リンパ球由来のがんである悪性リンパ腫には様々なタイプがありますが、もっとも患者数が多いのが「びまん性大細胞方B細胞リンパ腫」です。
びまん性大細胞方B細胞リンパ腫と診断されたとき、治療の中心は化学療法です。最初に行われるのはリツキサン(リツキシマブ)、エンドキサン(シクロホスファミド)、アドリアシン(ドキソルビシン)、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニン(プレドニゾロン)を併用する「R-CHOP(アールチョップ)療法」で、3週間間隔でこれらの薬を投与します。
進行期の場合はR-CHOPを6コース、限局期の場合はR-CHOP6コースあるいは3コース+放射線治療となります。
R-CHOP(アールチョップ)療法とは
リツキサンは十数年前から使われている分子標的薬です。毒性をもってがん細胞を攻撃する従来の抗がん剤ではなく、がん細胞のもつ特性を阻害するための薬です。プレドニンはステロイド薬です。他のエンドキサン、アドリアシン、オンコビンは従来からの抗がん剤です。
R-CHOP療法の一回目は点滴中に発熱などの副作用が起きやすいため入院して行います。二回目以降は(体調に問題なければ)通院して行います。
・R-CHOPの副作用
最も問題となる副作用は好中球の減少です。好中球が減ると免疫機能が低下して感染症を起こしやすくなります。とくに60歳を超えると感染症を起こしやすいので血液検査の結果をしっかり把握しながら行うことがポイントになります。
そのために好中球の減少を防ぐ「G-CSF」を治療と治療の間に注射することがあります。
また高齢者の中にはステロイド薬のプレドニンを急にやめることで離脱症状=強い倦怠感を訴えることがあります。これは若年者にはない症状です。
・R-CHOPの効果
R-CHOP療法を行うと、8~9割の人は「寛解」状態になることが期待できます。「寛解」とは画像検査でがん病変が確認できない状態(がんが消えている)のことを言います。
ただ、寛解になっても再発のリスクはあります。とくにリスク因子(61歳以上、全身状態が悪い、リンパ節以外にがんが存在する、進行期である)を多くもっている人ほど再発しやすいといえます。
R-CHOP後に悪性リンパ腫が再発した場合
初回のR-CHOPで寛解にならなかった場合と、寛解したあとに再発した場合では、R-CHOPとは異なる薬を組み合わせて引き続き化学療法が行われます。この治療を専門用語では「サルベージ治療(救援化学療法)」といいます。
65歳未満の人なら、サルベージ治療を繰り返すより「自家移植」を行うほうが効果的だと考えられています。「自家移植」は毒性が強く体に大きな負担を与える治療法であるため高齢になれば行われません。
・自家移植とは?
これは「大量の抗がん剤を投与し、全身のがん細胞を一気に攻撃する治療」に備える方法です。自家移植ではあらかじめ、「造血細胞(血液を作る細胞)」を体外に保存しておき、大量の抗がん剤で全身のがん細胞を死滅させます。
そのとき、抗がん剤により骨髄内の造血細胞もほぼ完全に死んでしまいますが、そのままの状態で血液が作られなくなると命を落としてしまいます。そのために保存しておいた造血細胞を体内に戻し、定着させることで血液を作る機能を回復させ、命を繋ぐという治療法です。
【自家移植の流れ】
非常に厳しい治療法であるため、この治療自体で命を落とす危険もあります。しかし治療が成功すると全身のがんを叩けることになります。
しかし再発のリスクが消えるわけではなく、自家移植後に再発すると治療戦略はとても厳しいものになります。
以上、びまん性大細胞方B細胞リンパ腫の治療法についての解説でした。