07.乳がん

乳がんの抗がん剤治療の目的。効果はあるのか?

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パクリタキセル

乳がんにおける抗がん剤治療の目的は大きく2つあります。

1.初期治療においては再発率を低下させること。
2.転移・再発時においては、がんを縮小させ、がん進行による症状を緩和すること。

この2つです。

これらの目的をもって治療する場合、実際にどのような作用があるのか、どのような効果があるのかについて説明します。

■抗がん剤を使用する目的

乳がんは周囲のりンパ節に転移し、さらに血液やリンパの流れにのって肺、肝臓、骨などに転移します。乳がんが乳房にとどまっている場合には、手術や手術と放射線を併用する局所治療で初期治療は完了といえますが、乳房とそのまわり以外の場所にわずかでも転移があって(これを微小転移といいます)、それが残っていると、後に再発を起こす原因になります。

再発するとがんが及ぶ範囲が広域になり、治療が困難になります。そのため、がん細胞がからだのどこかに潜んでいる可能性がある場合は、これを根絶しなければならない、と考えられているのです。

手術・放射線は一部分のがんを攻撃する治療法ですが、いっぽう抗がん剤は全身に行き渡るので、潜んでいる可能性があるがん細胞を攻撃することができます。抗がん剤は全身の正常細胞にも影響を与え、吐き気、脱毛、白血球減少などの副作用を起こしますが、患者にとって副作用が許容される範囲にとどまる場合には、「がん治療」として一定の意味がある治療手段となります。

また、乳がんがみつかった時点で他の臓器に転移している場合や再発の場合は、がん細胞がからだのあちこちに存在している状態ですので、これらを縮小させたり、大きくならないように抑えたり、症状を和らげる目的で抗がん剤を用います。

乳がんの場合抗がん剤は1種類ではなく、多くの薬を同時に用いる場合が多いです。これは、作用の仕方が異なる複数の抗がん剤を同時、または順番に使用することによって、より効率よくがん細胞を攻撃する効果が期待できるからです。

乳がんの広がりに応じて抗がん剤は、①術前化学療法、②術後化学療法、③転移・再発に対する化学療法の3つの場合に用いられます。

■術後化学療法の効果は?

手術後の抗がん剤治療は再発率、死亡率を低下させるというデータがあります。CMF療法による再発軽減率は24%で、年間1,000人が再発すると仮定すると、その24%である240人の再発を一定期間において防ぐことができるという意昧です。

アンスラサイクリン系薬剤を含む治療はCMF治療に比べて、さらに12%再発を減少させます。アンスラサイクリン系薬剤にタキサン系薬剤「パクリタキセル(タキソール)またはドセタキセル(タキソテール)」を追加することにより、さらに17%の再発を減少させるというデータがあります。

したがって、アンスラサイクリンとタキサンを順番に投与する治療は、治療をしない場合に比べて44%の再発予防効果があると考えられます。これは年間1,000人のうち445人の再発を一定期間において防ぐことができるという意昧です。

再発の可能性に応じて、どのような抗がん剤治療を行うか決定します。以下の場合は、再発の可能性が高くなると考えられていますので、術後に抗がん剤治療を行うことが検討されます。

1.腋窩リンパ節に転移があった場合
2.腋窩リンパ節に転移はないが、下記のいずれかの状態であった場合
2.1 エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体がともに陰性である
2.2 病理検査で乳がんの大きさが2cmを超える
2.3 病理検査で乳がん細胞あるいは核の異型度(悪性度)が強い
2.4 年齢が35歳未満である
2.5 がん周囲の脈管侵襲(血管やリンパ管へがんが広がること)がある
2.6 HER2陽性の場合

■転移・再発乳がんに対する抗がん剤治療の効果

肺や肝臓、骨に転移・再発した乳がんは「肺がん」や「肝臓がん」ではなく、乳がんの「肺転移」、「肝転移」なので、乳がんに効果のある抗がん剤が使われます。抗がん剤によってがんを縮小させたり、進行を抑えることを目的とします。

骨転移がある場合には、ゾレドロン酸(ゾメタ)などのビスフォスフォネート製剤をホルモン剤または抗がん剤と同時に用いることによって、骨転移に伴う痛み、骨折などの頻度を減少させ、症状の進行を遅らせることをねらいます。

乳がんの分野は新しい薬や治療法も次々と開発されていますので、その効果や副作用を調べることを目的とした臨床試験や治験に参加することを検討する価値はあります。

■抗がん剤の種類と用量は決められているのか?

抗がん剤は決められた組み合わせで、決められた量を使用することが推奨されています。薬の組み合わせや用量は、臨床試験を通じて「この量ならこの効果がある」と確認されたうえで、決定されています。

抗がん剤は1種類だけを用いることはほとんどなく、多くは複数の薬を同時または順番に使います。これは、効き方が違う薬をいくつか用いたほうが、がんを抑える作用が高くなるからです。

また用量については、副作用が耐えられる範囲内で、最大限使える量を設定してあります。これらは,数多くの臨床試験から得られたデータを通じて、時間をかけて決められているものです。

したがって、抗がん剤の組み合わせや用量は、患者さんにとって最も高い効果が期待できるものだと考えられています。そのため一般の病院では決められた組み合わせで、決められた用量を使う必要があると説明をされるでしょう。

副作用の症状が強く出たときは、減量したり薬をしばらく休んだりする(休薬する)こともありますが、基本的には決められた用量で行われるのです。

規定された投与量を勝手に増減することは、治療効果と副作用のバランスを崩し、最善の治療から離れたものになる可能性がありますので、決められた量と回数で使用することが推奨されます。ただし遠隔転移の治療では、副作用をなるべく少なくすることを優先しますので、からだの状態や副作用に合わせて投与量や間隔を変更することもあります。

