私たちは、ふだんからがんや腫瘍という言葉を耳にしています。
腫瘍とはいぼやこぶ状の固まりですが、医学的には「遺伝子の変化によって勝手に増殖するようになった細胞の固まり」と定義されます。
腫瘍には良性と悪性があります。良性腫瘍は成長が遅い、あるいはある大きさで成長が止まるなどの特徴があり、取り除けば生命の危険はありません。
これに対して悪性腫瘍は、成長が速く、大きくなり続けます。さらに転移し、増殖しながらさらに悪性化していきます。しかも、抗がん剤や放射線によって治療すると耐性(抵抗性。徐々に効果が薄れること)が生じるので、治療を行えば行うほどその選択肢は限られていきます。
日本では1981年以降、がん(悪性腫瘍)による死亡が死因のトップになりました。
1年間のがんによる死者数は年々増え続けています。これは第二次世界大戦後に抗生物質が次々に開発されたことにより、結核などの感染症で若くして死ぬ人が減り、平均寿命が延びたことによります。
厚生労働省の統計によると、2009年にがんで死亡した日本人は34万4000人に達し、うち男性が約21万人、女性が約14万人です。またがんを発症した人の数はさらに多く、2005年には男性39万人、女性29万人が新たにがんと診断されています。
日本人が生涯でがんを発症する確率は男性が54パーセント、女性も41パーセントと、2人に1人の割合に達するのです。男女ともがん患者は50歳代から増加し、高齢になるほど高まります。
なぜ高齢になるとがんになる人が増えるのかというと、がんは加齢によって起こる病気のひとつでもあるからです。がんの90パーセント以上を占める「遺伝(家系)とは直接には関係のないがん」は、複数の遺伝子の変化などによって生じると考えられています。
長生きすれば同時に細胞分裂の総回数も増えるので、それらが変異する機会も増加します。さらには加齢によって遺伝子を修復する機能が衰え、変異を来しやすくなります。がんにかかわる遺伝子には加齢の遺伝子と共通なものもあるのです。
そのため、高齢のがんでは余命も考えたうえで治療方針を立てる必要があります。
以上、がんの特徴についての解説でした。