
カリウムとは?
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
カリウムは、人間の体に欠かせないミネラルの一つです。成人の体内には約200gのカリウムが存在しており、体重の約0.2%を占めています。このカリウムの約98%は細胞内に、残り2%は細胞外液や血液中に存在し、体内のバランスを保つ重要な役割を果たしています。
カリウムは、ナトリウムと密接な関係にあり、細胞の内側と外側で相互に作用しながら体液の量や濃度を一定に保っています。細胞膜の外側にはナトリウムが、内側にはカリウムが存在し、この2つのミネラルがバランスを取ることで、浸透圧の調整、神経伝達、筋肉の収縮など、生命活動に必要な多くの機能が正常に働いています。
カリウムの体内での働き
カリウムには、次のような重要な働きがあります。
まず、ナトリウムを体外に排出する役割があります。腎臓においてナトリウムは再吸収されますが、カリウムはその働きを抑制し、ナトリウムが尿とともに排泄されるのを促します。この働きによって、血圧の上昇を防ぎ、高血圧の予防に役立ちます。
次に、心臓機能や筋肉機能を調整する働きがあります。カリウムは神経の興奮性や筋肉の収縮に関わっており、体液のpHバランスを保つ役割も果たしています。カリウムが不足すると、脱力感、食欲不振、筋力低下、手足のだるさ、不整脈、精神障害などの症状が現れる可能性があります。
また、細胞内の酵素反応の調節にも関与しています。細胞内の水分やたんぱく質の合成において、ナトリウムとカリウムのバランスが取れている必要があり、このバランスが崩れることで細胞の機能が低下する可能性が指摘されています。
がんとカリウムの関係
がん患者さんに見られるカリウム異常
がんに罹った人の特徴として、ナトリウムが過剰でカリウムが少ない傾向があるという報告があります。ゲルソン医師らによる研究では、このミネラルバランスの乱れとがんとの関連が指摘されてきました。
ただし、単純にナトリウムが少なくてカリウムが多ければよいという問題ではありません。体内の機能にとって重要なのは、これらのミネラルのバランスが取れていることです。細胞内の水分やたんぱく質の合成のときに、ナトリウムとカリウムのバランスが適切である必要があり、それが崩れることでがんになりやすいのではないかと考えられています。
細胞内の水分にはカリウムが、細胞外の水分にはナトリウムが、それぞれ多く含まれています。細胞内にナトリウムが多くなると外へ出され、それと同時に細胞外からカリウムが取り込まれます。この仕組みを「ナトリウム・カリウムポンプ」といい、うまく働かないと生命活動の基本単位である細胞が正常に機能しなくなります。
この機能異常が細胞のがん化を引き起こしている可能性が指摘されていますが、直接的な因果関係は現時点では明らかになっていません。
最新研究から見えてきたこと
2025年に報告された研究では、がんとカリウムの関係について新たな知見が得られています。
国立がん研究センターが2025年1月に発表した研究では、ナトリウムとカリウムの摂取量、そしてナトリウムとカリウムの比(Na/K比)とその後の死亡リスクとの関連が調査されました。この研究では、約8万3千人を平成30年(2018年)まで追跡し、ミネラルバランスと健康の関係について検証しています。
また、Natureに掲載された研究では、がん細胞が死滅する際にカリウムを放出し、それが免疫系に影響を与えることが明らかになりました。具体的には、死んだがん細胞から放出されたカリウムが腫瘍周囲の細胞外液に蓄積し、通常の5〜10倍の濃度に達することがあります。この高濃度のカリウム環境にさらされたT細胞(免疫細胞)は、がんを攻撃する能力が抑制されてしまいます。
この発見は、がん治療における新たな視点を提供しています。T細胞からカリウムの排出を促進すると、がんを攻撃する能力が回復することも確認されており、将来的な治療法の開発につながる可能性があります。
がん治療中のカリウム管理
がん治療を受けている患者さんでは、カリウムの管理が重要になる場合があります。特に注意が必要なのは「腫瘍崩壊症候群」です。
腫瘍崩壊症候群とは、増殖スピードが速くサイズが大きいがん細胞が、抗がん剤や放射線照射の作用によって崩壊すると、内部に蓄積されていた核酸、リン酸、カリウムなどが血中に流れ出し、重度の電解質異常を引き起こす症状です。
血清カリウム値が急激に上昇すると、筋肉のけいれんや筋力低下、不整脈などの症状が現れ、重症化すると致命的になることもあります。主として造血器腫瘍ではよく知られていますが、抗腫瘍効果が高い分子標的治療薬の登場によって固形がんの治療でも警戒が必要になりつつあります。
