乳がんで行われる薬物療法には、ホルモン剤によるホルモン療法、抗がん剤治療、分子標的治療(抗HER2治療薬)の3つの方法があります。
ホルモン療法と抗HER2療法は、がんのサブタイプによって効きやすさを予測できるため、どの薬を用いるかは、サブタイプを中心に考えられます。
この表をかんたんに集約すると、おおまかに次のような分類になります。
・ホルモン受容体陽性←ホルモン療法
・HER2陽性←抗HER2療法(ハーセプチンなどを使う)
※ただし、現状では分子標的治療薬は抗がん剤と併用することが標準治療であるため、抗がん剤+抗HER2療法となる。
・ホルモン受容体陰性、HER2陰性←抗がん剤治療のみ
注意が必要なのは「ホルモン受容体陽性、HER2陰性」のケースです。この場合にホルモン療法だけを行うか、ホルモン療法に抗がん剤を追加するのかは、しこりの大きさや組織学的グレード(悪性度)、腋窩リンパ節転移の数などから、微小転移のリスクを十分に評価して決めるとされています。
抗がん剤は、どのタイプのがんに対しても効果を期待できる反面、強い副作用が出ることもあり、患者自身の希望も重要な要素のひとつとなります。「脱毛は避けたい」などの希望は、遠慮せずに医師に伝えましょう。
がんの遺伝子を診断して、再発のリスクをより細かく予測する「オンコタイプDX」や「マンマプリント」の検査は、術後に化学療法を行うかどうかの判断の一助となります。受けられる施設は増えていますが、保険適用となっておらず、これらの検査を受けるには1回約40万円の費用が必要です。
以上、乳がんの薬物療法についての解説でした。
がんと診断されたあと、どのような治療を選び、日常生活でどんなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。
納得できる判断をするためには正しい知識が必要です。