治療スケジュール

・治療費の見込み

・効果がなかった場合の次の選択肢

・日常生活での注意点

腎臓がん薬物治療の費用について

分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は高額な薬が多いですが、日本では公的医療保険が適用されます。さらに、高額療養費制度を利用することで、月々の自己負担額には上限が設けられます。

高額療養費制度の自己負担上限額は、年齢や所得によって異なります。70歳未満で年収約370万〜770万円の場合、月の上限額は約8万円+αとなります(医療費に応じて変動)。

参考文献・出典情報

1. 国立がん研究センター がん情報サービス「腎細胞がん」
https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/index.html

2. 日本泌尿器科学会「腎癌診療ガイドライン」
https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/38_renal-cancer_2023.pdf

3. 日本臨床腫瘍学会「がん免疫療法ガイドライン」
https://www.jsmo.or.jp/guide/immunotherapy/

4. 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html

5. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)医薬品情報
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

6. 日本腎臓学会
https://jsn.or.jp/

7. National Comprehensive Cancer Network (NCCN) Guidelines - Kidney Cancer
https://www.nccn.org/professionals/physician_gls/pdf/kidney.pdf

8. American Cancer Society - Kidney Cancer
https://www.cancer.org/cancer/kidney-cancer.html

9. European Society for Medical Oncology (ESMO) - Renal Cell Carcinoma
https://www.esmo.org/guidelines/genitourinary-cancers/renal-cell-carcinoma

10. がん研究振興財団「がんの統計」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

・・・・・・・・・・

本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

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