前立腺がんは、早期にはほとんど症状がないため、早期で見つかる人の多くは検査がきっかけとなっています。
そのため、日本泌尿器科学会では、このがんが増えてくる50歳以上の男性には、PSAの検診が勧められています。症状が出てきた場合は、ある程度、がんが進んでいる場合が多いからです。
たとえば、尿が出にくい、トイレが近くなる、排尿時の痛みいった症状が出てきます。ただ、これは前立腺肥大症と症状が似ていて見逃されることがあるので注意が必要です。さらに骨などへの転移が進むと、腰痛(転移部位の痛み)、足のむくみ、尿閉、血尿などが生じます。
病院で、PSAや直腸診や画像診断(超音波やCT、MRI)を行なって「やはり疑わしい」となった場合、今度は「針生検」という前立腺に針を刺して組織の一部を採取し、がん細胞の有無をみる検査を行ないます。
前立腺がんの診断
ここで、がん細胞が見つかった場合、がんの悪性度とひろがりの判定をします。
1.どのような悪性度をもったがんか(グリーソンスコア)
2.腫瘍の広がりはどうか
3.転移はないか
という視点から、がんの状態を診断します。進行状態は大きく3つに分類します。
1.がんが前立腺のなかだけに存在する→限局がん(T1-T2)
2.がんが前立腺周囲の組織に浸潤している→局所進行がん(T3)
3.がん細胞がリンパ節や他の臓器に転移している→進行がん(遠隔転移有するがん)(T4)
これらを診断したあと、どのような選択が可能かを検討していきます。
前立腺がん治療の選択肢
リスクの程度によって治療の選択肢は変わってきますが、大きく分けて次の5つがあります。そして、たとえば「手術」を選択した場合も、「開腹手術」「腹腔鏡手術」「ロボット手術」と、さらに細かく選択肢があります。
1.しばらく様子を見る→PSA監視療法
2.がんを切りとる→手術(①開腹②腹腔鏡③ロボット)
3.放射線をあて、がんの消滅をはかる→放射線治療(①小線源療法(ブラキセラピー)②一般のコバルトによる外照射③3次元原体照射④IMRT⑤陽子線治療・重粒子線治療)
4.男性ホルモンを調整する→ホルモン療法
5.抗がん剤でがんを攻撃する→抗がん剤治療
ただ、放射線治療にはまだ実際に使われるようになって間がなく、一部の病院でしか行なっていないものもあり、陽子線・重粒子線治療は、2015年の段階では保険のきかない先進医療となっています。
以上が、前立腺がんの標準的な治療の選択肢です。
以上、前立腺がん治療の選択肢についての解説でした。