悪性リンパ腫とは何か
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球ががん化して増殖する病気です。リンパ球は体の免疫機能を担う重要な細胞で、血液中だけでなく、リンパ節、脾臓、骨髄など全身のあらゆる場所に存在しています。そのため、悪性リンパ腫は全身のどこにでも発生する可能性があります。
日本における悪性リンパ腫の罹患者数は年々増加しています。2018年のデータでは新規罹患者数が35,782人、2021年の調査では罹患率が10万人あたり男性16.6人、女性12.7人と報告されており、男性にやや多い傾向があります。発症のピークは70歳代から80歳代で、高齢者に多く見られる病気です。
悪性リンパ腫という病名は、さまざまなリンパ系組織のがんを大きくまとめて呼ぶ名称です。現在、WHO分類(2017年版)では70種類以上、さらに細かく分けると100種類近くに分類されます。それぞれの病型によって臨床経過や治療への反応性、予後は異なるため、どのタイプの悪性リンパ腫なのかを正確に診断することが治療を進める上で重要です。
悪性リンパ腫の主な種類
悪性リンパ腫は、大きく「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の2つに分類されます。
ホジキンリンパ腫は、全悪性リンパ腫の約5から10%を占めます。リード・シュテルンベルク細胞と呼ばれる特徴的な細胞が見られることが特徴で、日本人には比較的少ないタイプです。20歳代の若年層と50から60歳代の中年層という2つの年齢層に発症のピークがあることが知られています。
一方、非ホジキンリンパ腫は日本人の悪性リンパ腫の90から95%を占めており、リンパ球の種類によってB細胞性、T細胞性、NK細胞性などに細かく分類されます。日本人に多いタイプとしては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫などがあります。
悪性リンパ腫のステージ分類について
悪性リンパ腫の病期(ステージ)は、治療法の選択や予後の予測に大きく影響するため、正確に把握することが重要です。現在、病期分類には歴史的に用いられてきた「アン・アーバー分類」と、2014年に作成された「ルガーノ分類」があります。
アン・アーバー分類によるステージ
アン・アーバー分類は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の両方に対して広く用いられている分類法です。腫瘍がある位置や数によって、ステージ1から4までに分類されます。
| ステージ | 分類の基準 | 解説 | 区分 |
|---|---|---|---|
| ステージ1 | 1つのリンパ節領域または1つの節外臓器に限局する病変 | 腫瘍が1つのリンパ節領域にのみ存在する状態。または1つの臓器内にのみ存在する状態 | 限局期(早期) |
| ステージ2 | 横隔膜の片側に留まる2つ以上のリンパ節領域の病変、または1つの節外臓器の限局病変と横隔膜の同側のリンパ節領域の病変を有する | リンパ腫が2か所以上のリンパ節にあるが、横隔膜を境にして上半身か下半身のどちらか一方に限られている状態。または臓器1か所とリンパ節1か所以上にあるが、横隔膜の同じ側にある状態 | |
| ステージ3 | 横隔膜の両側にわたる複数のリンパ節領域あるいは節外の病変 | リンパ腫が2か所以上のリンパ節にあり、横隔膜を境にして上半身と下半身の両側にある状態 | 進行期 |
| ステージ4 | 1つ以上のリンパ外臓器のびまん性または播種性病変 | リンパ腫がリンパ節だけでなく、肝臓、骨髄、肺など複数の臓器に広範囲に広がっている状態 |
ステージ1と2は「限局期」と呼ばれ、一般的に「早期」と表現される段階です。ステージ3と4は「進行期」と分類されます。
B症状の有無による追加分類
各ステージには、さらにAまたはBという記号が付けられることがあります。これは「B症状」と呼ばれる全身症状の有無によるものです。
B症状とは次の3つの症状を指します。
(1)38℃以上の原因不明の発熱
(2)掛け布団やシーツを換えなければならないほどの寝汗
(3)診断前の6か月以内に通常体重の10%を超える理由不明の体重減少
これらの症状が1つでもあれば「B症状あり」としてB期、なければA期と分類されます。たとえば「ステージ2B」という表記は、ステージ2でB症状があることを示します。
ルガーノ分類について
2014年に国際悪性リンパ腫会議で作成されたルガーノ分類は、アン・アーバー分類を修正した新しい病期分類です。近年、病期診断にFDG-PET/CTという検査が用いられるようになり、より正確な病変の評価が可能になりました。
ルガーノ分類では、FDG高集積の悪性リンパ腫で治療効果判定にFDG-PET/CTを用いる場合には、治療前にもこの検査を行って病期を決定することが推奨されています。また、非ホジキンリンパ腫ではA、Bの全身症状を記載しなくてもよいとされるなど、実際の臨床に即した改訂がなされています。
悪性リンパ腫の悪性度による分類
ステージががんの広がりを示すのに対して、「悪性度」は進行の速さを示す指標です。悪性リンパ腫は病気の進行速度によって、低悪性度、中悪性度、高悪性度の3つに分類されます。
| 悪性度分類 | 進行速度 | 臨床分類での呼び方 | 主なリンパ腫のタイプ |
|---|---|---|---|
| 低悪性度 | 月から年単位で進行 | インドレント(緩徐進行型)リンパ腫 | 濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫など |
| 中悪性度 | 週から月単位で進行 | アグレッシブ(急速進行型)リンパ腫 | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫など |
| 高悪性度 | 日から週単位で進行 | 高度アグレッシブリンパ腫 | リンパ芽球性リンパ腫、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病・リンパ腫など |
