人間の臓器は全て重要な存在ですが、その中でも肝臓と腎臓は命を繋ぐという意味でとても大切な役割を果たします。腎臓は腰の高さの背中側に左右対象に1つずつあります。握りこぶしより多少大きく(長さは10~12センチ、幅が5~6センチ、厚さ4~5センチ)そら豆のような形をしています。
その働きは「血液をろ過して尿を作り、老廃物などを排出する」ことのほか、「体内の水分量をコントロールすると共に、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの電解質をコントロールする」「血圧や骨の代謝をコントロールするホルモン、エリスロポエチンやビタミンDの産生にかかわる」「体のPH(弱アルカリ)や浸透圧を調節する」といった非常に重要な機能を担っています。
そして腎臓がんのうち、腎臓の尿を作る部分の腎実質にできるがんを腎臓がんと呼びます。
腎臓がんは緩やかではありますが確実に患者数、死亡者数ともに増えてきている病気です。年間の患者数は約1万人で死亡者数は約4000人です。50歳から患者が増え、60代、そして70代がピークとなっています。男女比では2対1、もしくは3対1で男性に多いのが特徴です。
腎臓がんの特徴的な症状は以下の3つです。
①肉眼でも分かる痛みを伴わない血尿。
②脇腹の痛み(腰痛)。
③脇腹を触って分かるシコリ(触診できる腫瘤)。
そして、進行するにつれて発熱、貧血、食欲不振、体重減少なども出てきます。脇腹の痛みや脇腹のシコリで発見されると、これはかなり進行している状態です。昔はがんが転移し、その転移したがんが先に発見されることもありました。
しかし最近は腎臓がんが早期に発見されるようになってきています。定期検診の超音波検査で発見されたり、たまたま他の病気で受けた検査で発見されたりするなど、無症状で発見される方が増えてきています。
このような定期検診などで腎臓がんが疑われる場合には、精密検査が行われます。無症状の場合は、指で触れられるほど大きくなっていないので触診では分かりません。そのため画像検査が重要になります。画像検査としては「超音波(エコー)検査」「CT(コンピュータ断層撮影)検査」「MRI(磁気共鳴断層撮影)検査」が行われます。
超音波検査
腹部にゼリーを塗り、超音波を出すプローブとの間に空気が入らないようにしてプローブを滑らせていきます。そして、超音波の反射波を、画像化したものをモニターで見て行う検査です。体に負担がなく、手軽に行えるのでまず第1番に行われる検査です。
CT検査
がんの状態やがんの広がり具合などを詳しく調べる検査です。腹部を輪切り状に調べることで直径1センチ程度のがんも、リンパ節や他臓器への広がり具合もわかります。この検査が最も重要な検査だといえます。造影剤を使用して行うCT検査は、さらに多くの情報を得ることができます。
MRI検査
がんの広がり、なかでも血管内へのがんの広がりや肝臓や脳への転移を診るのにきわめて有用な検査です。X線被爆がないこともメリットだといえます。腎臓がんは進行すると腎静脈や下大静脈に進展することもありますが、それも判定できます。かつては血管造影検査も行われていましたが、CTやMRIの進歩によって今では行われなくなりました。
これらの検査で腎臓がんのステージ(病期)も分かると、その状態に合った治療法が主治医グループと患者との間で決定され、決定されることになります。
以上、腎臓がんについての解説でした。