膵臓がんは、膵管の表面にある上皮細胞から発生し、大きくなれば簡単に膵臓外の組織や臓器に浸潤し、転移する可能性も高くなります。
膵管内あるいは膵臓内にとどまっている、いわゆる"早い段階"の膵臓がんでは、多くの場合、症状は見られません。逆にいえば「なんらかの症状」が現れた場合は、多くの場合で、すでに膵臓がんが進行した状態であるということです。
進行した状態の膵臓がん
膵臓がんが大きくなると、がんは膵臓の外に出て、がん細胞は簡単に門脈や神経、リンパ管、胆管内に入ります。このために、膵臓がんは胃がんや大腸がんと較べると周囲に広がりやすく、リンパ節転移や神経浸潤を起こすリスクが高くなります。
また、門脈内に入ったがん細胞は、すぐに肝臓に到達し、そこで徐々に発育します。これが「肝転移」です。このように、進行した状態の膵臓がんは、リンパ節転移や神経浸潤、肝転移などを起こしやすいがんだということです。
膵臓がんのできる部位と膵臓がんでよく見られる症状
膵臓がん全体では、腹痛が約40%、黄疸が約15%、次いで腰痛、背中痛、体重減少などが見られますが、がんのできる部位によって症状が異なることに注意が必要です。また、糖尿病の新たな発症あるいは急激な悪化も膵臓がんを疑うきっかけとなります。
これらの症状が出現した場合は、すでに進行した状態のがんである場合が多いのが現状です。また、膵臓がん診断時にまったく症状のないケースも12%と決して少なくありません。
膵頭部にできたがんの場合の症状
膵頭部にできたがんの1番の特徴は「黄疸症状」が出ることです。これは、がんによって膵頭部の後ろから内部を走っている胆管が狭くなったとき、あるいは閉塞(閉じてふさがること)したときに現れます。
膵頭部がんの約60%にこの黄疸症状が出現するとされています。膵頭部がんでは、そのほか、腹痛が約60%、体重減少が約50%に見られます。
膵体部や膵尾部にできたがんの場合の症状
一方、膵体部や膵尾部にできたがんの場合は、なかなか症状が出にくく、見つかったときにはかなり進行した状態であることが特徴です。症状としては食欲不振、腹痛、背部痛、体重減少などがありますが、中でも特徴的なのが背部痛です。
膵体尾部は背中の方に位置しており、その周囲には多くの神経が走っています。つまり、膵臓はわずか一面程度の薄い臓器ですので、がんができるとすぐに背中の方の神経に浸潤してしまいます。非常に頑固な背部痛は膵体部や膵尾部のがんの特徴といえます。
膵体部や膵尾部のがんで注意しなければいけないのは、なんとなくおなかや背中が痛いとか、なんとなくだるい、食欲がない、などの不定症状(非特異的症状)が多いことです。これらの症状があるからといって、それらが必ずしも膵臓がんの症状というわけではありません。
しかし、胃の検査などで異常なしとの診断が下され、気休めに胃薬を内服している間に膵臓がんがどんどん進行してしまうということがあります。症状がでたときに、ほかのはっきりした原因がなければ膵臓がんの疑いを持つことも大切だといえます。
糖尿病の新たな発症や、血糖の急激な悪化は要注意
糖尿病と膵臓がんには明らかな関係があり、糖尿病患者がそうでない人に比べて高い率で膵臓がんを発症しやすいことがわかっています。
膵臓は血糖値をコントロールするホルモンを分泌する臓器ですので、糖尿病の新たな発症や急に血糖コントロールが不良になった場合は、膵臓がんの発症を疑う大きな目安になるといえます。
膵臓がんは症状が乏しいため、日頃から血糖値を意識することが大切です。特に体重増加や過食などの原因がないにもかかわらず、糖尿病を新たに発症したり、治療中に悪化したりした場合には、膵臓のなんらかの異常を疑う必要があるといえます。
以上、膵臓がんの症状についての解説でした。