このため、がん治療を受ける際には、医療チームがカリウム値を含む電解質のモニタリングを行い、必要に応じて適切な対処をします。
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がん専門アドバイザー 本村ユウジ
カリウムの適切な摂取量
2025年版の食事摂取基準
厚生労働省が発表した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、カリウムの摂取量について年齢や性別ごとに基準が設定されています。
成人・高齢者の場合、目安量として男性では1日2,500mg、女性では2,000mgが設定されています。また、生活習慣病の予防を目的とした目標量として、男性では3,000mg以上、女性では2,600mg以上とされています。
世界保健機構(WHO)が2012年に提案した高血圧予防のために望ましい摂取量は、成人で1日に3,510mgです。日本人の平均摂取量は、厚生労働省の「令和元年国民健康・栄養調査」によると、全ての年代において目標量を下回っており、特に野菜や果物をあまり食べない人では不足しがちとされています。
日本人は塩分の摂取量が多い傾向にあるため、塩分の摂りすぎからくる高血圧などの生活習慣病を避けるためにも、カリウムの適切な摂取が重要です。
過剰摂取と欠乏のリスク
腎機能が正常であり、サプリメントなどを使用していない場合は、通常の食事でカリウムの過剰症になるリスクは低いと考えられるため、耐容上限量は設定されていません。健康な人であれば、体内の調節機構が働くため、カリウムが過剰になることはまれです。
ただし、腎機能が低下している場合や、特定の薬剤を服用している場合は、カリウムの排泄が困難となり、高カリウム血症を起こす可能性があります。がん患者さんの中には、腎機能に影響が出ている方もいらっしゃいますので、医師や管理栄養士の指示に従うことが大切です。
一方、カリウムが不足すると、以下のような症状が現れる可能性があります。
| 程度 | 主な症状 |
|---|---|
| 軽度 | 血圧の上昇、不整脈 |
| 中程度 | 嘔気、食欲不振、多飲、多尿、筋力低下 |
| 重度 | 麻痺、呼吸不全、心室細動 |
カリウムを多く含む食品
植物性食品
カリウムは幅広く食品に含まれますが、特に野菜、果物、芋類などに多く含まれます。
野菜では、以下のような食品にカリウムが豊富に含まれています。
| 食品名 | 特徴 |
|---|---|
| ほうれん草 | 緑黄色野菜の代表格。1カップで約570mg |
| ブロッコリー | ビタミンCも豊富 |
| かぼちゃ | β-カロテンも含む |
| 枝豆 | たんぱく質も摂取できる |
| 切り干し大根 | 乾燥により栄養が凝縮 |
果物では、バナナ、メロン、キウイフルーツ、アボカド、スイカなどにカリウムが多く含まれています。中くらいのバナナ1本には約420mgのカリウムが含まれており、手軽に摂取できる果物として知られています。スイカはくさび形にカットした2切れで約640mgのカリウムが摂取できます。
いも類では、さつまいも、じゃがいも、里芋などが良いカリウム源です。いも類は1食にまとまった量を食べることが多いため、効率的にカリウムを摂取できます。
動物性食品
動物性食品にもカリウムは含まれています。
魚介類では、さわら、まだい、さば、かつお、ぶりなどの魚類に比較的多くのカリウムが含まれています。魚介類のカリウムは熱に強く、水分に弱い傾向があるため、焼き調理やホイル蒸しのように水に触れさせない加熱が理想的です。
肉類では、もも肉やヒレ肉などの赤身部分にカリウムが多く含まれています。脂肪分の少ない部位の方がカリウム含有量は高い傾向にあります。
その他の食品
豆類は、カリウムだけでなく、たんぱく質や食物繊維も豊富です。大豆、納豆、きなこなどがその代表です。納豆1パックには約300mgのカリウムが含まれています。白インゲン豆は1カップで約1,000mgと、スーパーで買える食品の中でもトップクラスのカリウム源です。
海藻類では、昆布、ひじき、わかめなどに多くのカリウムが含まれています。ただし、1回の摂取量は少ないため、こまめに取り入れることが効果的です。
ナッツ類では、アーモンド、ピーナッツなどにカリウムが含まれていますが、カロリーも高いため、適量を心がけることが大切です。
カリウムを効率的に摂取する方法
調理方法の工夫
