
はじめに
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)は、年間約4,000人の患者さんが発症する希少がんです。筋肉や脂肪、血管などの軟部組織に発生する悪性腫瘍で、その種類は50種類以上にも及びます。
治療の基本は手術による切除ですが、転移や再発した場合、あるいは切除が困難な場合には、薬物療法が重要な選択肢となります。
この記事では、悪性軟部腫瘍の治療に使われる薬について、標準的な治療薬から最新の治療薬まで、詳しく解説します。治療薬の選択肢を理解することで、主治医との話し合いをより有意義なものにしていただければと思います。
悪性軟部腫瘍とは
悪性軟部腫瘍は、軟部肉腫とも呼ばれます。筋肉や脂肪、血管、リンパ管、神経などの軟らかい組織にできる悪性腫瘍の総称です。
皮膚や胃、腸の粘膜といった上皮細胞に発生する一般的な「がん」とは区別して、「肉腫」と呼ばれています。
悪性軟部腫瘍の特徴として、以下の点が挙げられます。
・体のさまざまな場所に発生する
・発生年齢や組織型が多様である
・悪性度や予後は種類によって大きく異なる
・発症率は人口100万人あたり年間約40例と希少である
代表的な組織型には、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫、悪性線維性組織球腫などがあります。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
悪性軟部腫瘍の標準的な治療法
治療の基本は手術
悪性軟部腫瘍の治療において、第一選択は手術による腫瘍の切除です。
腫瘍が完全に取り切れているかどうかが、予後に最も影響します。完全に切除できた場合と比較して、切除が不完全だった場合には明らかに予後が悪くなります。
手術では「広範切除術」が行われます。これは、腫瘍を周囲の正常な組織で包み込むようにひと塊として切除する方法です。十分な安全域(マージン)を確保することで、再発のリスクを下げることができます。
腫瘍の浸潤性による分類
悪性軟部腫瘍は、進行の様子によって2種類に分けられます。
| 分類 | 特徴 | 切除範囲 |
|---|---|---|
| 非浸潤性腫瘍 | 腫瘍と周囲正常組織との境目が明瞭 | 比較的狭い範囲 |
| 浸潤性腫瘍 | 周囲組織との境目が不明瞭で、インクがにじむように広がる | 広範囲の正常組織を含めて切除が必要 |
浸潤性腫瘍では、どこまで浸潤しているか分かりにくいため、非浸潤性腫瘍よりも周囲正常組織を広範囲に切除する必要があります。
切除範囲が広ければ再発のリスクは下がりますが、その分、身体機能が失われます。できるだけ身体機能を残しつつ、再発を防げるように悪性腫瘍を切除することが求められます。
発生部位と診療科の連携
悪性軟部腫瘍は体のさまざまな場所に発生します。
悪性軟部腫瘍の約半数は、整形外科医が手術できる四肢に発生します。その他の部位については、発生場所に応じた専門医が手術を行う必要があります。
・頭頸部:頭頸部専門医
・腹部:消化器外科医
・子宮:婦人科医
・腎臓周囲:泌尿器科医
複数の科が連携して手術を行わなければならない場合もあります。このような連携体制が整っているかどうかが、病院を選ぶ際の重要な目安となります。
悪性軟部腫瘍の化学療法(薬物治療)
細胞の形による分類
悪性軟部腫瘍は、細胞の形からも2種類に分けられます。
| 分類 | 特徴 | 薬物療法の感受性 |
|---|---|---|
| 円形細胞肉腫 | 未熟で特徴に乏しい細胞で構成される(ユーイング肉腫、横紋筋肉腫など) | 高い |
| 非円形細胞肉腫 | 紡錘型の細胞や多形型と呼ばれる大きくて不整な形の細胞で構成される(脂肪肉腫、平滑筋肉腫、滑膜肉腫など) | 低い |
円形細胞肉腫は転移しやすいですが、化学療法や放射線療法が効果的なことが多いという特徴があります。そのため、補助化学療法が必須です。
非円形細胞肉腫は、組織型により化学療法の効き目が異なり、また同じ組織型でも個々の症例により転移しやすさが異なります。
化学療法の目的による分類
化学療法は目的別に2つに分類されます。
| 分類 | 目的 | 対象 |
|---|---|---|
| 補助化学療法(アジュバント療法) | 再発・転移の予防 | 手術や放射線で病巣を消滅できた後 |
| 進行例に対する化学療法 | 転移巣の縮小、新たな転移の抑制、病勢のコントロール | 肺やリンパ節に転移が見つかった場合 |
