がんには様々な部位・タイプがあり、早いうちから転移や浸潤を始めるがんもあれば、ゆっくりと成長し、あまり転移しないがんもあります。
早期に転移しやすいがん
早いうちから転移しやすいがんには、乳がん、骨肉腫(骨のがん)、悪性黒色腫(メラノーマ=皮膚がん)などがあります。また周囲の組織に浸潤しやすいがんとしては、女性の卵巣がんや、「スキルス」と呼ばれる特殊な胃がんが知られています。
卵巣がんは卵巣だけでとどまることが少なく、早い段階で子宮に広がり、さらに進行すると大腸などにも転移します。
転移や浸潤が早く始まるがんは、一般的に再発もしやすいといえるようです。というのも、再発は多くの場合、他の臓器やリンパ節に転移または浸潤したがん細胞が、治療後に患者の体内に残ってしまったときに起こるからです。
そこで、転移や浸潤しやすいがんの場合は、がん細胞が残存しないように手術前または手術後に化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療などの補助療法をするのが標準的です。
再発しやすいがん
食道がんや肝臓がんは再発しやすいといえます。特に血管が網の目のように広がる肝臓内ではがんは広がりやすく、細かな広がりが見過ごされると後に再発することになります。
しかし再発のより大きな原因は、肝臓がんの患者のほとんどが肝炎ウイルス(B型またはC型)に感染していることにあります。手術で完全にがんを取り除いたとしても、肝炎ウイルス(とくにC型)の活動によって肝臓ががんになりやすい状態はそのまま残り、第2、第3のがん(二次がん)が発生することが少なくありません。
これは厳密には再発ではないものの、肝臓がんの場合、再発と二次がんを見分けることは難しく、医学的にも両者を分けることにそれほど意味がないので、二次がんであっても再発と呼ばれます。
早期の発見がむずかしく死亡率の高い食道がんも、広範囲のリンパ節転移や食道内のスキップ転移を起こしやすく、再発しやすいがんです。また食道がんは継続的な飲酒と喫煙がおもな原因となっていることから、これらの生活習慣によって患者の食道の組織ががん化しやすい状態になっています。そのため、食道がんも肝臓がんと同じく二次がんを発生しやすいのです。
手術の範囲と再発
最初にどんな治療が行われたかもがんの再発率に関係しています。臓器の機能をなるべく温存したい、あるいはその臓器がないと生命を維持できないなどの場合、手術の範囲などは最小限に抑えられます。しかしこのような場合は手術後にがん細胞が取り残される可能性があり、再発率が高くなります。
たとえば直腸がんの手術の際に肛門や排尿、性(勃起。男性の場合)の機能を残したときや、膀胱がんでがん組織のみを切除したときには、その後の"生活の質(QOL)"は高くなるものの、再発の可能性は高くなります。
再発のリスクと臓器の機能をどれくらい残せるか、を客観的に評価して判断しなければなりません。
以上、がんの特徴についての解説でした。