皮膚がんの中で最も注意が必要なのが「メラノーマ(悪性黒色腫)」です。
皮膚がんの中の約12%程度を占めるメラノーマですが、これは紫外線の害から体を守るメラニンという黒い色素を作り出す細胞・メラノサイトががん化したものです。メラノサイトのがん化なのでメラノーマは黒いのが大き特徴でホクロなどと見分けが難しいといえます。黒い部分が周囲にしみでてきて徐々に大きくなる場合は要注意です。
基底細胞がんや有棘細胞がんなどは50代、60代以降に増加しますが、メラノーマは30代以降から増え始めます。メラノーマの発生する場所は頭、顔、手、指、爪、足の裏など全身に及びますが、日本人は足の裏によくでき、メラノーマの30%です。
また、爪のメラノーマも多く全体の10%です。爪のメラノーマは初め黒い細い線となって現れます。その線の幅がしだいに広がり、放っておくと爪から周囲に黒い部分が出てしまいます。爪が黒くなっているだけなら早期で、爪が割れたり、爪の下から塊が出ていたりすると進行がんの可能性があります。
また、メラノーマは全身にできるがんなので体の表面だけではなく、食道、直腸、膣、眼、そして鼻の副鼻腔にもできます。副鼻腔の場合は鼻詰まりや鼻血がとまらないといったことで発見されます。副鼻腔を手術するのは身体への影響が大きいので現在は粒子線(重粒子、陽子線)治療が行われることが多いです。
メラノーマの検査は「問診」「視診」「触診」から始まります。視診には黒いホクロの状態がよく分かる「ダーモスコピー」という10倍の拡大鏡が使われ、確定診断を行います。メラノーマは転移しやすいがんなので、進行がんや転移が疑われる場合は、「CT(コンピュータ断層撮影)検査」や「MRI(磁気共鳴断層撮影)検査」、「PET(陽電子放射断層撮影)検査」なども行います。
治療は手術が基本でがんの端から1~2センチ離して切除するのが一般的な方法です。そして、黒いメラノーマの厚さが1ミリを超えているときは、転移の可能性が高いためにリンパ節の切除も行われます。
この場合は「センチネルリンパ節生検」が行われます。センチネルとは「見張り番」の意味で最初に転移するリンパ節をセンチネルリンパ節といいます。このリンパ節を切除してがん転移がなければ、それ以上リンパ節を切除しません。ただし、メラノーマは血行性転移(血液に乗って転移)もある点が問題です。
もしセンチネルリンパ節に転移があると、その先のリンパ節をも切除するだけではなく、化学療法、放射線療法、転移部分の切除、免疫療法なども行われていますが有効率は低いのが現状です。
以上、メラノーマについての解説でした。