がん専門のアドバイザー、本村です。
当記事では、がんの放射線治療の副作用で起きる「晩期障害」について解説します。
がんの放射線治療の照射が終わって1か月後から数年後に有害事象(後遺症や副作用など)が発生することがあります。これを「晩期障害」といいます。
たとえば、放射線照射による直腸炎、放射線脊髄炎、肺繊維症、白内障などがそれにあたり、一般的に症状は重く、元通りには戻りません。
晩期の障害が発生した場合は、重篤にならないように早めに処置をしなければなりません。したがって、放射線治療では、医師は晩期障害を起こさせないように線量と照射野に細心の注意を払い、過剰照射にならないような配慮が必要です。
患者も晩期障害のリスクは事前に理解したうえで治療法を選択することが大切です。
1.頭部へ照射した際の晩期障害
脳に耐容線量を超える照射がおこなわれた場合には、脳や脳神経が障害を受け、難聴、顔面神経麻痺、脳障害、下垂体機能低下などが発生することがあります。また、眼球に放射線が照射された場合には、白内障、網膜症などがおこり、視力障害の原因になります。
2.口腔、頸部へ照射した際の晩期障害
過剰線量が照射されることにもなれば、皮膚に潰瘍ができたり、皮下が硬くなったりします。
口腔がんなどの治療では、唾液腺に耐容線量以上の線量が照射されることになるため、唾液が減少し、口の乾きや味覚異常がでることがあります。
予想もしない過剰線量が軟骨や下顎骨に照射されたりすれば、そこが壊死して、手術が必要になることもあります。また、脊髄症が発症し、躯幹や四肢の麻痺やしびれがまれにでることがあります。
また、甲状腺が照射されると甲状腺機能が低下しますが、ほとんどの場合は症状がでることはありません。
3.肺、縦隔へ照射した際の晩期障害
肺がんへの照射では、肺の線維化が起こり、肺機能が低下します。その後に線維化した肺の体積が大きくなれば、患者は息苦しく感じてきます。食道に過剰な線量が当たれば、食道が細くなり、食事の通りが悪くなります。
また、心臓に放射線が過剰に照射された場合は心外膜炎や心不全に結びつく可能性もあります。さらに、胸椎が過剰照射になれば、放射線脊髄症を発症することもあります。
4.乳房、胸壁へ照射した際の晩期障害
乳房温存療法では、過剰照射によって乳房が硬くなることがあります。
また、肺の一部に放射線が当たれば、肺に線維化が起こります。手術後に腋窩が照射されたりすれば、腕がむくんだり、上腕神経が障害をおこして、手がしびれたり、力が入らなくなったりします。さらに、肋骨が過剰に照射されれば、肋骨の骨折が発生しやすくなります。
5.腹部、骨盤へ照射した際の晩期障害
直腸や結腸が過剰照射を受ければ、潰瘍ができ、そこから出血したりすることがあります。膀胱の場合には、膀胱壁が硬くなり、萎縮が起こったり、血尿がでたりすることもあ ります。
場合によってはリンパや血液の流れが悪くなり、下肢の浮腫がみられることがあります。また、卵巣、睾丸に放射線が当たれば不妊になることもあります。また、肝臓や腎臓が照射されると当然機能が低下してきます。
以上、がんの放射線治療についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。