乳がんが再発した場合は、基本的には手術・放射線などの局所療法は行われず、抗がん剤などを使った薬物療法が中心となります。
再発=初回の治療で切除した腫瘍以外にがんの範囲が広がっているため、乳房を中心とした全身への対応が必要なためです。
薬は初期治療同様、がんの「サブタイプ(乳がんの特徴)」に合わせて選びますが、初期治療の経過や初期治療からの時間などをふまえ、検査・治療計画を再度立てます。
再発・転移病巣の組織をとり、がんのサブタイプを改めて調べることも有効です。HER2は変わらないとされますが、ホルモン受容体は陰性化する可能性があるからです。
乳がん再発時の薬物療法の流れ
再発時、病院で行う治療の目的は、再発・転移に伴う症状の緩和と症状発現の予防、生存期間の延長という3つになります。
このため、基本的にはなるべく体にやさしい治療(副作用の少ない治療)から実施されるのが一般的です。
上記の流れのように、例えば「ホルモン受容体陽性」の人なら、ならホルモン療法から始め、一番目の薬が効かなくなったら二番目の薬、それも効かなくなったら三番目の薬というように進めます。
どれも効かなくなったら、抗がん剤治療という具合に、負担が少なく、効果の期待できる薬を順に使っていきます。もちろんこれまでの治療経過や患者の希望、QOLを考慮して変更することも多々あります。
乳がん再発・転移の治療で使われる主な薬
【ホルモン療法】
閉経前 | 閉経後 | |
第一次 | ・抗エストロケン剤(タモキシフェン)+LH-RHアゴニスト製剤 ・アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール)+LH-RHアゴニスト製剤 |
・アロマターゼ阻害剤→抗工ストロゲン剤 (タモキシフェンまたはフルベストラント) ・アロマターゼ阻害剤く+フルベストラント> |
第二次 | ・アロマターゼ阻害剤+LH-RHアゴニスト製剤 ・抗工ストロケン剤(タモキシフェン)+LH-RHアゴニスト製剤 |
|
第三次 | ・プロゲステロン製剤(ヒスロン) | ・プロゲステロン製剤(ヒスロン) |
第四次 | ・エチニルエストラジオール(プロセキソール) |
【抗HER2療法(分子標的薬)】
第一次 | トラスツズマブ(ハーセプチン)+ペルツズマブ(パージェタ)+抗がん剤 |
第二次 | ・トラスツズマブ(ハーセプチン)+抗がん剤 ・ラパチニブ(タイケルブ)+カペシタビン(ゼローダ) ・トラスツズマブ(ハーセプチン)+ラパチニブ(タイケルブ) ・トラスツズマブ(ハーセプチン) ・ラパチニブ(タイケルブ) |
第三次 | ・トラスツズマブ(ハーセプチン)やラパチニブ(タイケルブ)による治療の継続 ・第一次、第二次で用いていない抗がん剤による化学療法 |
【抗がん剤】
第一次 | ・アンスラサイクリンまたはタキサンを含む治療 く+ベバシズマブ(アバスチン)> |
第二次 | ・アンスラサイクリンまたはタキサンを含む治療 く+ベバシズマブ(アバスチン)> (第一次で使用されなかったどちらかの薬剤を含む治療) |
第三次 | ・カペシタビン(ゼローダ)・ゲムシタビン(ジェムザール) ・ビノレルビン(ナベルビン)・イリノテカン(カンプトなど) ・テガフール、ギメラシル、オテラシルカリウム(TS-1) ・エリブリン(ハラヴェン) |
以上、乳がん再発時・転移時の治療法についての解説でした。