肺がんの化学療法(抗がん剤や分子標的薬による治療)は2002年のイレッサ(ゲフィチニブ)以降、登場しつづけた新薬(おもに分子標的薬)が治療の軸になっています。
従来の抗がん剤と分子標的薬の違い
がん細胞は分裂・増殖が盛んで速く、正常細胞の分裂・増殖のスピードよりもかなり速いといえます。抗がん剤は異常なスピードで増殖する細胞を殺すメカニズムをもった薬です。ですががん細胞だけを殺すことはできず、正常細胞のうち増殖スピードが速い「血液」「髪の毛」「粘膜」などの細胞にダメージを与え、それが副作用に繋がります。
いっぽう、分子標的薬といわれる昨今中心となっているタイプの薬は、がん細胞が持つ増殖メカニズムの1つを標的として開発された薬です。従来の抗がん剤よりも副作用が少なく、高い効果を挙げられることから、がん治療の中心的な役割を担っています。
肺がんでここ数年承認された新薬は全て分子標的薬
2002年にイレッサが承認され、2007年にタルセバ(エルロニチブ)が承認されました。この2つはEGFRという遺伝子変異に関連する薬です。最近では2014年にジオトリフ(アフェチニブ)が承認されました。
いっぽう、2007年に別の遺伝子情報であるALK融合遺伝子が発見されました。ALK融合遺伝子を標的とした新薬として2012年にザーコリ(クリゾチニブ)、2014年にはアレセンサ(アレクチニブ)が承認され、医療現場で積極的に使われるようになっています。
新薬が使われるのは主に「非小細胞肺がん」の「腺がん」
肺がんのタイプのうち、小細胞肺がんには分子標的薬(上記で挙げた新薬)は使われません。小細胞がんの中心は従来どおりイリノテカンやプラチナ製剤などの抗がん剤です。
非小細胞がんのうち、新薬が使われるのは「腺がん」です。腺がんのうち、EGFR変異がある人(約30~40%)には、イレッサ、タルセバ、ジオトリフが使われます。そして腺がんのうちALK変異のある人(約5%)にはザーコリ、アレセンサが使われます。
その他のタイプの肺がんでは、以前として従来の抗がん剤(プラチナ製剤系、アムリタ、アバスチン)などが中心として使われています。
以上、肺がんで使われる分子標的薬についての解説でした。