男女比は約6対1と男性に多いがんで、年間約1万人が発症します。喫煙や多量の飲酒がリスク要因とされています。リンパの流れが活発で、転移しやすいのが問題です。
食道がんの病期(ステージ)と標準治療
・0期
がんが粘膜の中にとどまっている
標準治療:内視鏡治療または手術
・Ⅰ期
がんが粘膜下層までにとどまっていて、近くのリンパ節や他の臓器などに転移が認められないもの
標準治療:手術、同時化学放射線療法
・Ⅱ期
がんが筋層まで広がっているものの、リンパ節や他の臓器への転移がないもの。あるいはがんがそこまで広がっていないが、近くのリンパ節に転移があるもの
標準治療:術前化学療法+手術、同時化学放射線療法
・Ⅲ期
周辺の臓器に浸潤がない
標準治療:術前化学療法+手術、同時化学放射線療法
周辺の臓器に浸潤がある
標準治療:同時化学放射線療法
・Ⅳa期
やや離れたリンパ節に転移がある
標準治療:手術、同時化学放射線療法
・Ⅳb期
遠隔転移がある
標準治療:化学療法±放射線療法
治療方針
食道がんの治療には、内視鏡治療、手術、放射線療法、化学療法の4つがあり、がんの進行度(病期)や全身状態などにより選ばれます。
放射線と化学療法を同時に併用する同時化学放射線療法のほうが、それぞれ単独で順次行うよりも効果が高いことが分かっています。
食道がんの抗がん剤治療では、フルオラウラシルとシスプラチンを併用する「FP療法」が最も有効とされています。Ⅱ期とⅢ期では、術前化学療法として、FP療法を2コース行うことが標準的治療になっています。
切除が不能なときや手術を望まない人では、同時化学放射線療法が選択肢となります。食道を温存できることが利点ですが、長い目で見たときの有効性までは確認されていません。また、治療をしてからしばらくたった頃に、心臓の機能や肺の機能が落ちることがあります。
薬物療法
食道がんの90%以上は、食道の内側の粘膜上皮から発生する扁平上皮がんです。食道は肺や心臓などの重要な臓器に接しています。
食道がんで承認されている抗がん剤は、フルオラウラシル(5-FU)、シスプラチン、ドセタキセルでしたが、2012年3月から進行がんを対象に、パクリタキセルも健康保険が使えるようになりました。
これまで進行がんの2次治療では、同じタキサン系のドセタキセルが使われていましたが、骨髄抑制などの副作用がドセタキセルよりもパクリタキセルのほうが軽いので管理しやすく、パクリタキセルにシフトしていっています。
以上、食道がんの治療法についての解説でした。