重粒子線による放射線治療は、すでに前立腺がん、肺がん、頭頚部がんなどに対して行われていますが、乳がんは手術と通常の放射線療法でほぼ対処できると考えられており、これまでほとんど行われてきませんでした。
保険外であるため、300万円以上の費用もかかり、あえて重粒子線を使たいという人はとても少数であることが現状です。一部の施設では臨床試験も進められています。
※重粒子線治療とは
現在、ほとんどの放射線療法に使われているX線は体の表面近くで最も強く、進むにつれて減弱するため、がんの病巣に至るまでに正常組織が障害を受けやすく、またがんを通り越した後の組織にも影響を与える危険性があります。
これに対して、陽子線や重粒子線には急に強くなるピークがあり、それより深部には進まないという特徴があるため、ピークの部分を標的となるがんの病巣に合わせれば、周りの正常組織への障害を抑えて、ねらった病巣だけに高い線量を集中して照射することができます。
なお重粒子線には、がん細胞を破壊する力が強いという特徴もあります。その力はX線の2~3倍であり、陽子線がX線の1.1倍であるのと比べ優れているといえます。照射の回数も少なく済みますが、重粒子線治療には大がかりな装置が必要で、稼動中の施設は世界で7施設しかなくうち4施設が日本にあります。