日本では大腸がんが増えていて、死亡数はこの半世紀で約10倍になりました。現在、大腸がんの死亡率は、男性は3位ですが、女性では1位です。薬物療法では新しい分子標的薬が次々と登場し、進行・再発がん患者さんの治療の選択肢が広がっている、という状況です。
切除可能なら手術が優先。再発・転移がんは薬物療法
大腸がんは、早期がんと進行がんに分けられます。早期がんは、がんの広がりが粘膜内、または粘膜下層までにとどまっているもの(MがんとSMがん)、進行がんは、固有筋層以上にがんが深く浸潤しているもの(MPがん、SSがん、SEがん)です。
大腸がんの進行度を示すのが、病期(ステージ)分類です。がんの深さ(深達度)やリンパ節転移、遠隔転移の有無によって、0~Ⅳ期に分類されます。
病院で行う標準治療において、大腸がんの治療方針は、切除可能な限り手術をすることです。0期(Mがん)やⅠ期(SMがん)の浸潤が軽いものでは、内視鏡で腫瘍部分を切除する内視鏡治療ですむ場合も少なくありません。Ⅱ期やⅢ期では、再発予防のために手術後に薬物療法が行われます。
早期であれば手術をすればそれで完了というケースもありますが、手術してもおよそ30%は再発したり、転移が見つかったりします。転移しやすいのは、病変部に最も近いリンパ節や傍大動脈リンパ節、肺や肝臓などです。
再発・転移がんでは薬物療法が中心になります。ただし、大腸がんでは他の臓器(主に肝臓、肺)に転移がある場合も、切除が可能であれば手術をします。
大腸がんの病期(ステージ)と標準治療
・ステージ0
がんが粘膜の中にとどまっている
標準治療:内視鏡治療、手術
・ステージⅠ
がんが大腸壁にとどまっている
標準治療:手術
・ステージⅡ
がんが大腸壁の外まで浸潤している
標準治療:手術+術後補助化学療法
・ステージⅢ
リンパ節転移がある
標準治療:手術+術後補助化学療法
・ステージⅣ
血行性転移(肝転移、肺転移)または腹膜播種がある
標準治療:全身化学療法、可能なら手術も
深達度による分類
大腸の壁は内側から順に、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層で構成されていて、がんがどこまで深く達しているかで進行度が決まります。MがんとSMがんを「早期がん」、それ以上深く浸潤したものを「進行がん」といいます。
・Mがん
粘膜にとどまっているがん
・SMがん
粘膜下層に浸潤しているがん
・MPがん
固有筋層まで浸潤したがん
・SSがん
奬膜下層まで浸潤したがん
・SEがん
漿膜を破って浸潤したがん
以上、大腸がんの標準治療についての解説でした。