3次元CTでターゲットをしぼる3D-CRT
放射線療法では、線量が多いほどがん細胞を死滅させることができます。しかし。線量を増やせば、直腸や膀胱など、前立腺周辺の臓器への悪影響も大きくなることは避けられません。
その点を改善したのが3D-CRT(3次元原体照射法)です。3次元のCT(コンピュータ断層撮影)情報に基づいてターゲットをしぼり込み、色分けで表示される精密な放射線量分布のシミュレーション画像によって、照射部位を決定します。
従来の4門照射および回転照射よりさらに高いピンポイント性で、多方向から照射します。ねらった部分にだけ放射線を集中させ、周辺の組織への影響が少ないのが特徴です。
3D-CRTによる治療の対象は転移していない病期T1~T3(局所限局がん~浸潤がん)です。リンパ節転移や遠隔転移がある場合は、対象とはなりません。
放射線に強弱をつけ副作用を軽減させるIMRT
3D-CRTを、さらに進化させたのがIMRT(強度変調放射線療法)です。この最大の特徴は、ターゲットを前立腺と精嚢にしぼり込んで照射できることに加え、照射範囲の中で放射線の強度を変えられる(変調)ことです。
これにより、前立腺と精嚢への線量は増加させると同時に、直腸や膀胱への線量は低減させることが可能となりました。
たとえば、前立腺の中央部を通る尿道付近への照射は弱め、がんが発生しやすい辺縁域に線量を集中すれば、排尿障害などの副作用を低く抑えることができます。
IMRTの治療の対象となるのは局所限局がん~浸潤がん(T1~T3で、転移がない)です。3D-CRTと同様に、リンパ節転移や遠隔転移している場合は適用されません。
IMRTは2008年4月に健康保険適用となり、利用者は増加傾向が続いています。
トモセラピー
トモセラピーはCT(コンピュータ断層撮影)装置とリニアック(直線加速器)が一体化したIMRT専用機器です。IMRTは、治療にとりかかるまでの治療計画を立てるのに時間がかかりますが、これなら短縮することができます。
また、CTを内蔵しており、放射線照射の計画表の作成と治療が同じ機器でできるため、照射位置をきわめて正確に設定することができます。その分、合併症も少なくすることができ、患者さんにとっては負担の少ない画期的な治療法といえます。
ただし、高度な機器であるため導入するのに5億円くらいかかり、実施できる施設は国内でも限られているのが現状です。
以上、前立腺がんの放射線治療についての解説でした。