まず、がんのステージ分類(1~4で表す。病期分類)は、がんの進行度、つまり「事実としてどのくらい進行していて危険な状態か」を表しています。
ステージによってがんの治療法や5年生存率が変わってきます。ステージの数字が大きく、4に近くなるほど生存率は低くなります。
がんの転移とそのメカニズム
がんは増殖していくと隣接する組織や器官に食い込んでいきます(これを浸潤といいます)。さらに、がんは別の部位へと転移しながら進行していきます。
通常、がんの進行度は、大きさ、位置、転移の有無によって0期(ステージ0)から4期(ステージ4)に分けられます。ステージ4はがんが最も進行している状態です。進行度が大きくなるにつれて悪性になり、治療法は徐々に困難になってきます。
比較的におとなしいがん細胞は風船をふくらましたような形になり、その風船の塊から外側にはみ出していくことはありません。しかし、悪性度が悪いがんは、その風船の1箇所だけに止まらずに細胞分裂を無限に繰り返して大きくなっていきます。
そして、最終的には、がんは風船を突き破るようにして広がっていくのです。
がんの転移には、リンパ行性転移、血行性転移、播種性(はしゅせい)転移があります。
リンパ行性転移とは、がん細胞が周囲にあるリンパ管に入り込み、近傍のリンパ節に飛び散り、さらにはリンパ液の流れに乗って遠くのリンパ節まで広がっていくことです。
血行性転移とは、がん細胞が近傍の毛細血管や静脈に入り込み、血液の流れに沿って運ばれ、辿り着いた臓器で広がっていくことをいいます。
また、播種性転移は、がん細胞が最も外側の膜を突き破って体腔内に種を播いたように散らばり、新しいがん病巣を作り上げます。この症状は腹腔や胸腔にときどき起こり、がん性腹膜炎やがん性胸膜炎といわれます。
TNM(ティ・エヌ・エム)分類とは
がん進行度を表すのにTNM(ティ・エヌ・エム)分類が用いられています。
TNM分類は、がんがどのような状態に進展しているかを簡潔に示すガイドラインだといえます。治療計画の作成指針や予後に対する医療上必要な情報が分かります。
一般の人は耳慣れないものですし、とっつきくいですが、ご自身や家族ががんになったとき、この分類による進行度合いを把握しておくことは重要です。
まず、TNM分類のTはTumor(チューモア:英語の腫瘍の意味)のことです。
原発腫瘍の広がりを示します。その広がりの状態に応じて次のように呼び方が変わってきます。
Tisは浸潤前がん、T0は原発腫瘍を認めない、T1、T2、T3、T4は原発腫瘍の大きさ、および局所進展の程度を表します。たとえば、T1はT4よりもがんは進行しておらず、病状は良いと考えます。
NはLympho node(リンフォ・ノード:リンパ節の意味)のことです。
所属リンパ節への転移の有無と広がりを示します。N0は所属リンパ節に転移が認められない状態のことです。N1、N2、N3、N4は、がんが所属リンパ節に転移している状態をいいます。
N1はN4よりもがんがリンパ節に広範囲に転移せず、病状が良い状態にあります。
MはMetastase(メタスターゼ:転移の意味)のことです。
遠隔転移が"有る"のか、それとも"無い"のかという状態を指します。M0は遠隔転移を認めない場合、M1は遠隔転移を認める場合、MXは最低限必要な検索がおこなわれなかった場合に用いられます。これから分かるように数字の小さい方が病巣の広がりが小さく、しかも、がんが遠隔まで転移していないのです。
このTNM分類による病期は、治療法を決めるためのもっとも重要なポイントです。
なぜなら、原発巣が小さく、所属リンパ節や遠隔に転移をしていない早期がんでは、治療の選択肢が多く治療効果を期待しやすくなります。いっぽうでがんが広く進行している場合には治癒が困難になります。
TNM分類は画像診断や病理診断などを用いて医師が確定するものです。通常、TNM分類の決定は次のような約束ごとに基づいておこなわれています。
TNM分類を確認したとき、進行度合いが大きくても「進行がん=末期がん」ではないということを理解することが大切です。
進行がんとは、「遠隔転移があるがん」のことです。患者の余命や全身状態を表しているものでは決してないのです。進行がんでも健康な人と同じように元気で生活している人はたくさんいます。進行していた=全て末期がんと捉える風潮がありますが、それは正しい考え方ではありません。
以上、がんのステージと転移のメカニズムについての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。