
肺がんに対するラジオ波焼灼療法とは
ラジオ波焼灼療法(RFA: Radiofrequency Ablation)は、電極針を肺がんの腫瘍に直接刺し込み、高周波電流によって発生する熱でがん細胞を壊死させる治療法です。
2011年に肺がんに対する保険適用が認められて以降、手術が困難な患者さんや高齢の患者さんにとって重要な治療選択肢となっています。
この治療法は、体への負担が少ない低侵襲治療として位置づけられており、従来の外科手術と比較して入院期間が短く、回復も早いという特徴があります。肺機能を温存しながら腫瘍を治療できる点で、特に呼吸機能が低下している患者さんに適しています。
ラジオ波焼灼療法の治療対象となる肺がん
適応となる患者さんの条件
ラジオ波焼灼療法が適応となるのは、主に以下の条件を満たす患者さんです。腫瘍の大きさは直径3cm以下が推奨されており、腫瘍の個数は原則として片側の肺に3個以内とされています。
手術が困難な理由としては、高齢であること、心臓や呼吸器の機能が低下していること、すでに肺の手術を受けたことがあり再手術が難しいことなどが挙げられます。また、転移性肺腫瘍に対しても条件を満たせば治療が可能です。
治療が難しいケース
腫瘍が気管支や大血管に近接している場合、治療による合併症のリスクが高くなるため慎重な判断が必要です。腫瘍の位置や大きさ、患者さんの全身状態を総合的に評価して、治療の適応が決定されます。
ラジオ波焼灼療法と放射線治療の違い
肺がんの治療において、ラジオ波焼灼療法と放射線治療はともに低侵襲な治療法として選択されますが、その特性には明確な違いがあります。
| 比較項目 | ラジオ波焼灼療法(RFA) | 放射線治療(定位照射) |
|---|---|---|
| 治療方法 | 電極針を刺して熱で焼灼 | 体外から放射線を照射 |
| 治療期間 | 通常1回(1日) | 数日~数週間 |
| 入院期間 | 3~7日程度 | 外来または短期入院 |
| 麻酔 | 局所麻酔または全身麻酔 | 不要 |
| 適応腫瘍サイズ | 3cm以下 | 5cm程度まで |
| 主な合併症 | 気胸、出血 | 放射線肺炎 |
ラジオ波焼灼療法は1回の治療で完結するため、通院の負担が少ない点がメリットです。一方で、針を刺す処置が必要なため、気胸などの合併症に注意が必要です。放射線治療は体に針を刺さない非侵襲的な方法ですが、複数回の通院が必要となります。
ラジオ波焼灼療法の実際の治療プロセス
治療前の検査と準備
治療を開始する前に、CTスキャンやPET-CTなどの画像検査で腫瘍の位置、大きさ、周囲の臓器との関係を詳しく調べます。呼吸機能検査や心電図、血液検査なども実施して、全身状態を評価します。
抗凝固薬や抗血小板薬を服用している患者さんは、出血リスクを減らすため、治療前に一定期間休薬する必要があります。
治療当日の流れ
治療はCTガイド下で行われることが一般的です。患者さんは治療台に横になり、CTで腫瘍の位置を確認しながら、胸部の皮膚から電極針を刺入します。局所麻酔または全身麻酔が使用されます。
電極針が腫瘍内の適切な位置に到達したら、高周波電流を流して腫瘍を60~100度程度に加熱します。治療時間は腫瘍の大きさにより異なりますが、通常10~30分程度です。
治療後の経過観察
治療直後はCT検査で気胸や出血がないか確認します。数時間の安静後、問題がなければベッド上で過ごすことができます。通常3~7日程度の入院が必要で、退院後も定期的な画像検査で治療効果と再発の有無を確認します。
保険適用と治療費用について
保険適用の条件
肺がんに対するラジオ波焼灼療法は2011年4月から保険適用となっています。原発性肺がん、転移性肺腫瘍のいずれも保険診療として受けることができます。
ただし、保険適用には一定の条件があります。腫瘍の大きさや個数、患者さんの全身状態などを総合的に判断して、適応が決定されます。
治療にかかる費用の目安
ラジオ波焼灼療法の医療費は、検査費用や入院費用を含めて、3割負担の場合で約20~30万円程度が一般的です。ただし、使用する医療機器や入院日数、合併症の有無などによって費用は変動します。
高額療養費制度を利用することで、自己負担額を軽減できます。所得に応じて月額の上限額が設定されているため、事前に限度額適用認定証を取得しておくことをお勧めします。
ラジオ波焼灼療法を実施できる主要な病院
東京都内の主要施設
東京都内では、がん研有明病院、国立がん研究センター中央病院、東京医科大学病院などの大学病院や専門病院でラジオ波焼灼療法が実施されています。これらの施設では、経験豊富な呼吸器外科医や放射線科医がチームで治療にあたっています。
大阪・名古屋・福岡での実施施設
大阪府では大阪国際がんセンター、大阪市立大学医学部附属病院などが主要な実施施設です。
名古屋では愛知県がんセンター、名古屋大学医学部附属病院などで治療が行われています。
福岡県では九州大学病院、九州がんセンターなどが代表的な施設です。いずれの施設も、肺がん治療の実績が豊富で、多職種による包括的なサポート体制が整っています。