この悪性度分類は、1982年のWorking Formulation分類から始まり、1989年に米国のNational Cancer Instituteによって臨床分類として提唱されました。現在でも治療方針を決定する際の重要な指標として用いられています。
ただし、この分類はあくまで無治療の場合の進行速度に基づくものです。たとえば、低悪性度に分類される濾胞性リンパ腫でも、個々の患者さんによっては速く進行することもあります。また、悪性度が高いからといって必ずしも治療が困難というわけではありません。
病期と悪性度の関係について
病期(ステージ)と悪性度は、それぞれ異なる観点から悪性リンパ腫の状態を評価するものです。
ステージはがんの「広がり」を示し、悪性度は「進行の速さ」を示します。たとえば、同じステージ1でも、低悪性度のリンパ腫と高悪性度のリンパ腫では、進行速度や治療への反応性が異なります。逆に、進行期(ステージ3や4)であっても、治療によって良好な経過をたどることも少なくありません。
悪性リンパ腫の治療では、限局期でも進行期でも化学療法(抗がん剤治療)が中心になります。血液由来のがんである悪性リンパ腫は、固形がんと比べて化学療法が高い効果を示すことが多く、完全寛解(目に見えるがんが消えること)に至ることも珍しくありません。
診断のための検査について
悪性リンパ腫の診断には、さまざまな検査が行われます。
まず、腫れているリンパ節などの病変から組織を採取する生検が必須です。採取された組織は、病理医が顕微鏡で細胞の形態を調べ、免疫組織化学検査や染色体検査、遺伝子検査などを行って、どのタイプの悪性リンパ腫なのかを正確に判定します。
病期を決定するためには、CT検査、MRI検査、FDG-PET/CT検査などの画像検査が行われます。特にFDG-PET/CT検査は、がん細胞が取り込みやすい薬(FDG)を体に注射して、がんのある場所を詳しく調べることができる検査で、近年の病期診断において重要な役割を果たしています。
また、血液検査では、白血球数やリンパ球の状態、LDH(乳酸脱水素酵素)の値などを確認します。骨髄への浸潤を調べるために骨髄検査を行うこともあります。
治療の選択について
悪性リンパ腫の治療は、病型、ステージ、悪性度、年齢、全身状態などを総合的に判断して決定されます。
主な治療法には、化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植などがあります。低悪性度でゆっくり進行するリンパ腫の場合、腫瘍量が少なければ経過観察を行うこともあります。
ホジキンリンパ腫の限局期では、化学療法と放射線治療を組み合わせることが一般的です。進行期では化学療法が主体となります。
非ホジキンリンパ腫では、病型によって治療法が大きく異なります。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫のような中悪性度のリンパ腫では、R-CHOP療法と呼ばれる多剤併用化学療法が標準治療として広く用いられています。濾胞性リンパ腫のような低悪性度のリンパ腫では、病状に応じて化学療法や放射線治療、分子標的薬などが選択されます。
標準的な化学療法だけでは再発の可能性が高いと判断される場合には、造血幹細胞移植が検討されることもあります。
予後と生存率について
悪性リンパ腫の予後は、病型とステージによって大きく異なります。
国立がん研究センターのデータによると、悪性リンパ腫全体のサバイバー5年相対生存率は、診断時のステージや病型によって変動しますが、適切な治療を受けることで良好な経過が期待できる病気です。
ホジキンリンパ腫の5年生存率は80から90%以上と報告されており、非ホジキンリンパ腫全体では約60から70%とされています。ただし、非ホジキンリンパ腫は病型が多様であるため、個々の病型によって予後は異なります。
予後を予測するために、中から高悪性度の非ホジキンリンパ腫では国際予後指標(IPI)という評価方法が用いられます。IPIでは、年齢、パフォーマンスステータス(日常生活の制限の程度)、血清LDH値、節外病変の数、病期の5つの項目を評価し、リスク分類を行います。
患者さんへ知っておいていただきたいこと
悪性リンパ腫と診断されたときに、高いステージや悪性度という言葉を聞いて不安になる患者さんは少なくありません。しかし、悪性リンパ腫は血液由来のがんであり、化学療法が高い効果を示すことが多い病気です。
進行期であっても、適切な治療によって完全寛解を目指すことができます。また、低悪性度のリンパ腫では、ゆっくり進行するため、腫瘍量が少ない場合には積極的な治療を行わず経過観察を選択することもあります。
2024年版の造血器腫瘍診療ガイドラインをはじめ、悪性リンパ腫の診断と治療に関する知見は年々更新されています。新しい薬剤や治療法の開発も進んでおり、治療成績は向上し続けています。
自分がどのタイプの悪性リンパ腫なのか、どのステージでどのような悪性度なのかを主治医に確認し、納得できる治療を選択することが大切です。セカンドオピニオンを求めることも選択肢の一つです。
悪性リンパ腫は種類が多く複雑な病気ですが、医療の進歩によって治療可能性が高まっている疾患です。希望を持って治療に臨んでください。
参考文献・出典情報
1. 一般社団法人 日本血液学会:造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)
2. 国立がん研究センター がん情報サービス:悪性リンパ腫
3. 国立がん研究センター がん情報サービス:悪性リンパ腫の統計
4. 武田薬品工業:リンパ腫の治療方針
5. 中外製薬:おしえて リンパ腫のコト
6. 中外製薬:リンパ腫にはどのようなものがありますか?
7. 小野薬品工業:ホジキンリンパ腫の病期分類について
8. がんメディ:悪性リンパ腫のステージ別生存率と平均余命
9. 一般社団法人同仁会 同仁クリニック:悪性リンパ腫の生存率と治療法
10. オンコロ:悪性リンパ腫の種類と分類

