
こんにちは。がん専門のアドバイザー、本村ユウジです。
アフィニトール(一般名:エベロリムス)は、腎臓がんや神経内分泌腫瘍、乳がんなどに使用される分子標的薬です。毎日服用を続ける薬ですので、治療費や保険適応、実際の患者負担額について気になる方も多いと思います。
この記事では、アフィニトールの薬価、保険適応の範囲、高額療養費制度を利用した場合の実際の負担額、治療期間、副作用などについて、2026年1月時点の最新情報をもとに詳しく解説します。
アフィニトール(エベロリムス)とは
アフィニトールは、ノバルティスファーマ株式会社が製造販売する分子標的薬です。がん細胞の増殖に関わるmTOR(エムトール)というタンパク質の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑制します。
錠剤タイプの経口薬で、1日1回の服用により効果を発揮します。点滴や注射ではなく、自宅で服用できる薬であることから、通院の負担が比較的少ない治療法です。
保険適応となるがんの種類
2026年1月現在、アフィニトールには以下のがんに対する保険適応が認められています。
適応症と保険適応の条件
| がんの種類 | 保険適応の条件 | 標準用量 |
|---|---|---|
| 腎細胞がん | 根治切除不能または転移性の腎細胞がん | 1日1回10mg |
| 神経内分泌腫瘍 | 切除不能または転移性の神経内分泌腫瘍 | 1日1回10mg |
| 乳がん | 手術不能または再発乳がん(内分泌療法剤との併用) | 1日1回10mg |
| 結節性硬化症 | 結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫、上衣下巨細胞性星細胞腫など | 成人:1日1回10mg、小児:体表面積により調整 |
腎細胞がんの場合、スニチニブやソラフェニブなどの治療後に病状が進行した患者さんに対して使用されることが一般的です。乳がんの場合は、エキセメスタンなどの内分泌療法剤と併用して使用されます。
アフィニトールの薬価と1日あたりの治療費
2026年1月時点の薬価
アフィニトールには複数の規格があり、それぞれ薬価が設定されています。
| 製品名 | 含有量 | 薬価(1錠あたり) |
|---|---|---|
| アフィニトール錠2.5mg | 2.5mg | 4,837.90円 |
| アフィニトール錠5mg | 5mg | 9,089.10円 |
| アフィニトール分散錠2mg | 2mg | 4,327.90円 |
| アフィニトール分散錠3mg | 3mg | 6,114.50円 |
標準的な1日あたりの治療費
腎細胞がん、神経内分泌腫瘍、成人の乳がん患者さんの標準的な投与量は、1日1回10mgです。5mg錠を2錠服用する場合、1日あたりの薬剤費(保険適応前)は以下のようになります。
9,089.10円 × 2錠 = 18,178.20円(1日あたり)
これは保険適応前の金額です。実際には、健康保険が適用されますので、患者さんの自己負担割合(通常3割)で計算すると、1日あたり約5,453円となります。ただし、高額療養費制度を利用することで、実際の負担額はさらに軽減されます。
高額療養費制度を利用した場合の患者負担額
アフィニトールのような高額な薬剤を継続的に使用する場合、高額療養費制度が非常に重要な役割を果たします。
高額療養費制度とは
高額療養費制度は、1か月(同じ月の1日から末日まで)に支払った医療費の自己負担額が一定の上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。上限額は年齢と所得によって異なります。
2026年1月時点の自己負担限度額(70歳未満の場合)
| 所得区分 | 自己負担限度額(月額) | 多数回該当(4回目以降) |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円以上 (標準報酬月額83万円以上) |
252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
| 年収約770万~1,160万円 (標準報酬月額53万~79万円) |
167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
| 年収約370万~770万円 (標準報酬月額28万~50万円) |
80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
| 年収約370万円以下 (標準報酬月額26万円以下) |
57,600円 | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯 | 35,400円 | 24,600円 |
