肺がんの治療を決める重要な要素は3点あります。「中心型肺がん」(太い気管支にできる)か「末梢型肺がん」(肺の奥深いところにできる)か。「小細胞がん」「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」のどのがんか。そして、大きなカギを握っているのが病期(ステージ)分類です。
病気(ステージ)とは、がん細胞の広がり度合いによってがんの進行度を分類するものです。1期~4期まであります。
■IA期
がんが3センチ以下でリンパ節転移がない。
■IB期
がんが3センチ以上、5センチ以下でリンパ節転移がない。
■ⅡA期
がんが5センチ以下で、がんのある側の肺内リンパ節に転移がある。または、がんが5センチ以上、7センチ以下でリンパ節転移がない。
■ⅡB期
がんが5センチ以上、7センチ以下で、がんのある側の肺内リンパ節に転移がある。または、がんが7センチ以上だが、リンパ節転移がない。
■ⅢA期
がんの大きさに関わらず、病巣側の縦隔リンパ節にまで転移がある。
■ⅢB期
がんの大きさに関係なく食道や大動脈など周辺の臓器にがんの浸潤がみられたり、病巣の反対側のリンパ節にまで転移があるなど。
■Ⅳ期
がん細胞を含んだ胸水などがたまっている。または、他臓器への遠隔転移がある。
なお、肺がんのタイプでいうと転移しやすい「小細胞がん」は化学療法、放射線療法で対応し、「非小細胞がん」(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)は早期であれば手術が基本となります。
日本の肺がん手術は2009年には3万1301件行われ、術後30日以内の死亡率は0.4%。これは欧米と比べて低い数字で、良い成績となっています。その手術の75%は肺の片側全部を切り取らない「肺葉切除」で行われています。がんのできているどちらか一方の肺を切除する肺全摘術はわずか1.8%と、今ではかなり少なくなったといえます。
肺は右肺と左肺があり、右肺は上葉、中葉、下葉の2つの肺葉からできており、左肺は上葉、下葉の2つの肺葉からできています。がんができている肺葉を切除する「肺葉切除」が、標準的な手術方法だといえます。
基本的には胸を切り開いて肺葉を切除することになりますが、肺がんも比較的早期に発見されることが増えたため、体に負担の少ない手術が広く行われるようになってきています。胸腔鏡を使った「胸腔鏡手術」です。
胸腔鏡手術は、右肺にがんができたときは患者の右わきの下、左肺にできたときは患者の左わきの下に直径3~4センチ程度の孔(あな)ひとつと、直径1センチ程度の孔を2か所にあけ、1か所からは胸腔鏡を入れ、2か所からは手術器具を入れて治療する方法です。
胸腔鏡は拡大することも、左右上下に画面をふることも可能で。手術する医師、助手たち全員がモニターに映し出される画像を見ながらチーム医療を行うことになります。がん部分の切除のみならず、リンパ節の切除も胸腔鏡手術で行われます。
早期がんの増加に伴い、胸腔鏡を中心とした手術が肺がん手術全体の54%を占め、増加傾向にあります。開胸手術と比べて、皮膚の傷が小さく、術後の痛みも少なく、早期退院・早期社会復帰が可能、などのメリットがあります。
できるだけ機能を残す区域切除が増加
早期に発見されることが少なかった肺がんですが、検査技術の発達により、2センチ未満の早期がんも数多く発見されるようになってきました。それによりより多く肺の機能を残す、縮小手術が行われるようになってきました。
2009年に行われた日本の肺がん手術の22%が縮小手術(区域切除、部分切除)です。特に「区域切除」を行う機会が増加しています。
縮小手術の区域切除は、非小細胞がん(扁平上皮がん、腺がん、大細胞がん)のうち早期の肺がんが対象となります。区域切除とは文字通り、肺葉をより区域的に切除する方法です。肺葉の外側3分の1くらいまでにできている早期がんが対象になります。
まとめると、①「非小細胞がん」、②「直径2センチ以下」、③「リンパ節に転移がない」、④「肺葉の外側3分の1くらいまでにがんができている」場合に区域切除が適応になります。
以上、肺がんのステージ分類と手術についての解説でした。
がん治療において、手術は最も体へのダメージが大きい治療法です。そして「切れば終わり」ではなく、がんとの闘いはそこから始まります。
どんな手術をいつすべきか?手術の後にどのようなケアをすべきか?という選択はとても重要です。