25.抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント

【2026年更新】イリノテカン(トポテシン・カンプト)の効果と副作用。投与方法・費用・遺伝子検査まで徹底解説

イリノテカン(トポテシン、カンプト)の主な副作用と特徴


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イリノテカンとはどんな薬か

こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。

イリノテカン(一般名:イリノテカン塩酸塩水和物)は、日本で開発された植物由来の抗がん剤です。中国原産の喜樹という木の根から発見されたカンプトテシンという成分を基に開発され、1994年に国内で承認されました。

商品名としては「トポテシン」「カンプト」などがあり、現在では後発医薬品も多数流通しています。投与経路は点滴静注で、外来化学療法でも広く使用されています。

この薬の最大の特徴は、DNAの複製に関わる「トポイソメラーゼⅠ」という酵素の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑える点にあります。

イリノテカンの作用機序と特徴

イリノテカンは体内で代謝されることで効果を発揮するプロドラッグです。投与後、肝臓の代謝酵素CYP3A4やカルボキシルエステラーゼによって、活性代謝物であるSN-38に変換されます。

SN-38がDNA合成において重要な役割を果たすトポイソメラーゼⅠと結合し、DNAの切断部位での再結合を妨げることで、がん細胞の分裂を阻止します。DNA合成の過程で生じるDNAのもつれは、通常トポイソメラーゼによって切断・再結合されて修復されますが、イリノテカンがこの過程を停止させることで抗腫瘍効果を発揮するのです。

代謝されたSN-38は、肝臓でUGT1A1という酵素によってグルクロン酸抱合を受け、SN-38Gとなって胆汁中に排泄されます。この代謝経路が、後述する副作用や遺伝子検査と深く関わっています。

血管外漏出による皮膚障害のリスクは中程度、催吐リスクも中程度に分類されています。


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対象となるがんの種類

2026年現在、イリノテカンは以下のがんに対して保険適用されています。

がんの種類 備考
小細胞肺がん A法を使用
非小細胞肺がん A法を使用
子宮頸がん A法またはB法を使用
卵巣がん A法またはB法を使用
胃がん(手術不能または再発) A法またはB法を使用
結腸・直腸がん(手術不能または再発) A法またはB法を使用
乳がん(手術不能または再発) A法を使用
有棘細胞がん A法を使用
悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫) C法を使用
小児悪性固形腫瘍 D法を使用
治癒切除不能な膵がん E法を使用

特に大腸がんや肺がんの治療において重要な役割を果たしており、他の抗がん剤と組み合わせて使用されることが多いです。

なお、術後補助化学療法における有効性と安全性は確立されていないため、再発予防目的での使用は推奨されていません。

代表的な治療レジメン

イリノテカンは単独で使用されることは少なく、多くの場合、他の抗がん剤と組み合わせた併用療法として用いられます。

代表的なレジメンには以下のようなものがあります。

肺がん

小細胞肺がん・非小細胞肺がんでは、シスプラチン(CDDP)との併用療法(CPT-11+CDDP療法)が実施されます。

胃がん

S-1(ティーエスワン)との併用療法(CPT-11+S-1療法)が標準的に用いられます。

結腸・直腸がん

FOLFIRI療法(イリノテカン+フルオロウラシル+レボホリナート)が広く使用されています。また、ベバシズマブなどの分子標的薬と組み合わせることもあります。

膵がん

FOLFIRINOX療法(イリノテカン+オキサリプラチン+フルオロウラシル+レボホリナート)が切除不能な膵がんに対して使用されます。

これらのレジメンでは、各薬剤の特性を生かして相乗効果を狙っています。


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投与方法と投与スケジュール

イリノテカンには、がんの種類や治療目的に応じて、A法からE法までの5つの投与方法があります。

投与法 投与量・スケジュール 対象
A法 100mg/㎡を1週間間隔で3~4回点滴静注、その後2週間以上休薬(1クール) 小細胞肺がん、非小細胞肺がん、乳がん、有棘細胞がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、結腸・直腸がん
B法 150mg/㎡を2週間間隔で2~3回点滴静注、その後3週間以上休薬(1クール) 子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、結腸・直腸がん
C法 40mg/㎡を3日間連日点滴静注、これを1週毎に2~3回繰り返し、2週間以上休薬(1クール) 悪性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫)
D法 20mg/㎡を5日間連日点滴静注、これを1週毎に2回繰り返し、1週間以上休薬(1クール) 小児悪性固形腫瘍
E法 180mg/㎡を点滴静注、その後2週間以上休薬(1クール) 治癒切除不能な膵がん