なお、2025年8月に予定されていた高額療養費制度の自己負担限度額引き上げは見送られています。今後の制度改正については2026年秋までに結論が出される予定です。
アフィニトール治療での実際の月額負担例
例えば、年収約500万円の患者さん(70歳未満、標準報酬月額28万~50万円)が、アフィニトールのみを1か月間(30日)服用した場合を考えてみます。
薬剤費(保険適応前):18,178円 × 30日 = 545,340円
3割負担:545,340円 × 0.3 = 163,602円
高額療養費適用後の自己負担額:80,100円 + (545,340円 - 267,000円) × 0.01 = 82,883円
このように、高額療養費制度を利用することで、月額の自己負担額は約8万3千円程度に抑えられます。
さらに、同一世帯で直近12か月間に3回以上高額療養費が支給された場合は、4回目以降の自己負担限度額が44,400円まで下がります(多数回該当)。長期にわたって治療を続ける患者さんにとって、この制度は経済的負担を軽減する重要な仕組みです。
限度額適用認定証の活用
高額療養費制度を利用する際は、事前に「限度額適用認定証」を取得しておくことをお勧めします。
この認定証を医療機関の窓口で提示することで、支払い時から自己負担限度額までの支払いで済みます。後日の払い戻し手続きが不要になるため、一時的な経済的負担を軽減できます。
限度額適用認定証は、加入している健康保険組合や市区町村の国民健康保険窓口で申請できます。マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、認定証がなくても自動的に限度額が適用されます。
アフィニトールの服用方法と注意点
基本的な服用方法
アフィニトールは、1日1回、毎日同じ時間に服用します。重要なのは、空腹時に服用することです。具体的には、食事の1時間以上前、または食後2時間以降に服用してください。
食後に服用すると薬の血中濃度が低下し、効果が十分に得られない可能性があります。服用時は、コップ1杯の水またはぬるま湯と一緒に、錠剤を噛まずにそのまま飲み込んでください。
服用中の食事制限
アフィニトールを服用中は、以下の食品を避ける必要があります。
・グレープフルーツ、グレープフルーツジュース:薬の血中濃度を上昇させ、副作用のリスクを高める可能性があります。
・セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)を含む健康食品:薬の効果を弱める可能性があります。
これらの食品は、アフィニトールの代謝に影響を与えるため、治療期間中は完全に避けてください。
治療期間について
アフィニトールの治療期間は、患者さんの病状や効果、副作用の程度によって個別に決定されます。
基本的には、効果が認められ、許容できる副作用の範囲内であれば治療を継続します。病状が進行した場合や、重篤な副作用が発現した場合には、治療の中止や他の治療法への変更が検討されます。
臨床試験では、数か月から1年以上にわたって服用を続けた患者さんも多くいます。長期間の服用になる可能性があるため、定期的な検査と医師との相談が重要です。
主な副作用とその対策
アフィニトールには、さまざまな副作用が報告されています。副作用の種類と頻度を理解し、早期に対処することが大切です。
頻度の高い副作用(10%以上)
| 副作用 | 発現頻度 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 口内炎 | 約43% | 口の中の痛み、潰瘍、食事時の不快感 |
| 発疹 | 約28% | 皮膚の赤み、かゆみ |
| 貧血 | 約27% | めまい、息切れ、疲れやすさ |
| 疲労感・無力症 | 約25~21% | 体のだるさ、疲れやすさ |
| 下痢 | 約22% | 軟便、腹痛 |
| 高コレステロール血症 | 約19% | 血液検査での異常値 |
| 食欲減退 | 約19% | 食事量の減少 |
| 感染症 | 約15% | 肺炎、のどの痛み、発熱 |
| 間質性肺疾患 | 約12% | 咳、息切れ、発熱 |
特に注意が必要な重大な副作用
以下の副作用は重篤化する可能性があるため、症状が現れた場合はすぐに医師に連絡してください。
・間質性肺疾患:咳、発熱、息切れ、呼吸困難などの症状が特徴です。死亡例も報告されているため、定期的な胸部CT検査による確認が必要です。
・感染症:免疫機能が低下するため、通常ではかかりにくい感染症(日和見感染)にかかる可能性があります。
・B型肝炎の再活性化:B型肝炎ウイルスのキャリアの方では、ウイルスが再活性化し、劇症肝炎を発症する可能性があります。