カリウムは水溶性なので、調理によって損失しやすいのが特徴です。青菜をゆでた場合は約50%、芋を煮た場合は約20%のカリウムが流失します。
カリウムを効率的に摂取するためには、以下のような調理方法が推奨されます。
生で食べられる食材は、できるだけそのまま摂取します。サラダや果物は、カリウムの損失が少ない摂取方法です。
加熱する場合は、電子レンジや蒸し調理を活用すると、カリウムの流出を抑えることができます。また、炒め物など、水を使わない加熱方法も効果的です。
スープや味噌汁、煮込み料理など、汁ごと食べられる料理も、カリウムを無駄なく摂取できる調理法です。野菜を煮た場合、カリウムは水に溶け出しますが、その汁を一緒に摂取すればカリウムを逃さず摂ることができます。
日常的な摂取のコツ
カリウムをしっかり摂取するには、1日あたり野菜350g、果物200gを目安に、食事に取り入れることが推奨されています。
朝食では果物と野菜入りのスープ、昼食ではサラダや味噌汁を添える、夕食では豆腐、海藻、根菜の煮物などを取り入れるといった工夫が有効です。
ただし、がん患者さんの中には、治療の副作用で食欲が低下している方もいらっしゃいます。そのような場合は、無理をせず、食べられるものを少しずつ摂取することが大切です。
カリウム摂取に関する注意点
腎機能に問題がある場合
腎機能が低下している患者さんでは、カリウムの排泄が困難となり、高カリウム血症のリスクが高まります。日本腎臓学会のガイドラインでは、血清カリウム値が5.5mEq/Lを超えないように管理することが推奨されています。
腎機能に問題がある場合は、カリウムの摂取制限が必要になることがあります。この場合は、カリウムの多い食品を避けるだけでなく、食材を切って水にさらしたり、茹でこぼしたりすることで、カリウムを減らす調理をすることが推奨されます。
利尿作用のある飲み物との関係
お茶やコーヒー、アルコールといった利尿作用が強い飲み物は、カリウムを一緒に排泄してしまうので、とりすぎないことが大切です。
また、暑い時期に大量の汗をかくと、カリウムが汗とともに排泄され、低カリウム血症になり、疲れやすくなったり食欲不振になったりすることがあります。
医師・管理栄養士への相談
がん患者さんの場合、治療の種類や病状、腎機能の状態などによって、カリウムの適切な摂取量は個人差があります。
特に、化学療法や放射線療法を受けている方、腎機能に影響が出ている方、電解質異常の既往がある方などは、自己判断でカリウムの摂取量を変更せず、必ず医師や管理栄養士に相談してください。
血液検査でカリウム値を定期的に確認し、医療チームと相談しながら、適切な食事管理を行うことが重要です。
カリウムとナトリウムのバランス
カリウムの摂取を考える上で、ナトリウム(塩分)とのバランスも重要です。
日本人はナトリウムを過剰摂取しやすい一方で、カリウムは不足しがちであることが分かっています。ナトリウムとカリウムの比(Na/K比)が健康に影響を与えることが、2025年の研究でも示されています。
塩分の多い食事を摂る人や外食が多い人ほど、カリウムをしっかり摂ることが大切です。カリウムにはナトリウムの排出を促す作用があるため、塩分の摂りすぎを調整するのに役立ちます。
ただし、カリウムを摂取すれば塩分を気にしなくて良いというわけではありません。まずは塩分の摂取を控えめにし、その上でカリウムを適切に摂取するという考え方が基本です。
がんと闘うには、人間の体のことや栄養素についてもある程度理解しておくことが大切です。カリウムは、体内のバランスを保つ重要なミネラルですが、がん患者さんの場合は個別の状況に応じた適切な摂取が求められます。
参考文献・出典:
- 国立がん研究センター「ナトリウム(Na)、カリウム(K)摂取量、Na/K比と死亡との関連」
- Nature ダイジェスト「がん細胞は死してなおカリウムで免疫系を抑制する」
- 健康長寿ネット「カリウムの働きと1日の摂取量」
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)の策定ポイント」
- 日経メディカル「腫瘍崩壊症候群に注意を」
- がん情報サイト「オンコロ」低カリウム血症
- 食環境衛生研究所「カリウムが多い食べ物は?1日の摂取量目安や効果的に摂取する方法も解説」
- 味の素株式会社「カリウムを多く含む食べ物は?含有量が豊富な食材とおすすめレシピも紹介」
- 厚生労働省e-ヘルスネット「カリウム」
- 簡単!栄養andカロリー計算「カリウムの多い食品と食品のカリウムの含有量一覧表」