・一般名:イリノテカン塩酸塩水和物
・商品名:トポテシン、カンプト、イリノテカン塩酸塩
・投与経路:点滴静注
・血管外漏出による皮膚障害のリスク:中
・催吐リスク:中
<特徴>
作用機序:代謝酵素CYP3A4によって活性代謝物SN-38に変換され、卜ポイソメラーゼⅠによるDNA切断部位に結合し、その後の反応を停止させることで抗腫瘍効果を発揮する。
※DNA合成で生じる構造異常(もつれ)は、トポイソメラーゼによって切断・再結合されて修復される。卜ポイソメラーゼⅠは、2重らせんの方を切断し、再結合に関与する。
代謝経路:SN-38は肝臓でグルクロン酸抱合を受けてSN-38Gとなり、胆汁中に排泄される。
※胆汁中に排泄された一部のSN38Gは、腸管内細菌叢のβグルクロニダーゼによって脱抱合されて再度SN-38になり、腸管から再吸収され、血液中へ戻る。
遺伝子との関係:UGT1A1活性の低下をきたす遺伝子変異を持つ患者に本剤を投与した場合、SN-38の解毒が遅延し、重度の好中球減少が出現する。
<代表的なレジメン>
小細胞肺がん・非小細胞肺がん:CPT-11+CDDP療法
胃がん:CPT-11+TS-1療法
結腸・直腸がん:FOLFIRI療法
切除不能膵がん:FOLFIRINOX療法
・使用時の注意点
投与方法:点滴静注。他の薬剤との混注は避ける。
投与禁忌:骨髄機能抑制、感染症、下痢(水様便)、腸管麻痺、腸閉塞、間質性肺炎、肺線維症、多量の腹水、胸水、黄疸、アザタナビル投与中、本剤による過敏症の既往
用量制限毒性(DLT):白血球減少と下痢
前投薬:制吐薬。5HT3受容体拮抗薬とデキサメタゾンを使用する。
・重大な副作用
骨髄抑制
下痢
・その他注意が必要な副作用
悪心・嘔吐
間質性肺炎
・投与に関するポイント
排便回数増加(1日3回以上)、水様性下痢、発熱時はまず主治医に報告する。
早発性下痢のときに止痢薬を使用すると、便が停留してSN-38が腸管粘膜障害を起こし、遅発性下痢を引き起こすといわれる。投与初期には、毎日の排便を確保することが重要となる。
投与中、コリン作動性により副交感神経が優位になると、早発性下痢・発汗・くしゃみ・鼻水が出現する。