従来のX線を使った放射線治療とは別に陽子線や重粒子線を使った「粒子線治療」と呼ばれる方法が開発されています。
粒子とは、原子を構成する電子や原子核の陽子、中性子などの総称であり、「粒子の流れ」が粒子線です。
粒子線治療には、「陽子線治療」と「重粒子線治療」があります。「陽子線治療」の陽子とは水素原子の原子核で、この粒子を加速して高速にした放射線を陽子線と呼びます。
「重粒子線治療」では、陽子線より「質量が重い」炭素の原子核などを加速して使っています。
X線は、ターゲットではなく照射された皮膚近くで最もエネルギーが大きくなり、体内へ深く進むにしたがって弱くなります。それに対して、陽子線や重粒子線は、ターゲットまで飛んでいき、ある位置でエネルギーが最大になる性質を持っています。そのため目的のがん組織でエネルギーが最大になるように、調節することができます。
また、X線は目標となるがん病巣を突き抜けて進んでしまうため、がんをねらって照射しても、ほかの臓器への影響を防ぐことは困難です。
それに比べ、陽子線や重粒子線は、がんに向かって最大のエネルギーを発揮したあとは、そこで消えてしまう性質を持っています。これによって、ほかの臓器への影響を最小限にとどめることができます。
施設が少なく、治療費が高いといった課題が
粒子線療法を実施するための大がかりな装置を設置している施設は日本では少なく、だれでも気軽に利用できるわけではありません。
健康保険適用の対象となっていない先進医療の扱いとなるので、治療費の自己負担額も約300万円と莫大にかかります。そのため最近では、民間の先進医療に対応した保険を使う人も増えてきました。
前立腺がんで粒子線治療が対象となる人
・病期(ステージ)でいえばT3で、前立腺全摘除術の対応が困難な人
・ほかの臓器へ転移していない
以上、前立腺がんの放射線治療についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。