悪性度の判定
現在、組織学における悪性度の判定には、FNCLCC分類と呼ばれる尺度が使用されます。これは、腫瘍分化度、核分裂像、壊死の程度を参考に、3段階に悪性度を分類する方法です。
悪性度が高い(グレード3)場合は、補助化学療法の対象となります。
術前より補助化学療法を行うこともあります(術前補助化学療法)。その目的は以下の通りです。
・原発の腫瘍を縮小させることにより、より安全に機能的な手足を残す
・画像で判らないような小さな転移巣を早期から治療する
・どの薬剤が有効かの判定に利用する
肺やリンパ節に転移が見つかった進行例の場合には、化学療法は必須となります。この場合は、転移巣を小さくさせることや、新たな転移を起こさせないなど病勢のコントロールを目的として治療が行われます。
標準的な治療薬:アドリアシンとイホマイド
第一選択の薬物療法
悪性軟部肉腫の薬物療法において、第一選択は以下の2つです。
・アドリアシン(一般名:ドキソルビシン)単剤投与
・アドリアシンとイホマイド(一般名:イホスファミド)の併用療法
これらの薬は、補助化学療法としても、転移巣の治療としても使用されます。
単剤と併用療法の違い
アドリアシン単剤とイホマイド併用の場合とで、治療効果に大きな差はありません。
ただし、アドリアシンは一定量以上を使用すると心毒性(心臓に悪影響を及ぼす毒性)が出る可能性があります。イホマイドと併用することで、効果を変えずにアドリアシンの使用量を抑えることができます。
また、滑膜肉腫にはイホマイドの大量投与が用いられることがあります。
新しい治療薬:ヴォトリエント(パゾパニブ)
ヴォトリエントの特徴
ヴォトリエント(一般名:パゾパニブ)は、2012年9月に悪性軟部腫瘍の治療薬として承認された分子標的薬です。
現在は主に、アドリアシンやイホマイドを使用後に転移が現れた場合に、それ以上に病巣を拡大させない、新たな転移を起こさせないことを目的として使用されます。
作用機序
ヴォトリエントは、血管やリンパ管の新生やがん細胞の増殖にかかわる酵素(VEGFR、PDGFR、c-Kitなど)の働きを抑えることにより、がんの増殖を制御する薬剤です。
具体的には、以下の受容体を阻害します。
・VEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体):主に血管内皮細胞に発現
・PDGFR(血小板由来増殖因子受容体):腫瘍細胞や周皮細胞に発現
・c-Kit:腫瘍細胞に発現
これらの受容体を阻害することで、腫瘍への栄養供給を遮断し、がん細胞の増殖を抑制します。
臨床試験の結果
日本も参加した第III相国際共同臨床試験において、ヴォトリエント群は、プラセボ群と比較して無増悪生存期間(PFS)に有意な延長が認められました。
具体的には、ヴォトリエント群の無増悪生存期間の中央値は20.0週、プラセボ群は7.0週でした(ハザード比0.35)。これは、がんの進行を約3か月間遅らせることができたことを意味します。
ただし、完全奏効(CR)は認められず、全生存期間の延長には影響を与えないことも明らかになりました。
これまで、アドリアシンやイホマイドの効果がない転移巣のある患者さんへの治療は選択肢が限られていました。しかし、このヴォトリエントの登場により、新たな選択肢が加わったといえます。
投与方法
ヴォトリエントは経口薬です。1日1回、800mg(4錠)を食事の1時間以上前、または食後2時間以降に服用します。
食後に服用すると薬剤の吸収が高くなり、副作用が現れる可能性があるため、服用方法を守ることが大切です。
副作用
ヴォトリエントの主な副作用は以下の通りです。
| 副作用 | 発現頻度(%)または特徴 |
|---|---|
| 肝機能障害 | 28.4%(AST上昇、ALT上昇、ビリルビン上昇など) |
| 高血圧 | 42.0% |
| 下痢 | よく見られる |
| 嘔気 | よく見られる |
| 気胸 | 肺転移がある場合に注意が必要 |
当初から指摘されていた副作用の他に、気胸が起きる頻度が高いことが判ってきました。
気胸とは、肺を包む胸膜に穴が開く病態です。急に胸が痛くなったり、呼吸が苦しくなるといった症状が現れます。
ヴォトリエントは、軟部肉腫が肺転移を起こしている状態で使用することが多いので、転移巣が破れて気胸が起こることがあります。
ヴォトリエントを服用して、胸痛や呼吸困難などが現れた場合は、すぐに主治医に連絡しましょう。
薬価と治療費