A法、B法、E法では、投与量に応じて500mL以上の生理食塩液やブドウ糖液に混和し、90分以上かけて点滴静注します。C法では250mL以上、D法では100mL以上の輸液に混和し、60分以上かけて投与します。

他の薬剤との混注は避ける必要があります。投与量は年齢や症状、UGT1A1遺伝子多型の結果などにより適宜調整されます。

効果と奏効率

イリノテカンの効果は、がんの種類や進行度、併用する薬剤によって異なります。

原発性肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん)を対象としたイリノテカン単独投与の臨床試験では、一定の奏効率が確認されています。ただし、現在は他の抗がん剤との併用療法が主流となっているため、単独での効果よりも併用療法での成績が重視されています。

大腸がんにおけるFOLFIRI療法は、フルオロウラシル系の薬剤に対して抵抗性を示す症例でも効果を示すことがあり、治療選択肢として重要な位置を占めています。

膵がんにおけるFOLFIRINOX療法は、従来の治療法と比較して生存期間の延長が認められており、全身状態が良好な患者さんに対して選択されます。

効果判定は、画像検査による腫瘍サイズの変化、腫瘍マーカーの推移、症状の改善度などを総合的に評価して行われます。

重要な副作用について

イリノテカンには特徴的な副作用があり、その理解と適切な対応が治療を継続するうえで重要です。

骨髄抑制

白血球減少、好中球減少、血小板減少、貧血などの骨髄抑制が高頻度で発生します。特に好中球減少は用量制限毒性の一つとされており、発熱性好中球減少症や重症感染症のリスクがあります。

定期的な血液検査によるモニタリングが必須で、投与前24時間以内の検査で白血球数や好中球数が基準値を下回っている場合は投与が延期されます。

下痢

イリノテカン特有の重要な副作用として、早発性下痢と遅発性下痢の2種類があります。

早発性下痢は投与中または投与直後(24時間以内)に起こり、コリン作動性の副交感神経刺激によるものです。発汗、くしゃみ、鼻水、腹痛などを伴うことがあります。通常は一過性で、硫酸アトロピンなどの抗コリン薬で対処可能です。

遅発性下痢は投与後24時間以降、多くは投与後3~10日頃に出現し、重症化すると致命的になる可能性があります。胆汁中に排泄されたSN-38Gが腸内細菌のβグルクロニダーゼによって再びSN-38に戻り、腸管粘膜障害を起こすことが原因です。

遅発性下痢が起きた場合は、早期に止痢薬(ロペラミドなど)を使用し、十分な水分補給を行います。排便回数が1日3回以上になった場合、水様性下痢、発熱が見られた場合は速やかに主治医に連絡することが重要です。

その他の副作用

悪心・嘔吐は高頻度で発生します。投与前に5-HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンなどの制吐薬を使用することで予防します。

間質性肺炎も重大な副作用の一つです。息切れ、空咳、発熱などの症状が現れた場合は、すぐに医師に相談する必要があります。

その他、食欲不振、脱毛、疲労感、肝機能障害なども報告されています。

UGT1A1遺伝子多型と副作用リスク

イリノテカンの治療において、UGT1A1遺伝子多型検査は副作用リスクを予測するために重要です。

UGT1A1は、活性代謝物SN-38をグルクロン酸抱合して体外に排泄する酵素をコードする遺伝子です。この遺伝子には個人差(遺伝子多型)があり、日本人では主にUGT1A1*28とUGT1A1*6という2つの変異型が知られています。