■代表的な抗がん剤

がんは、からだの細胞の中にある遺伝子のDNAという、細胞増殖を制御している物質に何らかの原因で変異が起こり、本来なら細胞増殖が止まるはずが、際限なく増殖することで起こる病気です。

抗がん剤はDNAそのものに作用したり、細胞が増殖する過程のどこかを障害したりすることで、がん細胞の増殖を抑えるものです。細胞の増殖の過程は大きく分けて、DNAが合成される時期と分裂する時期に分かれていて、抗がん剤によって標的になるところが異なります。

抗がん剤を複数種類用いるのは、標的が違う薬を組み合わせて使うことで、がん細胞の増殖を抑える効果がより高くなると考えられているからです。以下が乳がんに用いられる抗がん剤の代表的なものです。

なお、抗がん剤の効果を表す指標として「奏功率」を使いますが、これは、臨床試験などで多くの患者さんに使用したときの「一定期間においてがんの大きさが半分以上小さくなった人の割合」を示したものです。

例えば、「Aという薬の奏効率は30%」といったときは、「Aという薬を10人の人に使用してみたら、そのうち3人にがんが半分以下に小さくなる効果がみられた」ということを意味しています。

(1)アンスラサイクリン系薬剤

アンスラサイクリン系薬剤は、DNAを直接攻撃して破壊する薬です。乳がん治療に最もよく使用される薬剤で、アドリアマイシン(アドリアシン)、エピルビシン(ファルモルビシン)などがあります。

アドリアマイシンを含む併用療法にはAC、CAF(またはFAC)、CAF(内服)、エピルビシンを含む治療にはEC、FEC、CEF(内服)があります。

転移・再発乳がんに対して最初に用いた場合の奏効率は50~60%、効果持続期間は約6~12カ月です。アンスラサイクリン系薬剤を含む治療は、CMFと比較すると奏効率、効果持続期間ともに上回っていますので、アンスラサイクリン系薬剤の使用が推奨されています。

また、術後化学療法として使用する場合、アンスラサイクリン系薬剤を含む併用療法は、手術だけの場合と比較して、再発を33%減少させることが知られており、再発の危険性の高い人に対して行うことが推奨されています。

(2)タキサン系薬剤

タキサンとは、「西洋イチイ」という植物を原料にしてつくられた薬で、細胞の分裂過程を阻害します。タキサン系薬剤にはパクリタキセル(タキソール)とドセタキセル(タキソテール)があります。パクリタキセルは毎週投与、または3週毎投与が、ドセタキセルは3週毎投与が多く使用されます。

タキサンは水に溶けない性質のため、溶剤としてアルコールを使用しており、点滴のはじめにドキドキしたり顔が赤くなったりすることがあります。また、アレルギ一反応が起こることがありますが、ステロイドや抗ヒスタミン剤をあらかじめ投与します。

転移・再発乳がんに対するタキサンの奏効率は30~50%です。転移・再発乳がんに対して二番目の治療として使用した場合、効果持続期間は約6力月です。タキサン系薬剤は一次治療としても使用されます。
術後化学療法として、アンスラサイクリン治療後にタキサンを使用した場合、再発を44%減少させますので、術前化学療法としての使用が推奨されています。

(3)アルキル化薬

DNAに直接作用して増殖を抑える薬で、代表的なものにシクロホスファミド(エンドキサン:C)があります。アンスラサイクりン系の薬と組み合わせて使用します。

(4)ビンカアルカロイド系薬剤

細胞が分裂する過程を阻害する薬で、ビノレルビン(ナベルビン)があります。転移・再発乳がんに対して、3番目の治療として約20%の奏効率を示します。術後化学療法としての有効性は明らかではありません。

(5)5-FU系薬剤

DNAの合成を阻害することでがんを抑える薬です。代表的なものに5-フルオロウラシル(5-FU)があります。5-FUは点滴剤として使用することもありますが、内服薬としても開発され、ユーエフティ(UFT)、カペシタビン(ゼローダ)、テガフール・ギメラシル・オテラシル(ティーエスワン)などの製剤があります。

(6)葉酸代謝拮抗薬

DNAの合成を阻害することでがんを抑える薬です。代表的なものにメトトレキサート(メソトレキセー卜)があります。

メトトレキサー卜を含む併用化学療法であるCMF(シク口ホスファミド、メトトレキサート、5-FU)は、転移・再発乳がんに対する1番目の治療としての奏効率は40~50%、効果持続期間は6~8力月です。術後化学療法として使用する場合は再発を24%減少させます。しかし、アンスラサイクりン系薬剤を含む治療と比較して効果は劣るので、最近は使用する頻度が少なくなりました。

(7)トポイソメラーゼⅠ阻害薬
DNAを修復する酵素を阻害する薬で、代表的なものにイリノテ力ン(力ンプト、トポテシン)があります。転移・再発乳がんに対する治療として、イリノテ力ンは約20%の奏効率を示します。効果持続期間は約5力月です。

この薬に特徴的な副作用として6人に1人くらい(17%)の割合で下痢が起こり、下痢止めが必要なことがあります。術後化学療法としての有効性は明らかではありません。

以上、乳がんの化学療法についての解説でした。

ステージが進行してくると、病院でできる治療法の選択肢は少なくなります。しかし、病院で受ける治療法は、がんと闘うための手段の一部にすぎません。

乳がんを克服するためには、病院での治療より重要なことがあります。詳しくはこちらのガイドブックにまとめました。
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