がんとは細胞が分裂し続ける病気です。
ひとことにがんといっても、その種類は100種類とも200種類ともいわれ、さらに細分化もされています。しかし、がんの分類のしかたもいくつかあり、どのような考え方でがんを分けるかによって変わってきます。
一般的には「肺がん」「胃がん」のように、がんが最初に発生した体の場所(原発部位)でがんを呼んでいます。がんは、心臓を除くほとんどすべての臓器や組織に発生するので、体の部分ごとにがんの種類があると言うことができます。
乳がん、大腸がん(結腸がんと直腸がん)、子宮がん、肝臓がん(肝がん)、皮膚がん、甲状腺がん、膵臓がん、喉頭がん、食道がん、舌がん、前立腺がんといったようにです。
がんが転移しても、がんそのものの名前は変わりません。たとえば乳がんが進行するとわきの下のリンパ節や肺、骨、脳などに転移します。しかし、肺や脳に転移したことが患者の死因になっても、その病名は基本的には乳がんです。
がんの分類には、このように原発部位の呼び名を病名にしているもの以外に、医療の専門家が用いる「組織の違い」による分類もあります。
この分類では、がんは大きく2つに分けられます。「上皮性」のがんとそれ以外のがん、つまり「非上皮性」のがんです。上皮性のがんは専門的には「癌腫」と呼ばれます。胃がんや乳がん、大腸がんなどの多発するがんの多くは上皮性のがんです。これに対して、非上皮性のがんには白血病や肉腫などが含まれます。
上皮性のがん
上皮とは、たとえば胃腸の粘膜のように器官や臓器、組織をおおう”膜”をいいます。がん全体の80~90パーセントは上皮に発生します。また同じ上皮組織でも分泌性の臓器、つまり粘液を分泌する胃や肺、母乳をつくり出す乳腺などに、高い確率でがんが発生します。このように分泌腺をつくる細胞ががん化した場合には「腺がん」と呼ばれます。
また、胃や肺などさまざまな臓器に見られる扁平上皮(へんぺいじょうひ)細胞ががん化することも多く、これは「扁平上皮がん」と呼ばれています。扁平上皮細胞は、皮膚をつくる細胞によく似て平たくつぶれています。ほかにも、がん化した細胞の種類やがん細胞がどのような組織をつくるかによって上皮性のがんはさまざまに分類されています。
脳に発生するがん(悪性脳腫瘍)も、そのほとんどは上皮性のがんに含まれます。悪性の脳腫瘍は大部分が神経膠細胞(グリア細胞)ががん化したものであり、神経膠細胞は脳の神経細胞(ニューロン)とともに、上皮細胞に分類されるからです。
しかし、脳には上皮細胞以外にも、未熟で受精卵に近い胚細胞ががん化することもあり、すべてが上皮性のがん(癌腫)ではありません。そのため、脳に発生するがんは脳がんとは呼ばす、一般に悪性脳腫瘍と呼ばれています。代表的な脳の悪性腫瘍は神経膠腫(グリオーマ)です。
脳には良性の腫瘍も発生します。良性とは周囲との境界がはっきりしていて大きくなりにくく、他の臓器に転移しない腫瘍です。しかし、脳の良性腫瘍は他の器官の良性腫瘍とは異なり、大きくなると生命を脅かすおそれもあります。
血液のがんや肉腫
いっぽう、非上皮性のがんとは、筋肉、骨、軟骨、腱、脂肪組織などの結合組織に発生する「肉腫」や、白血病などの血液のがん(造血系のがん)を指します。このうち肉腫には骨肉腫や横紋筋肉腫などがあり、これらは上皮性のがん(癌腫)よりも若年層に発生しやすい性質をもっています。
また肉腫は、一般に上皮性のがんより細胞の増殖が速く、転移しやすいことが少なくありません。骨肉腫がその代表です。非上皮性のがんには肉腫のほかに血液系のがん(造血器系のがん)もあります。造血器系のがんの代表は白血病であり、成熟していない白血球がやみくもに増殖して正常な白血球が著しく減少し、赤血球や血小板も生産されにくくなります。
造血器系のがんにはほかに、リンパ腫や骨髄腫もあります。これらのがんは白血病とは異なり、基本的にはがん細胞が生まれた場で細胞が増殖する固形がんです。最近では、研究者たちは遺伝子によってがんを分類することもあります。「がんは細胞内の遺伝子の異常によって発生する」という視点から、遺伝子がどのような異常を起こしたかによってがんをいくつかの種類に分けるのです。
遺伝子の異常は、一部の抗がん剤の効果が高いかどうかを判定することができるため、この分類は実用的ともいえます。
以上、がんの特徴についての解説でした。