がん治療では、放射線治療と化学療法が併用されることはよくありますが「放射線治療と手術も組み合わされて実施されることがあります。
具体的に手術との併用には、術前照射、術中照射、術後照射があります。
放射線の術前照射
術前照射は手術前に放射線を照射して、がん病巣を縮小させて切除を容易にするために行われます。
同時に、がん細胞の活性を低下させ、局所再発や手術中での転移を防止することも目的になります。
方法は、根治線量の50~60パーセント(30~40グレイ)をがん病巣に照射し、照射終了後1~2週間経ってから手術します。食道がん、下咽頭がん、直腸がん、膀胱がんなど、周囲臓器に浸潤した局所進行がんが対象です。
放射線の術中照射
術中照射は、手術中にがん病巣を露出させ、周囲にある腸管などの正常臓器を照射野の範囲外に移動させ、がん病巣に限定して照射する方法です。
周囲の正常組織を照射野に含まないので、正常組織を放射線照射から防護できることがメリットです。
この照射法には電子線という放射線が用いられます。また、電子線の照射は1回限りです。線量は20~30グレイの大線量が照射されます。
実際には、手術後に、照射野内に正常組織が含まれていないことを確認し、呼吸や血圧など患者の状況をモニターで監視しながら、がん病巣に限定して照射します。
膀胱がん、消化器系のがん、特に膵臓がん、胃がんなどが対象になります。これらのがん病巣の周囲にはリスク臓器があり、外部照射法では十分な線量が投与できないことが理由です。
放射線の術後照射
術後照射は、非治癒切除後の残存病巣やリンパ節に照射し、局所制御を目指す方法です。
また、治癒切除後の微視的ながん細胞の残存が予想される場合には、がんが再発する可能性があります。そこで、再発を予防することも照射の目的にしています。
方法は、手術後のがん病巣および所属リンパ節の部分を照射します。肉眼的に見て残存したがん細胞があると思われる場合は、根治線量60グレイ/6週が必要になります。微視的な残存細胞がある場合には、処方線量は50グレイ/5週が必要です。肺がん、脳腫瘍、軟部組織腫瘍などがこの方法の対象になります。
いっぽう、根治的手術ができた場合には、局所再発の傾向が強いがん、あるいは所属リンパ節転移の傾向が強いがんが対象になります。具体的には乳がんなどに適用されます。
手術が不完全な場合には、神経芽細胞腫など放射線感受性の高いがん病巣も術後照射の対象です。
以上、がんの放射線治療についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。