ヴォトリエント錠200mgの薬価は3,783.7円です(2025年薬価)。
1日800mg(4錠)を服用するため、1日あたりの薬剤費は約15,135円、1か月(30日)では約454,000円となります。
ただし、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額は大きく軽減されます。所得によって自己負担上限額が設定されており、多くの患者さんは月額約80,100円(一般所得者の場合)の負担で治療を受けることができます。
効果の予測
近年の研究により、GLI1遺伝子の増幅が認められる症例では、ヴォトリエントの治療効果が高いことが明らかになりました。
今後、ヴォトリエントがより効果を発揮する肉腫のタイプ(組織型)が明らかになることが期待されています。
新しい治療薬:ヨンデリス(トラベクテジン)
ヨンデリスの特徴
ヨンデリス(一般名:トラベクテジン)は、2015年12月に悪性軟部腫瘍の治療薬として発売された抗がん薬です。
ヴォトリエント同様、アドリアシンやイホマイドを投与後に転移や再発が認められた悪性軟部腫瘍の患者さんが対象です。
キメラ遺伝子陽性の腫瘍が対象
悪性軟部腫瘍は、タイプ(組織型)ごとに化学療法に対する感受性が異なることが知られています。
ヨンデリスは、悪性軟部腫瘍の中でも、キメラ遺伝子を持つ腫瘍を治療対象としています。
キメラ遺伝子とは、2つの異なる遺伝子の一部が融合した遺伝子のことです。一部の悪性軟部腫瘍では、このキメラ遺伝子を示すことが判ってきました。
対象となる主な組織型は以下の通りです。
・粘液型/円形細胞型脂肪肉腫
・滑膜肉腫
・胞巣型横紋筋肉腫
・骨外性Ewing肉腫/未熟神経外胚葉性腫瘍
・隆起性皮膚線維肉腫
・胞巣状軟部肉腫
・明細胞肉腫
・類血管腫線維性組織球腫
・線維形成性小細胞腫瘍
・骨外性粘液型軟骨肉腫
・間葉型軟骨肉腫
臨床試験の結果
キメラ遺伝子を持つ悪性軟部腫瘍を対象に、国内で行われた第II相比較試験では、緩和ケア群との比較において、ヨンデリスは無増悪生存期間を有意に延長するなどの効果が確認されています。
具体的には、ヨンデリス群の無増悪生存期間の中央値は5.6か月、緩和ケア群は0.9か月でした(ハザード比0.07)。
ヨンデリスも新しい薬です。今後、使用経験が蓄積され、データが集まるにつれて、ヨンデリスの有効な悪性軟部腫瘍の特徴が判ってくることが期待されています。
作用機序
ヨンデリスは、DNAに結合して損傷を引き起こし、がん細胞の増殖を抑制します。特に、染色体転座陽性の悪性軟部腫瘍に対して、がん遺伝子の転写を阻害することで抗腫瘍効果を発揮します。
粘液型脂肪肉腫においては、がん性遺伝子転写因子FUS-CHOPをブロックして転写プログラムを逆転させ、これらの細胞の分化を促して腫瘍の悪性度を低下させることが明らかにされました。
投与方法
ヨンデリスは点滴静注薬です。
1回1.2mg/m²(体表面積)を24時間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬します。これを1コースとして投与を繰り返します。
投与は中心静脈から行う必要があります。薬液が血管外に漏れると、注射部位に硬結・壊死を起こすことがあるためです。
また、ヨンデリス投与開始約30分前にデキサメタゾン20mgを静脈内投与することとされています。これは肝機能障害などの副作用を軽減するためです。
副作用
ヨンデリスの主な副作用は以下の通りです。
| 副作用 | 特徴 |
|---|---|
| 肝機能障害 | AST上昇、ALT上昇など。定期的な肝機能検査が必要 |
| 骨髄抑制 | 好中球減少、白血球減少、血小板減少、貧血など |
| 嘔気・倦怠感 | 他の抗がん薬にも見られる副作用 |
| 横紋筋融解症 | 1.4%(100人に約1人)の確率で発現 |
横紋筋融解症とは、骨格筋の細胞が融解、壊死することにより、筋肉の痛みや脱力などを生じる疾患です。
以下の症状が現れたら、速やかに主治医に連絡しましょう。
・手足・肩・腰・その他の筋肉が痛む
・手足がしびれる
・手足に力が入らない
・こわばる
・全身がだるい
・尿の色が赤褐色になる
薬価と治療費
ヨンデリス点滴静注用の薬価は以下の通りです(2025年薬価)。
・0.25mg: 49,368円
・1mg: 190,625円
体表面積1.6m²の患者さんの場合、1回の投与量は1.92mgとなり、1コースあたりの薬剤費は約370,000円となります。