病院選びのポイント
ラジオ波焼灼療法を受ける病院を選ぶ際は、年間の治療件数、合併症の発生率、治療成績などを確認することが重要です。日本IVR学会や日本肺癌学会などの専門学会が認定する施設や専門医がいる病院を選ぶことで、より安全で効果的な治療を受けられる可能性が高まります。
治療効果と生存率について
腫瘍の制御率
ラジオ波焼灼療法による腫瘍の局所制御率は、腫瘍の大きさによって異なります。直径2cm以下の腫瘍では80~90%程度の高い制御率が報告されていますが、3cmを超える腫瘍では制御率が低下する傾向があります。
治療後のCT検査では、焼灼された部分が徐々に縮小していく経過を観察します。完全に腫瘍が消失するケースもあれば、瘢痕として残るケースもあります。
生存率に関するデータ
早期肺がん(ステージI)の患者さんに対するラジオ波焼灼療法の5年生存率は、複数の研究で40~70%程度と報告されています。手術が可能な患者さんと比較すると生存率はやや低くなりますが、これは手術が困難な高齢者や合併症を持つ患者さんが対象となることが影響しています。
転移性肺腫瘍に対する治療では、原発巣の種類や全身状態によって予後が大きく異なります。
起こりうる合併症とそのリスク管理
主な合併症の種類
ラジオ波焼灼療法で最も頻度の高い合併症は気胸です。針を刺す際に肺に穴が開き、空気が胸腔内に漏れ出す状態です。軽度の気胸であれば経過観察で改善しますが、重度の場合は胸腔ドレーンの挿入が必要になることがあります。
その他の合併症として、胸水貯留、出血、肺炎、胸痛などが報告されています。重篤な合併症の発生率は全体の5%以下とされていますが、患者さんの状態や腫瘍の位置によってリスクは変動します。
合併症への対応
治療を行う施設では、合併症が発生した際に迅速に対応できる体制が整えられています。治療後は慎重な経過観察が行われ、異常が見られた場合は適切な処置が実施されます。
患者さん自身も、治療後に息苦しさ、胸痛、発熱などの症状が現れた場合は、すぐに医療スタッフに伝えることが重要です。
ラジオ波焼灼療法を選択する際の判断基準
他の治療法との比較検討
肺がんの治療法を選択する際は、手術、放射線治療、薬物療法、ラジオ波焼灼療法などの選択肢を総合的に比較することが必要です。それぞれの治療法にはメリットとデメリットがあり、患者さんの年齢、全身状態、腫瘍の特性、本人の希望などを考慮して最適な方法を選びます。
手術が可能な患者さんにとっては、外科手術が第一選択となることが多いですが、手術のリスクが高い場合や患者さんが手術を希望しない場合には、ラジオ波焼灼療法が有力な選択肢となります。
セカンドオピニオンの活用
治療方針を決定する前に、複数の医療機関や専門医の意見を聞くセカンドオピニオンを活用することも重要です。特に、ラジオ波焼灼療法の適応や効果について、異なる視点からの評価を受けることで、より納得した治療選択ができます。
肺の構造と肺がんが及ぼす影響
肺の基本的な構造
肺は胸部の大部分を占める呼吸器官で、肋骨と背骨で囲まれた胸腔内に位置します。胸腔の中央部は縦隔と呼ばれ、心臓、大血管、気管、食道などの重要な臓器が集まっています。
縦隔の左右には右肺と左肺があり、それぞれ気管支を通じて空気の出入りを行っています。気管は左右に分岐して気管支となり、さらに細かく枝分かれを繰り返して最終的に肺胞に到達します。この肺胞は直径0.1~0.2mm程度の小さな袋状の構造で、肺全体で3億個以上存在します。
肺の働きとガス交換
私たちが呼吸によって取り込んだ空気は、鼻や口から気管、気管支を経て肺胞に届きます。肺胞の壁は非常に薄い膜でできており、ここで血液との間で酸素と二酸化炭素の交換が行われます。
新鮮な酸素は肺胞から血液中に取り込まれ、全身の細胞に運ばれます。一方、細胞での代謝によって生じた二酸化炭素は血液によって肺に運ばれ、肺胞を通じて体外に排出されます。この一連の過程をガス交換と呼びます。
肺がんによる機能への影響
肺がんが発生すると、腫瘍によって気管支が狭くなったり、肺胞が破壊されたりすることで、正常なガス交換が妨げられます。その結果、息切れや呼吸困難などの症状が現れることがあります。
進行した肺がんでは、腫瘍が広範囲に及ぶことで呼吸機能が著しく低下し、日常生活に支障をきたすようになります。そのため、早期発見と適切な治療によって肺の機能を維持することが、患者さんの生活の質を保つ上で重要です。
参考文献・出典情報
- 国立がん研究センター
- 日本肺癌学会
- 日本IVR学会
- 国立がん研究センターがん情報サービス
- American Cancer Society
- 厚生労働省
- 日本呼吸器学会
- 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
- National Comprehensive Cancer Network
- 日本臨床腫瘍学会
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