人工乳房を使う再建は、1度目の手術で「エキスパンダー」を胸の筋肉の下に入れ、その中に生理食塩水を徐々に入れることで皮膚を伸ばした後、2度目の手術でエキスパンダーと「人工乳房」を入れ替えるのが一般的な方法です。
手術は2回になりますが、いずれも日帰りも可能なもので、体への負担が少ないのが特徴です。
人工乳房(インプラント)をつかった乳房再建手術のポイント
このように人工物を使用する場合、エキスパンダーと人工乳房の品質がよいことも大切です。
エキスパンダーは、テクスチャードタイプと呼ばれるものがが被膜拘縮(異物である人工物に対して生体反応の膜ができ、硬く変形してくること)などの合併症を起こすことがほとんどなく、皮膚をよりきれいに伸ばすことが可能です。
皮膚を伸ばすときに痛みが出ることがありますが、痛いときやつっぱるとき、皮層が蒼白なときは生理食塩水の入れすぎである可能性が高いので医師に伝えましょう。無理なく少しずつ伸ばすことがポイントです。
なお、人工乳房はアメリカのアラガン社とメンター社が2大メーカーとされており、ほぼスタンダードです。メンター社製のほうが安価ですが、アラガン社製のほうがやわらかく種類が多めであるのが特徴です。日本人女性に合うサイズは30~40種類あります。
保険適用の人工乳房もアラガン社製ですが、おわんのような形の「丸型(ラウンド型)」と、しずくのような形の「アナトミカル型」の2種類があり、後者のほうが日本人女性に向いています。
丸型は日本人女性の体型に合いにくく、また保険がきく丸型は旧タイプで、素材が柔らかすぎて安全性に不安があり、5~7年に1回交換しなければなりません。
2014年1月に保険適用になったアナトミカル型は、「ソフトコヒーシブシリコン」という素材でできており、品質が良く安全性も高く、弾力性があって自然なふくらみを作りやすいのが特徴です。しかし種類が多いので、本当にその人に合ったものを選ぶのが難しいというデメリットがあります。そのため経験豊富な医師とよく相談したうえで選ぶことが重要です。
インプラントの費用と注意事項
費用は自費診療の場合で100万円が一つの目安ですが、施設や入院期間、人工乳房の種類などによりさまざまなので、必ず確認しておきましょう。
気をつけたいのは人工物、特にエキスパンダーの感染です。感染したらすぐに取り出さなければならず、放っておくと露出することもあるため、皮膚が赤いなど感染症の徴候がみられたら病院で診察を受けましょう。
感染率は3%程度で、もし感染しても治まったところでまた入れ直せぱ再建は可能です。
人工乳房を使った再建術は、全身の状態が良ければ誰でも受けることができます。身体的な負担が少なく時間をとられないため、多くの人が普段通りの生活を送りながら、再建に臨んでいます。
以上、乳がんの再建手術についての解説でした。