ヴォトリエントと同様に、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額は軽減されます。
その他の治療薬:ハラヴェン(エリブリン)
ハラヴェンの特徴
ハラヴェン(一般名:エリブリン)は、2016年に悪性軟部腫瘍の治療薬として承認された微小管ダイナミクス阻害薬です。もともとは乳がんの治療薬として承認されていました。
海綿から抽出したハリコンドリンBという天然物質に着目して合成開発された、日本生まれの薬剤です。
臨床試験の結果
進行または再発の悪性軟部腫瘍(脂肪肉腫または平滑筋肉腫)を対象とした第III相試験において、エリブリン群は対照薬のダカルバジンと比較して、全生存期間の有意な延長を示した唯一の薬剤となりました。
全生存期間の中央値は、エリブリン群が13.5か月、ダカルバジン群が11.5か月でした。
特に脂肪肉腫患者さんにおいて延命効果が顕著であり、エリブリン群は15.6か月、ダカルバジン群は8.4か月でした。
作用機序
ハラヴェンは、チューブリンの重合を阻害して微小管の伸長を抑制することで、正常な紡錘体形成を妨げます。その結果、G2/M期で細胞分裂を停止させてアポトーシスによる細胞死を誘導し、腫瘍増殖を抑制します。
さらに近年、腫瘍組織内の血流を改善しがんの微小環境に作用すること、肉腫細胞の分化誘導作用を有することも明らかになりました。
投与方法
通常、成人には、エリブリンメシル酸塩として1日1回1.4mg/m²(体表面積)を2~5分間かけて、週1回、静脈内投与します。
これを2週連続で行い、3週目は休薬します。これを1サイクルとして、投与を繰り返します。
副作用
主な副作用は以下の通りです。
・骨髄抑制:好中球減少(98.5%)、白血球減少(99.2%)、貧血(23.5%)など
・末梢神経障害(28.0%):しびれ等の症状
・肝機能障害(8.3%)
・間質性肺炎(1.5%)
・その他:脱毛、吐き気、口内炎、味覚障害、疲労感など
最新の治療薬:テセントリク(アテゾリズマブ)
2025年2月に承認された新薬
2025年2月、テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)が、切除不能な胞巣状軟部肉腫に対して承認されました。これは国内で初めて承認された免疫チェックポイント阻害剤です。
胞巣状軟部肉腫は、悪性軟部肉腫の1%未満と超希少がんの1つで、日本人における年間発症数は15~40名と推定されています。思春期および若年成人(AYA世代)での発症が多く見られます。
対象患者
成人および2歳以上の小児の切除不能な胞巣状軟部肉腫が対象となります。
切除不能な胞巣状軟部肉腫は予後不良で、これまで標準治療が確立されていませんでした。テセントリクの登場により、新たな治療選択肢が加わったことになります。
投与方法
通常、成人にはアテゾリズマブとして1回1,200mgを60分かけて3週間間隔で点滴静注します。
通常、2歳以上の小児にはアテゾリズマブとして1回15mg/kg(体重)(最大1,200mg)を60分かけて3週間間隔で点滴静注します。
初回投与の忍容性が良好であれば、2回目以降の投与時間は30分間まで短縮できます。
治療薬の選択と使用順序
治療のアルゴリズム
悪性軟部腫瘍の薬物療法は、通常、以下の順序で検討されます。
| 治療段階 | 推奨される薬剤 |
|---|---|
| 一次治療 | ドキソルビシン単剤、またはドキソルビシン+イホスファミド併用 |
| 二次治療以降(転移・再発例) | パゾパニブ(ヴォトリエント)、トラベクテジン(ヨンデリス)、エリブリン(ハラヴェン)など |
| 特定の組織型 | 胞巣状軟部肉腫:アテゾリズマブ(テセントリク)など |
組織型による薬剤の選択
悪性軟部腫瘍は組織型が多様であり、薬剤への感受性も組織型ごとに異なります。
・キメラ遺伝子陽性の腫瘍:ヨンデリスが選択肢
・脂肪肉腫、平滑筋肉腫:ハラヴェンが有効性を示す
・胞巣状軟部肉腫:テセントリクが選択肢
・その他の組織型:ヴォトリエント、標準的な化学療法など
治療費と医療費負担軽減制度
高額療養費制度
悪性軟部腫瘍の治療薬は高額ですが、高額療養費制度を利用することで、実際の自己負担額を軽減できます。
高額療養費制度とは、1か月(同じ月の1日~末日)にかかった医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超えた金額が払い戻される制度です。
