前立腺がんの細胞がアンドロゲン(男性ホルモン)を受けとるためには、それを受け入れる受容体が必要です。
抗アンドロゲン薬は、この受容体と結合して占拠することにより、アンドロゲンと受容体の結合を阻害して、がん細胞がアンドロゲンを受けとれないようにする働きがあります。
つまり、精巣で男性ホルモンは生成されますが、前立腺に作用する直前に阻止するというわけです。
この薬にはステロイド性と非ステロイド性の2種類があります。ステロイド性のタイプは、視床下部などの中枢にも作用してLH(黄体化ホルモン)の分泌を抑制し、テストステロンの分泌を低下させます。
よく使われるのは酢酸クロルマジノン(商品名:プロスタール)です。副作用として、男性ホルモンの低下により、乳房の膨大や性欲減退があらわれることがあります。
非ステロイド性のタイプは中枢に作用しないため、血液中のテストステロンの濃度は減少しません。そのため、性欲減退はなく、性機能を温存できるメリットがあります。
よく使われるのは、ビカルタミド(商品名:カソデックス)とフルタミド(商品名:オダイン)です。副作用として、乳房の膨大や肝機能障害があらわれることがあります。
単独で使用すれば副作用が少ない
非ステロイド薬を単独で使用すれば、女性の更年期障害のような症状はなく、性欲も維持でき、骨粗しょう症になることもあまりないといえるでしょう。
ただし治療効果でいえば、MAB療法の半分程度しかないのが現実です。そのため、単独で使うことは少なく、LH-RHアゴニストと併用するMAB療法で使用されることが多いです。
これらの薬にはジェネリック薬も登場しています。薬の選択次第では1カ月の薬代が半額になることもあります。試したい場合には主治医と相談しましょう。
よく使用される抗アンドロゲン薬
<ステロイド性>
・酢酸クロルマジノン(商品名:プロスタール)
25mg錠×4錠/日
主な副作用は乳房の膨大、性欲減退
<非ステロイド性>
・ビカルタミド(商品名:カソデックス)
80mg錠×1錠/日
・フルタミド(商品名:オダイン)
125mg錠×3錠/日
主な副作用は乳房の膨大、肝機能障害
その他の治療として、女性ホルモン薬も
LH-RHアゴニストや抗アンドロゲン薬が効かなくなったときの選択肢として、エストロゲン(女性ホルモン)薬があります。男性ホルモンと女性ホルモンは、一方が増えればもう一方は減るという関係にあります。エストロゲンを投与することで、男性ホルモンの働きを弱め、前立腺がんの進行を抑えるねらいがあります。
具体的には、エチニルエストラジオール(商品名:プロセキソール)が使用されます。ただし、女性ホルモンによって乳房の膨大があらわれるほか、血栓ができやすくなって心臓や脳の血管に障害を起こして、血栓症や心筋梗塞になるなどの症状があらわれることがあり、慎重に使用することが望まれます。長期間使用することもリスクを伴います。
以上、前立腺がんのホルモン療法についての解説でした。