UGT1A1*28はプロモーター領域のTAリピート数が正常型の6回ではなく7回になっており、UGT1A1の発現量が低下します。UGT1A1*6はG211A変異により酵素活性が低下します。

これらの変異型を持つ患者さんでは、SN-38の代謝と排泄が遅延し、血中濃度が高くなるため、重度の好中球減少や下痢などの副作用が起こりやすくなります。特に、これらの遺伝子多型をホモ接合体(両親から同じ変異を受け継いだ状態)または複合ヘテロ接合体(*6と*28の両方の変異を持つ状態)として持つ患者さんでは、副作用のリスクがさらに高まります。

UGT1A1遺伝子多型検査は、イリノテカン投与前に実施することが推奨されており、保険適用となっています。採血により検査可能で、生涯に1回のみ保険収載されます。

検査結果に応じて、投与量の減量や投与間隔の延長、より頻繁なモニタリングなどの対応が取られます。

投与禁忌と注意が必要な場合

以下の状態にある患者さんには、イリノテカンの投与が禁忌とされています。

・骨髄機能抑制がある
・感染症がある
・下痢(水様便)がある
・腸管麻痺、腸閉塞がある
・間質性肺炎、肺線維症がある
・多量の腹水、胸水がある
・黄疸がある
・アタザナビル投与中
・イリノテカンによる過敏症の既往がある

また、以下の場合は特に注意が必要です。

・糖尿病がある患者さん:下痢による脱水や電解質異常で糖尿病が悪化する可能性があります
・全身衰弱が著しい患者さん
・遺伝性果糖不耐症の患者さん:添加剤のD-ソルビトールが代謝されて生じる果糖により、低血糖や肝不全、腎不全が誘発される可能性があります
・Gilbert症候群などグルクロン酸抱合異常のある患者さん

妊娠中または妊娠の可能性がある女性、授乳中の女性にも投与は避けるべきとされています。治療期間中は避妊が必要です。

併用に注意が必要な薬剤と食品

イリノテカンはCYP3A4で代謝されるため、この酵素の働きに影響する薬剤との併用には注意が必要です。

アタザナビル(レイアタッツ)は併用禁忌です。イリノテカンの血中濃度が上昇し、重篤な副作用が発生するリスクが高まります。

CYP3A4を阻害する薬剤(一部の抗真菌薬、マクロライド系抗生物質など)との併用でもイリノテカンの血中濃度が上昇する可能性があります。

逆に、CYP3A4を誘導する薬剤(リファンピシンなど)との併用では、イリノテカンの効果が減弱する可能性があります。

食品では、グレープフルーツジュースはCYP3A4を阻害するため避ける必要があります。また、セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を含むサプリメントや健康食品もCYP3A4を誘導するため、使用を避けるべきです。

保険適用と治療費用

イリノテカンは保険適用の抗がん剤であり、承認された適応症に対しては保険診療で使用できます。

2026年1月現在の薬価は、製剤により異なりますが、例えば以下のようになっています。

・イリノテカン塩酸塩点滴静注液40mg:約2,300円~2,900円(製品により異なる)
・イリノテカン塩酸塩点滴静注液100mg:約6,400円~6,500円(製品により異なる)

体表面積に応じて投与量が決定されるため、患者さんの体格によって使用する薬剤量が変わります。例えば、体表面積1.6㎡の患者さんにA法(100mg/㎡)を投与する場合、1回あたり160mgが必要となり、100mg製剤と60mg相当(40mg製剤2本など)を組み合わせて使用します。

実際の治療費には、薬剤費のほかに、点滴の手技料、診察料、血液検査などの検査費用が加算されます。さらに、制吐薬などの支持療法に使用される薬剤の費用も含まれます。

1クールあたりの総額は、レジメンや患者さんの状態により大きく異なりますが、数万円から十数万円程度になることが一般的です。

健康保険が適用されるため、自己負担は1~3割となります。また、高額療養費制度の対象となるため、月額の自己負担額には上限があります。所得に応じて上限額は異なりますが、多くの場合、月額8万円程度が上限となります。

