がん治療専門のアドバイザー、本村です。
当記事では卵巣がんで行われる抗がん剤(薬)治療について解説します。
卵巣がんと診断されるとき、すでに進行しているケースが多いため手術だけでは根治できず、化学療法(抗がん剤などの薬を使った治療)が軸になることが多いといえます。
卵巣がんの化学療法の主流はTC療法といって3週間のサイクルでパクリタキセル(タキソール)とカルボプラチン(パラプラチン)という薬を投与する方法です。その他、卵巣がんで使われる薬は次のとおりです。
【卵巣がんで使われる主な薬】
カルボプラチン シスプラチン ネダプラチン |
プラチナ系 |
パクリタキセル ドセタキセル |
タキサン系 |
イリノテカン ノギテカン エトポジト |
トポイソメラーゼ阻害剤 |
ドキソルビシン リポソーム化ドキソルビシン |
アンスラサイクリン系 |
ゲムシタビン シクロホスファミド |
その他の抗がん剤 |
アバスチン(ベバシズマブ)2013年~ | 分子標的薬 |
卵巣がんの化学療法の治療戦略
上記の表のとおり、近年では卵巣がんで使える薬の選択肢は増えています。そのため、どんな薬を使うかは、卵巣がん特有の組織型や個々の患者さんの腫瘍の特性に応じた薬の選択が必要になります。
【卵巣がんのタイプ】
腫瘍のタイプ | 特徴 |
漿液性腺がん | ・最も多いタイプ ・抗がん剤が効きやすい |
粘液性腺がん | ・巨大な腫瘍を形成しやすい ・抗がん剤が効きにくい |
類内膜腺がん | ・子宮内膜症から発症しやすい ・抗がん剤が効きやすい ・子宮体がんを合併することがある |
明細胞腺がん | ・日本人に多い ・子宮内膜症から発症しやすい ・抗がん剤が効きにくい |
卵巣がんのタイプ、組織型によって抗がん剤の感受性(効きやすいか、効きにくいか)が変わり、なおかつ同一のタイプでも効果には個人差があります。
なかでも注目されているのは2013年に承認されたアバスチンです。アバスチンは大腸がんなどでこれより以前に使用されていましたが、卵巣がんでも効果が確認され使われるようになった「分子標的薬」です。
分子標的薬は抗がん剤のように毒性をもってがんを攻撃する薬ではなく、がん細胞の持つ特徴に対してその動きを阻害し、がん細胞の増殖を阻止するタイプの薬です。アバスチンは卵巣がんでは初めての分子標的薬で、従来の抗がん剤を使った化学療法への上乗せ効果が期待されています。
基本的にアバスチンは単独で使用されず、抗がん剤と併用して効果を示す薬として位置づけられていますが、初回治療後の維持療法(予防を目的とした治療)では単独で使われることもあり、その際は再発するまでの期間を数か月間延ばせるとされています。
もちろんアバスチンも副作用がないわけではなく、重篤なものでは消化管穿孔(消化管に穴があく)ことなどもありますので、慎重に効果とともに副作用も観察して進める必要があります。
卵巣がんが再発した場合の化学療法
進行して見つかることの卵巣がんは、手術や化学療法でいったん目に見えるがんを取り除けたとしても再発するリスクが高いといえます。
もし再発した場合は、初回の治療で抗がん剤が効果があったのか、効果がなかったのかによって治療に対する考え方が異なります。
日本の治療ガイドラインでは初回治療後6か月で線を引いており、6か月未満に再発したら「抗がん剤が効きにくいタイプ」と定義し、その後は一種類の抗がん剤を使って効果を図るか、あるいは薬での治療自体を諦め、緩和ケア中心になります。
いっぽう6か月以上経過して再発した場合は、初回と同じ薬を使って再度治療するか、他の薬を試すことが推奨されています。
しかし、これはあくまでガイドラインの話であり、病院によっては初回治療時に徹底して広い範囲の手術を行うところもあれば、手術には消極的なところもあります。がん細胞の取り残しのリスクは一定ではないので、再発のリスクも一定ではありません。
いずれにしても、初回の治療で何をしたのか。それによってどんな効果があったのかをきちんと評価することが再発時の治療に大きく関係しているといえます。
以上、卵巣がんの化学療法についての解説でした。
卵巣がんの手術や抗がん剤治療は体に大きなダメージを与えます。そして、一度治療をして終わりではなく、再発するケースも多いのが現実です。
今後、どのようなケアをしていくのかで、その後の人生は大きく変わります。