肝臓がんの大半を占める肝細胞がんは、治療によってひとたびがんが消滅したように見えても、その後、再発する確率がきわめて高いという特徴をもっています。
最近の報告を総合すると、手術(肝臓の切除)を行った肝臓がん患者さんは、3年以内にその30~50パーセントが再発し、5年後には70~80パーセントが再発したとされています。
とりわけC型肝炎から進展した肝臓がんの場合、切除後に80パーセントが再発し、またその多くが、肝臓内の1カ所にではなく、数多くの場所にがんが発生するタイプ(異時性多中心性発生)であったとされています。
肝臓がんはもともと、肝臓内の多数の場所に同時に発生しやすい特徴をもっています。というのも、肝臓には無数の血管が走っており、その中をつねに大量の血液が流れているためです。
もし、血液にがん細胞が混じっていれば、それはさまざまな場所で肝臓の組織に付着し、そこでがんへと成長を始める確率が非常に高くなります。
肝細胞がんが再発する場合、85パーセント以上は肝臓の内部に生じますが(肝内再発)、再発のしかたは一様ではなく、おおむね次のような傾向があります。
1.局所再発
最初に切除を行った場所にふたたびがんが発生する。
2.新たながんの発生
最初に切除したがんとは無関係に、新しいがんが生じる。
3.肝臓内の転移
最初に切除を行ったときに残っていたがん細胞が、肝臓内の別の場所で成長する。
また、再発は肝臓内でのみ起こるのではなく、全体の10パーセントあまりは、肝臓の外部、すなわち肺、骨、リンパ節などに生じます。ときには、肝臓内と肝臓以外の場所で同時に再発が起こる例もあります。
肝臓の内外で同時に再発した場合でも、内部で再発したがんが肝臓の機能を著しく損ない、肝不全を引き起こすことにより最終的に死に至ります。再発のしかたがどのようであれ、治療によって肝臓の機能をどの程度維持できるかが、その後の生存期間を左右することになります。
再発した場合の治療の方法
肝臓がんが再発した場合、これまで一般に、根治を目指した治療はきわめて困難であり、短期間のうちに亡くなってしまうとされてきました。
しかし現在では、再発の状況によっては、試みの方法も含めてさまざまな治療が行われており、生存期間を延ばせる症例も増えてきています。
再発した肝臓がんの治療法は、再発のしかたによって多少異なります。前述の「1.局所再発」および「2.新しいがんの発生」の場合、治療法はほぼ共通で、初回の治療法の選択基準と同じことが多いようです。
これに対して「3.肝臓内の転移」の場合は、多数の微小な転移がんが生じていることが少なくないため、多くの病院では、肝臓内に抗がん剤を集中的に注入する化学療法(動注療法)や肝動脈塞栓療法を中心に、マイクロ波やラジオ波でがんを叩く熱凝固治療(穿刺療法)を組み合わせる方法が用いられます。
もちろん、病院や医師の考え方によって、治療法は一様ではありません。再発した肝臓がんの治療は、まだ試行錯誤の段階にあります。今後、さまざまな治療法の有効性に関するデータがさらに蓄積されることによって、標準的な治療法が確立していくと考えられています。
以上、肝臓がんについての解説でした。