肝臓がん放射線治療のメリット(長所)
1.侵襲度が小さい
放射線治療では、手術や熱凝固法などの他の治療法とは異なり、体を切る、針を刺すなどの侵襲度の高い処置を行いません。また、治療時間も短いため、患者の体への負担は軽いといえます。治療の痛みもなく、麻酔の必要もありません。ただし、放射線の副作用で痛みを感じることはあります。
2.進行がんでも治療できる
3センチ以上の大きながんや、門脈をふさいでいるがん(門脈腫瘍塞栓)に対しても、治療を行うことができます。放射線治療は、とりわけ門脈腫瘍塞栓に対しては、治療効果が高いと考えられています。
3.外来で治療できる
治療時間が短く、一般に副作用も小さいため、治療期間中(約1カ月)は入院せず、通院しながら治療を受けることができます。ただし、治療の準備段階で数日間の入院が必要になることがあります。
4.肝機能が悪くても治療できる
腫瘍のみに放射線を集中させることができれば、肝硬変などで肝機能が低下していても、治療は可能です。ただし、副作用についてはまだ未知の部分があることを承知しておかねばなりません。
肝臓がん放射線治療のデメリット(問題点)
1.肝臓を損なう可能性がある
肝臓は放射線に弱い臓器です。そのため、腫瘍が大きくて照射する範囲が広いと、肝臓に大きな損傷を与える危険があります。
2.治療効果が現れるまで時間がかかる
放射線治療では、治療終了後必ずしもすぐに腫瘍が縮小しはじめるわけではありません。治療効果が現れてからも、腫瘍は数カ月以上かけて少しずつ縮んでいきます。
3.副作用が現れるのが遅い
放射線治療では、ほとんどの場合、副作用が現れるのは治療を始めて2~3週間後からです。またまれに、治療後半年~1年以上たって、深刻な副作用が現れる例もあります。
そのため、多くの場合、治療期間中に副作用を見越して治療を中断したり、あらかじめ有効な副作用対策をとることができません。
とりわけ肝臓がんに対しては、放射線治療があまり行われていないため、思いもよらない副作用が生じる可能性もあります。副作用の発症の遅いことが、深刻な事態を招くことがないとも言えません。
4.治療を受けられる病院が少ない/治療水準が異なる
粒子線治療や定位照射は、肝臓がんに対して治療効果が高いと考えられていますが、いまのところ治療を受けられる病院は限られています。そのため、治療を望んでも、滞在費がかかって金銭的に難しかったり、治療を待つ患者が多すぎて、病院が受け入れられない場合があります。
また、診断を受けた病院と治療を受ける病院が異なることが多いため、患者の状態に関する連絡が十分ではなかったり、検査の回数が増える例も考えられます。
いっぽう、X線や電子線による標準的な放射線治療は、がんセンターや総合病院、大学病院などの大きな病院では、ほとんどの場合、受けることができます。標準的な放射線治療でも、適切な手法で行えば、粒子線沿療に遜色ない結果が得られると考えられています。
しかし、熟練した放射線医はまだ少数です。とりわけ肝臓がんに対する放射線治療は、これまであまり行われてこなかったため、経験の浅い医師がほとんどです。そのため現状では、もっとも効果的な方法で肝臓がんの放射線治療を受けられる病院は多くないとみられます。
5.再発が見分けにくい
治療効果判定の項で述べたように、放射線を浴びた部分の炎症と再発が見分けにくいことがあります。そのため、再発を見逃すことがないとはいえません。
6.治療費が高額
粒子線治療は「高度先進医療」の1つであり、保険の対象ではありません(入院費などは保険の対象)。そのため、治療費が非常に高額になります(300万円程度)。
以上、肝臓がんの放射線治療についての解説でした。