放射線治療はこれまで、肝臓がんの治療法としてはほとんど行われてきませんでした。また、治療を行った場合も、多くは肝動脈塞栓療法などの治療との併用でした。
そのため、放射線治療単独では、生存率や奏功率(治療が効果を発揮する割合)に関するまとまった資料はありません。ただし、粒子線治療や定位照射に関しては、病院ごとに生存率や奏功率を出しています。
1985年から肝臓がんに対して粒子線治療を行ってきた筑波大学の陽子線医学利用研究センターの報告によると、163人を治療した結果、照射後に腫瘍が増大しなかった割合(局所制御率)は、約85パーセントに達したとのことです。
しかしそれでも、5年生存率は約25パーセントにすぎません。この理由はおもに、肝細胞がん患者のほとんどが抱えている肝硬変が治療後にも進行して肝機能が低下することと、治療した場所以外から新しいがんが発生することが原因と考えられています。
実際、肝機能障害が軽い患者では、5年生存率は約45パーセントと高くなります。これは手術に匹敵する治療成績です。これらを総合すると、放射線治療そのものの効果はかなり高いと考えられます。
また、定位照射も症例数は少ないものの、2年生存率が40パーセントという報告もあります。スウェーデンの大きな病院では、肝臓がんや肺がんなどの胴体の腫瘍に対する定位照射の局所制御率は、95パーセントに達すると報告しています。
以上、肝臓がんの放射線治療についての解説でした。