Ⅰ~Ⅲ期は手術が基本 手術後の薬物療法が普及
胃がんの治療方針は、がんがどのくらい進んでいるかという進行度によって決まります。胃がんは最も内側にある粘膜から発生し、胃壁の外側表面に向かって深く広がっていきます。その深さがどの程度かによって、早期がんと進行がんに分けられます。
早期がんは、がんの深さが粘膜下層までに止まっているがんを、進行がんは筋層より深くに達したがんをいいます。
また、より正確にがんの進み具合を表すために、10年から国際標準に沿った新しいステージ(病期)分類が導入されました。腫瘍の規模(T)、周囲リンパ節への転移状況(N)、他の臓器への転移状況(M)という3つの基準から病期を判定する「TNM分類」です。
このステージ分類によって最初に行うべき治療が大筋決まりますし、その後の経過についてもおよそ予測できます。
胃がんの治療については、早期がんと進行がんに分けて考えることが大切です。早期がん(ⅠA期)は基本的に切除すれば再発のリスクは少ないのが事実です。
そのため治療は患者さんの負担を軽くする方向に進歩しており、胃の中に内視鏡を入れて内側からがんを切除する「内視鏡的粘膜切除術」などですむ場合があります。現在の日本では、胃がんの半分は早期がんです。
一方、ⅠB期以降の進行がんでは、手術をしても3人に1人は再発します。Ⅲ期までは手術が基本ですが、再発予防のために術後補助化学療法が行われます。
Ⅳ期は化学療法が中心です。分子標的薬のトラスツズマブ(ハーセプチン)が使えるようになり、HER2陽性の人は長く進行を抑える可能性が出てきました。
手術で取り切れたがⅡ期やⅢ期の場合
手術後は再発を予防するために抗がん剤治療が提案されるのが一般的です。Ⅱ期とⅢ期の胃がんを対象に、手術だけの群と、手術後に抗がん剤のTS-1を1年間服用する群の予後を比較する臨床試験が行われ、TS-1を加えた群のほうが再発率や死亡率が下がることが分かっています。
手術で切り取れる範囲を超えがんが広がっている場合
①胃から離れた部位に転移している場合、②手術後の再発、③手術の結果、がんが取り切れずに残った場合は、胃から転移したがん細胞をできるだけ抑えることが抗がん剤治療の目的となります。
最近は薬の使い方が進歩し、以前よりも長く生きられる人が増えています。胃から転移しても、薬に対する反応は元の胃がんの細胞とほぼ同じと考えられ、他の内臓にあっても胃がんに効く薬を選択することになります。例えば肺に転移しても、胃がんに効く薬を選びます。
以上、胃がんの薬物療法についての解説でした。