近年、欧米の先進国、日本国内においても腎がんの患者数および死亡数は増加しています。
画像診断機器の普及により、無症状で小さな腎臓がんが発見されるようになったことが、患者数増加の大きな要因だといえます。しかし早期がんだけではなく進行がんも増加しているため、死亡数も増加の一途をたどっています。腎臓がんの危険因子としては肥満、高血圧や喫煙が挙げられています。
腎臓がんの死亡者数
2009年の腎臓がんの死亡数は、4,000人(男性2,703人、女性1,297人)であり、全がん死亡の1.2%を占めいました。がん全体の死亡者をみると腎臓がんの占める割合は少ないですが、近年、患者数は増加し続けています。
なお、腎臓がん患者の約40%は最終的に腎臓がんを原因として死亡しています。これは、膀胱がんや前立腺がんの約20%と比較して高い比率となっています。
腎臓がんのリスク(原因)
1.喫煙
喫煙は、腎臓がんの最も重要で明確な危険因子だといえます。約20%の症例で喫煙との関連性が推測されています。
喫煙量と相対危険度は相関しているといえ、1日20本を超えるヘビースモーカーの腎臓がんの罹患率は高くなっています。禁煙により腎臓がんのリスクは低下し、10~15年の禁煙でリスクが15~30%低下することが分かっています。
2.肥満
肥満と腎臓がんの関連は多くの研究で報告されています。腎臓がんの増加は肥満の増加と関連しているとされ、30%以上の症例が肥満との関連性を示しています。体格指数(BMI)の増加とともに腎がんのリスクも上昇するといわれています。
肥満によって引き起される脂質過酸化、ホルモン環境の変化、糸球体濾過量の増加、腎血流量の増加、腎硬化症、高血圧などが原因として考えられています。
3.高血圧と降圧薬
多くの研究で高血圧と腎臓がんの関連性が指摘されています。高血圧と降圧薬の影響を分けて考えることは難しいですが、降圧薬の使用が原因というよりも高血圧そのものが危険因子であると推測されています。
高血圧の場合、血管新生因子や増殖因子の増加、近位尿細管での脂質過酸化などがリスクになるのではないかと考えられています。
4.透析を含む腎疾患
透析患者あるいは腎移植を受けた患者さんで、腎臓がんの発生頻度が高いことはよく知られており、発生頻度は約15倍ともいわれています。透析歴が長いほどリスクが高く、後天性嚢胞性腎疾患(ACDK)の存在が最も大きな危険因子とされています。
5.その他
食生活では肉類、乳製品、脂肪の過剰摂取、高タンパクおよび高カロリーと腎臓がんの関与が示唆されていますが、まだはっきりしていません。
果物や野菜の摂取は腎臓がん発生に予防的に作用し、がん発生を約半分に抑えるとされています。これら以外の食事(アルコールを含む)に関しては、腎臓がんとの関連性は証明されていません。
アスベスト、絶縁体、芳香族化合物、溶媒、ガソリン、石油、除草剤、その他の化学薬品、鉛、カドミウム、溶接などの金属類と腎臓がんの関連性を報告した研究もありますが、まだはっきりしたことは分かっていません。
また、一般的に、農村と比較して都市住民の腎臓がん発生率と死亡率が高いことが分かっています。
このように腎臓がんは患者数、死亡数とも増加しており、腎臓がんと喫煙または肥満との関連は明らかになっています。そのため禁煙と肥満防止により腎臓がんの予防が推進されている状況です。
以上、腎臓がんについての解説でした。