・高血糖・糖尿病:血糖値が上昇し、糖尿病を発症または悪化させる可能性があります。
・腎機能障害:むくみ、尿量の減少などの症状が現れることがあります。
副作用への対処法
口内炎は最も頻度の高い副作用の一つで、治療開始後1か月以内に発現することが多いです。刺激の少ない食事を選び、口腔内を清潔に保つことが大切です。症状がひどい場合は、医師に相談して口内炎用の薬を処方してもらいましょう。
多くの副作用は、アフィニトールの減量や一時的な休薬により管理できます。自己判断で服用を中止したり、量を変えたりせず、必ず医師に相談してください。
定期的な検査の重要性
アフィニトール治療中は、副作用の早期発見と治療効果の確認のため、定期的な検査が必要です。
主な検査項目:
・血液検査:貧血、白血球減少、血小板減少、肝機能、腎機能、血糖値、脂質などを確認
・胸部CT検査:間質性肺疾患の有無を確認
・画像検査:がんの状態を評価
これらの検査結果に基づいて、医師は治療の継続、休薬、減量、中止などを判断します。検査スケジュールは医師の指示に従ってください。
治療開始時の入院について
アフィニトール治療を開始する際は、副作用の発現を確認するため、入院が必要になる場合があります。特に間質性肺疾患などの重大な副作用の早期発見と対応のため、医療体制が整った環境での治療開始が推奨されます。
入院期間は患者さんの状態によって異なりますが、数日から1週間程度が一般的です。副作用が管理できる範囲内であれば、その後は外来通院での治療に移行します。
服用を忘れた場合の対処法
もし服用を忘れた場合は、次の服用時間まで6時間以上ある場合は気づいた時点で服用してください。次の服用時間まで6時間未満の場合は、その回は飛ばして、次の予定通りの時間に服用してください。
忘れた分を補うために2回分を一度に服用しないでください。服用を忘れた場合の対処について不安がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
妊娠・授乳中の使用について
アフィニトールは、妊婦または妊娠している可能性のある女性には使用できません。動物実験で胎児への毒性が確認されているためです。
妊娠可能な年齢の女性は、治療期間中および治療終了後最低8週間は適切な避妊を行う必要があります。授乳中の方も、治療中および治療終了後一定期間は授乳を避ける必要があります。
他の薬との相互作用
アフィニトールは多くの薬と相互作用を起こす可能性があります。以下のような薬を服用している場合は、必ず医師に伝えてください。
・抗真菌薬(イトラコナゾール、ケトコナゾールなど)
・抗生物質(クラリスロマイシン、リファンピシンなど)
・抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピンなど)
・免疫抑制剤
・他の抗がん剤
また、市販薬やサプリメントを使用する場合も、事前に医師や薬剤師に相談してください。
アフィニトール治療を受けるための条件
アフィニトールは、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法または結節性硬化症治療に十分な知識と経験を持つ医師のもとでのみ使用できます。
治療開始前には、医師から有効性と危険性(特に間質性肺疾患の初期症状、服用中の注意事項、死亡に至った例があることなど)について十分な説明を受け、同意した上で治療を受けることになります。
まとめ
アフィニトール(エベロリムス)は、腎臓がん、神経内分泌腫瘍、乳がんなどの治療に用いられる分子標的薬です。薬剤費は1日あたり約18,000円(保険適応前)と高額ですが、健康保険と高額療養費制度を利用することで、実際の患者負担額は月額8万円前後(所得によって異なります)に抑えることができます。
効果が認められる限り継続して服用する薬ですので、副作用の管理と定期的な検査が重要です。口内炎、間質性肺疾患、感染症などの副作用に注意し、異常を感じたらすぐに医師に相談しましょう。
治療費や副作用について不安がある場合は、主治医や医療ソーシャルワーカー、薬剤師に相談しましょう。
参考文献・出典情報
1. 日経メディカル処方薬事典 - アフィニトール錠5mgの基本情報
2. 医薬品医療機器総合機構(PMDA) - アフィニトール添付文書
3. 厚生労働省 - 高額療養費制度について(令和7年5月26日)
4. ソニー生命保険 - 高額療養費制度とは?自己負担額や仕組みをわかりやすく解説
5. がん情報サイトオンコロ - アフィニトール(エベロリムス)
6. 抗がん剤辞典 - エベロリムス(アフィニトール)の特徴と副作用
8. 生命保険文化センター - 高額療養費制度について知りたい

