前立腺がんが進行すると周辺の器官(膀胱など)や骨に転移することがあります。
前立腺がんで転移の8割を占めるのが骨であり、前立腺がんの化学療法の中心であるホルモン療法の副作用では骨粗しょう症が起きやすいので骨に対する対処はとても重要なポイントになります。
ホルモン療法は前立腺がんと診断されてから長く使う可能性が高い治療法ですし、骨転移のリスクと併せて骨がもろくなることや、骨折などに対して注意を払うことが求められます。
骨転移が起きたときの治療法
前立腺がんが骨転移をしたときは、「前立腺がん向けの化学療法+骨転移向けの化学療法」という複合した化学療法が行われます。
具体的に「骨転移向けの化学療法」で使われる薬はゾメタとランマークです。
ゾメタはあらゆる種類のがんの骨転移に対して長く使われている薬です。ゾメタは骨を丈夫にするビスホスホネート系と呼ばれる種類の薬です。主に痛みの軽減や骨折の予防が目的の薬であり、いわゆる毒性をもってがんを攻撃する「抗がん剤」ではありません。
いっぽう、ランマークは「分子標的薬」といわれるタイプの薬です。骨の破壊を活性化させるタンパクに作用し、骨の破壊や骨転移の進行を遅らせる作用がある薬です。
前立腺がんの骨転移を遅らせる効果があることは臨床試験で判明して承認されていますが、いっぽうで副作用として顎骨壊死(がっこつえし)という症状が起きることがあります。
ランマークは骨の代謝が活発な部位で濃度が上がるため、常に刺激を受けるアゴの骨は影響を受けやすいという特性があります。そのため口腔内に虫歯や歯肉炎など衛生状態が悪化していると感染症が起こり、最悪の場合、アゴの骨が壊死してしまうのです。
そのためランマークを受ける前に口腔外科などで虫歯の治療など口腔内のケアを受けるように求められます。口腔内の状況が悪く、短期間で改善できない場合はランマークの使用を見送られることもあります。
以上、前立腺がんの骨転移に関する解説でした。