カバジタキセルはドセタキセルが効かない人にも有効
前立腺がんではホルモン療法が効かなくなった場合、抗がん剤のドセタキセルによる化学療法が標準的な治療とされています。
しかし、この化学療法を受ける人には耐性を受けやすく、症状が進行することがあります。
今までは、ドセタキセルによる治療ができなくなった場合や最初から治療効果が認められない場合は、積極的な治療をやめて、疼痛対策などQOL(生活の質)を高めることを中心におく緩和医療がすすめられていました。
しかし、カバジタキセル(商品名:ジェブタナ)によって、新たな治療の選択肢ができたといえます。
がんの細胞分裂を阻害する働き
カバジタキセルは、ドセタキセルと同様にタキサン系の抗がん剤です。
正常な細胞は、臓器が通常の大きさになれば細胞増殖が止まります。しかし、がん細胞は、細胞分裂を繰り返して増殖することをやめず、増殖のスピードが速いことが特徴で、それをターゲットにして治療するのが抗がん剤です。
カバジタキセルは、微小管脱重合阻害薬と呼ばれる種類の薬です。微小管は、細胞の中にあって寄せ集まることで(重合)、細胞分裂時のDNA複製など重要な役割を果たします。その後、寄せ集まった微小管は再びバラバラの状態に戻り(脱重合)、細胞分裂は完了します。
この脱重合の過程を阻害すれば、がん細胞は分裂できずに死滅するという考え方で、薬が開発されました。ドセタキセルも作用機序は同じですが、前立腺がんの細胞は、ドセタキセルを細胞外へ排出することで耐性が生じる一方で、カバジタキセルは細胞外へ排出されないために効果をあらわすと期待されています。
この薬の有効率は3~5割くらいで、治療を受けた半分くらいの人に効くと考えられています。
骨髄抑制がほぼ出現、厳しい副作用がある
副作用としては、疲労感、口内炎、むくみのほか、微小管は神経細胞にも作用するので、しびれが出ることもあります。特に骨髄抑制(白血球、血小板の減少)がほぼすべての人に出現し、発熱性好中球(白血球の一種)減少などの厳しい副作用のリスクがあります。
厳しい副作用が出ることがわかっているので、抗がん剤治療の実績がある医療機関で受けることが重要です。
副作用がつらいときは、主治医に相談しましょう。治療を休んだり、投薬期間を短くするなどを検討してもらいましょう。
・重度の白血球減少(感染症への抵抗力が著しく低下する)は、ほぼ全員の患者さんに起こります→白血球を増加させる薬剤を投与します
・発熱を伴う好中球減少が約半数の患者さんに起こります→すみやかな抗生剤投与などの治療が必要です
カバジタキセルの治療費などについて
・1回の薬代は約60万円(3割負担の場合18万円)。
・通常、ステロイド薬を併用します。デキサメタゾン(商品名:デカドロン)またはプレドニゾロン(商品名:プレドニン)が選択されます。
・70歳代までで体力のある人に適用します。80歳代なら、厳しい副作用があるため、治療そのものに耐えきれないかもしれません。
・カバジタキセル、アビラテロン、エンザルタミドによる治療について、薬の選択順位は確立されていません。薬の選択や使い方については、新たな課題となっています。
以上、前立腺がんの抗がん剤治療についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。