自己負担上限額は、年齢や所得によって異なります。70歳未満の一般所得者(年収約370万~約770万円)の場合、自己負担上限額は以下の通りです。
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
例えば、1か月の医療費が100万円(3割負担で30万円)かかった場合、実際の自己負担額は約87,430円となります。
治療費の試算
各薬剤の1か月あたりの概算薬剤費と、高額療養費制度利用後の自己負担額(一般所得者の場合)は以下の通りです。
| 薬剤名 | 1か月あたりの薬剤費(概算) | 高額療養費制度利用後の自己負担額(概算) |
|---|---|---|
| ヴォトリエント | 約454,000円 | 約80,100円~90,000円 |
| ヨンデリス | 約370,000円(1コース) | 約80,100円~85,000円 |
| ハラヴェン | 変動あり | 約80,100円~ |
※実際の自己負担額は、投与量、併用する薬剤、検査費用などにより変動します。
その他の医療費補助制度
高額療養費制度以外にも、以下のような制度があります。
・高額療養費の多数回該当:同一世帯で直近12か月以内に3回以上、上限額に達した場合、4回目からは自己負担額がさらに軽減される
・限度額適用認定証:事前に申請することで、医療機関での支払いを自己負担限度額までとすることができる
・がん患者さん向けの各種助成制度:自治体によっては、がん患者さん向けの医療費助成制度がある場合があります
治療を受ける医療機関の選び方
専門施設での治療が重要
悪性軟部腫瘍は希少がんであり、経験豊富な専門医による治療が重要です。
特に新しい薬剤は、使用経験のある施設で治療を受けることが望ましいといえます。
医療機関選択のポイント
以下のような医療機関を選ぶことをお勧めします。
・がん診療連携拠点病院(全国に約400か所)
・骨軟部腫瘍の専門医がいる施設
・複数の診療科が連携できる体制がある施設
・新しい治療薬の治験や臨床試験に参加している施設
・セカンドオピニオンに対応している施設
国立がん研究センターなどの大規模ながんセンターや、大学病院の整形外科などが主な治療施設となります。
治療効果のモニタリング
治療効果の判定
薬物療法の効果は、定期的な画像検査(CTやMRIなど)で評価されます。
効果の判定基準は以下の通りです。
・完全奏効(CR):すべての腫瘍が消失
・部分奏効(PR):腫瘍が30%以上縮小
・安定(SD):腫瘍の大きさがほぼ変わらない
・進行(PD):腫瘍が20%以上増大、または新しい病変が出現
無増悪生存期間(PFS)や全生存期間(OS)も重要な指標となります。
副作用のモニタリング
各薬剤には特徴的な副作用があるため、定期的な検査が必要です。
・血液検査:骨髄抑制(好中球減少、貧血、血小板減少など)の確認
・肝機能検査:肝機能障害の早期発見
・心機能検査:アドリアシンやヴォトリエントを使用する場合
・CK(クレアチンキナーゼ)検査:ヨンデリスを使用する場合(横紋筋融解症の早期発見)
副作用が強い場合は、減量や休薬、支持療法(副作用を軽減する治療)が行われます。
今後の展望
個別化医療の進展
遺伝子検査の技術が進歩し、個々の腫瘍の遺伝子異常に基づいた治療選択が可能になりつつあります。
例えば、GLI1遺伝子の増幅がある場合はヴォトリエントが有効である可能性が高いなど、効果を予測できるバイオマーカーの研究が進んでいます。
新しい治療薬の開発
免疫チェックポイント阻害剤(テセントリクなど)の研究が進んでおり、今後、他の組織型にも適応が拡大する可能性があります。
また、国内外で多くの新薬の臨床試験が行われています。
複合療法の研究
複数の薬剤を組み合わせることで、より高い治療効果が得られる可能性があります。
現在、さまざまな組み合わせの臨床試験が進行中です。
まとめ
悪性軟部腫瘍の薬物療法は、この十数年で大きく進歩しました。
標準的なアドリアシン、イホマイドに加えて、ヴォトリエント、ヨンデリス、ハラヴェン、テセントリクといった新しい治療薬が使えるようになり、患者さんの選択肢が広がっています。
薬物療法を受ける際は、以下の点を考慮して、主治医とよく相談することが大切です。
・腫瘍の組織型や遺伝子異常
・これまでの治療歴
・副作用のリスクと対処法
・治療費と医療費補助制度の活用
・専門施設での治療
悪性軟部腫瘍は希少がんですが、研究は着実に進んでいます。主治医と十分に話し合い、最適な治療法を選択していただければと思います。