早期の大腸がんは内視鏡で行われますが、ある程度進行した状態で見つかることが多い大腸がんでは、「腹腔鏡手術」と「開腹手術」が手術方法の中心です。
開腹手術は手術の基本で体をメスで開いてがん病巣を切除する方法ですが、腹腔鏡手術とは内視鏡の一種の腹腔鏡を使って、腹腔内の画像を見ながら、腹部を切り開くことなく行う手術です。
具体的にはおへその部分に1か所、そのほかに4か所、合計5か所程度5~10ミリの穴をあけ、おへそ部分の穴からは腹腔鏡、他の穴からは手術器具を挿入します。腹腔内は良く見えるように炭酸ガスを入れて膨らませます。腹腔鏡でとらえる映像は拡大してモニターに映し出されるので腸管やリンパ節の切除もしっかり行うことができるのです。
これが一般的に行われている大腸の腹腔鏡手術の流れになります。
腹腔鏡手術の大きなメリットは以下の2点だといえます。
①開腹手術の約20センチの大きなキズに対し、腹腔鏡手術は5~10ミリのキズが4か所と5センチ程度のキズが1か所と小さい。当然、体に与える負担は少ない。
②術後の痛みが少なく、術後1週間での退院が可能。
このようなメリットがあるため、当然開腹手術よりも腹腔鏡手術を選択する患者、医師は増えています。特に内視鏡治療の適応範囲を超えた、大腸がんの進行度ステージⅠの粘膜下層の中間を超えた状態のがんに対しては、腹腔鏡手術は重宝されています。
では、ステージⅡ、Ⅲでは開腹手術と腹腔鏡手術との治療効果に差はあるのでしょうか。
ステージⅡとⅢに対する腹腔鏡手術と開腹手術を比較する臨床研究は終了していますが、まだ結論は明確に出されていません。ただ、欧米で同じような臨床研究が行われており、「腹腔鏡手術と開腹手術との成績に差はない」と結果が出ています。日本でも同じ結果がでるものと思われます。
このように、大腸がんにおいて腹腔鏡手術は大きな地位を占めています。とりわけ直腸がんの場合は腹腔鏡の方が開腹よりも術者の視野が良いので、腹腔鏡手術の方がベターだといわれています。
以上、大腸がんの腹腔鏡手術についての解説でした。