UGT1A1遺伝子多型検査は、イリノテカンの投与方針決定のために1回のみ保険適用で実施できます。

日常生活への影響と対処法

イリノテカン治療中は、副作用に応じた日常生活上の注意が必要です。

感染予防

骨髄抑制により感染症にかかりやすくなるため、手洗い、うがいを励行し、人混みを避けることが推奨されます。発熱(37.5度以上)が見られた場合は、すぐに医療機関に連絡します。

下痢への対応

排便回数や便の性状を毎日確認し、記録しておくことが重要です。早発性下痢の場合、投与初期には毎日の排便を確保することが大切で、便秘がちな場合は緩下剤の使用を相談します。

遅発性下痢が起きた場合は、止痢薬を早めに服用し、十分な水分(スポーツドリンクなど)を摂取します。下痢が続く場合や重症化した場合は、入院での点滴治療が必要になることもあります。

食事

食欲不振や悪心がある場合は、無理に食べず、食べられるものを少量ずつ摂取します。消化の良い食品を選び、脂っこいものや刺激物は避けます。

下痢がある場合は、繊維質の多い食品や刺激の強い食品、乳製品を控えめにします。

その他

脱毛が起こる可能性があるため、ウィッグや帽子の準備を検討しておくとよいでしょう。

疲労感が強い場合は、無理せず休息を取り、活動と休息のバランスを保ちます。

治療スケジュールに合わせて、通院や検査の予定を立てる必要があります。特に投与前の血液検査は必須です。

治療効果を高めるために

イリノテカンによる治療を安全に、そして効果的に続けるためには、医療チームとの密接なコミュニケーションが不可欠です。

副作用の早期発見・早期対処が治療継続のカギとなります。体調の変化や気になる症状があれば、些細なことでも医師や看護師、薬剤師に相談してください。

UGT1A1遺伝子多型検査を受けることで、個々の患者さんに適した投与量や投与スケジュールを設定でき、副作用リスクを低減できます。

併用薬やサプリメント、健康食品を使用している場合は、必ず医師に申し出てください。相互作用により効果が減弱したり、副作用が増強したりする可能性があります。

治療中は定期的な血液検査や画像検査が行われます。これらの検査結果を基に、投与量の調整や治療方針の変更が検討されるため、スケジュール通りに検査を受けることが大切です。

参考文献・出典情報

医療用医薬品:イリノテカン塩酸塩(KEGG MEDICUS)

イリノテカン塩酸塩点滴静注液100mg「サワイ」の基本情報|日経メディカル処方薬事典

イリノテカン塩酸塩注射液 添付文書(JAPIC)

UGT1A1遺伝子多型解析|SRL総合検査案内

UGT1A1多型解析|LSIメディエンス WEB総合検査案内

インベーダー® UGT1A1アッセイ 臨床的意義について|積水メディカル

イリノテカンとはどのような薬か|あきらめない癌ステージ4治療ガイド

イリノテカン(カンプト)|日本統合医療推奨協会

イリノテカンの特徴と副作用|抗がん剤治療と副作用

イリノテカンの効果や副作用について|がんとANK免疫細胞療法の教科書

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本村ユウジ
がん治療専門のアドバイザー・本村です。

私の仕事は【がん患者さんに正しい選択を伝えること】です。

「本村さん、おかげで元気になりました」

そんな報告が届くのが嬉しくて、患者さんをサポートしています。

→200通以上の感謝の声(これまでいただいた実際のメールを掲載しています)

しかし毎日届く相談メールは、

「医師に提案された抗がん剤が怖くて、手の震えが止まらない」

「腰がすこし痛むだけで、再発か?転移か?と不安で一睡もできなくなる」

「職場の人も家族さえも、ちゃんと理解してくれない。しょせんは他人事なのかと孤独を感じる」

こんな苦しみに溢れています。

年齢を重ねると、たとえ健康であっても、つらいことはたくさんありますよね。

それに加えて「がん」は私たちから、家族との時間や、積み重ねたキャリア、将来の夢や希望を奪おうとするのです。

なんと理不尽で、容赦のないことでしょうか。

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