
こんにちは。がん治療専門アドバイザー、本村ユウジです。
肺がんと診断された方、あるいはリンパ節転移が見つかった方にとって、今後の治療や経過について正確な情報を知ることは、適切な判断をするために欠かせません。
この記事では、肺がんのリンパ節転移について、その仕組みから症状、検査方法、そして2026年時点での最新の治療情報まで、包括的に解説します。
リンパ節転移とは何か
リンパ節転移とは、がん細胞が最初にできた場所(原発巣)から離れて、リンパ管を通じてリンパ節に到達し、そこで増殖する現象です。
人間の体には免疫機能を担うリンパ系が全身に張り巡らされており、リンパ液が流れています。リンパ節は、このリンパ管の要所要所に位置する関所のような器官で、通常は病原体や異物を捕らえて排除する役割を果たしています。
しかし、がん細胞がリンパ液の流れに乗ると、リンパ節に到達してそこで増殖を始めることがあります。リンパ節転移は一定の規則性があり、通常は原発巣に近いリンパ節から順番に、より遠くのリンパ節へと広がっていく傾向があります。
肺がんで転移しやすいリンパ節の場所
肺がんの場合、リンパ節転移が起こりやすい部位には特徴的なパターンがあります。最も頻繁に転移が見られるのは以下の部位です。
| リンパ節の部位 | 位置 | 転移の特徴 |
|---|---|---|
| 肺門リンパ節 | 肺の入り口付近 | 原発巣に最も近く、初期の転移で見られやすい |
| 縦隔リンパ節 | 左右の肺の間の空間 | 心臓や大血管、気管の周囲に位置する |
| 鎖骨上リンパ節 | 鎖骨の上部 | 頸部のリンパ節で、より進行した段階で転移が見られる |
| 反対側リンパ節 | がんと反対側の胸部 | リンパ液の流れに沿って転移することがある |
手術の際、医師が急きょリンパ節を切除することがありますが、これは手術中にリンパ節への転移が確認された場合や、転移の有無を早期に確認し、今後の治療方針を決めるための重要な手順です。
リンパ節転移を調べる検査方法
リンパ節転移の有無や範囲を正確に把握することは、治療方針の決定において重要です。2026年現在、以下の検査方法が用いられています。
画像検査
CT検査(コンピュータ断層撮影)
肺がんの検査で最も広く使用されている方法です。リンパ節の大きさや場所を詳しく確認することができます。造影剤を使用したCT検査では、リンパ節への血流状況も評価できます。
PET-CT検査
がん細胞の代謝活動を可視化する検査です。リンパ節が腫れていなくても、がん細胞が存在する場合は検出できる可能性があります。転移の有無を確認するのに有効な検査方法です。
MRI検査
脳や骨などへの転移を調べる際に用いられます。CT検査よりも小さな転移を発見できることがあります。
病理検査
気管支鏡検査
気管支内に細いカメラを挿入して、病変部の組織を採取します。超音波がついた気管支鏡(EBUS)を使用すると、腫大したリンパ節を描出し、針で穿刺してがん細胞の有無を確認できます。
縦隔鏡検査
縦隔リンパ節の組織を直接採取する検査です。全身麻酔下で行われます。
胸腔鏡検査
胸部に小さな穴を開けてカメラを挿入し、肺や胸膜、リンパ節の組織を採取します。画像検査で診断が難しい場合に行われます。
リンパ節転移で現れる症状
リンパ節転移が小さいうちは症状がないことがほとんどです。しかし、転移が進行してリンパ節が大きくなると、周囲の臓器や組織を圧迫して、さまざまな症状が現れます。
縦隔・肺門リンパ節転移による症状
- 長引く咳
- 痰の増加
- 血痰
- 上半身のむくみ(上大静脈が圧迫される場合)
- 声のかすれ(反回神経が圧迫される場合)
- 呼吸困難
- 胸痛
鎖骨上・首のリンパ節転移による症状
- 顔や腕のむくみ
- 腕のしびれや痛み
- 首やのどの違和感
- リンパ節の腫れやしこり(触診で確認できることがある)
これらの症状は、肺炎や気管支炎などの他の呼吸器疾患でも現れることがあるため、症状だけで肺がんのリンパ節転移と判断することはできません。気になる症状が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
リンパ節転移とステージ分類
肺がんの病期(ステージ)は、TNM分類という国際的な基準に基づいて決定されます。これは以下の3つの要素を組み合わせて判定します。
- T因子: がんの大きさと周囲への広がり
- N因子: リンパ節転移の有無と範囲
- M因子: 遠隔転移(他の臓器への転移)の有無
2025年の「肺癌取扱い規約第9版」では、リンパ節転移の程度はN0からN3まで4段階に分類されます。
| 分類 | リンパ節転移の状態 |
|---|---|
| N0 | リンパ節転移なし |
| N1 | 同側の肺門リンパ節または肺内リンパ節への転移 |
| N2 | 同側の縦隔リンパ節または気管分岐部リンパ節への転移 |
| N3 | 対側の縦隔・肺門リンパ節、または鎖骨上リンパ節への転移 |
非小細胞肺がんでリンパ節転移がある場合、ステージはⅡA期以上になります。小細胞肺がんでは、肺に近いリンパ節転移がある場合は「限局型」、広い範囲のリンパ節転移がある場合は「進展型」に分類されます。
リンパ節転移がある場合の予後と生存率
リンパ節転移の有無や範囲は、治療効果や予後に影響を与える重要な因子です。ただし、近年の治療法の進歩により、リンパ節転移があっても適切な治療で良好な経過をたどる患者さんが増えています。
非小細胞肺がんの生存率
国立がん研究センターのデータによると、肺がん全体の5年相対生存率は約35%とされています。しかし、これは早期から進行期まで全てのステージを含む平均値です。
リンパ節転移がある場合のステージ別の5年生存率の目安は以下の通りです(2025年時点のデータに基づく)。
| ステージ | リンパ節転移の状態 | 5年生存率の目安 |
|---|---|---|
| ⅡA期 | 肺門リンパ節への転移あり、または腫瘍が大きい | 約50-60% |
| ⅡB期 | 肺門リンパ節への転移あり、かつ腫瘍が大きい | 約40-50% |
| ⅢA期 | 縦隔リンパ節への転移あり(手術可能な場合) | 約25-35% |
| ⅢB・ⅢC期 | 広範囲のリンパ節転移あり(手術困難な場合) | 約10-20% |
これらの数値はあくまで統計上の平均値であり、患者さん個々の年齢、全身状態、がんの組織型、遺伝子変異の有無、治療への反応などによって大きく異なります。
小細胞肺がんの予後
小細胞肺がんは増殖速度が速く、早期からリンパ節や他臓器への転移を起こしやすい特徴があります。そのため、非小細胞肺がんと比べて予後は厳しい傾向にあります。
しかし、抗がん剤や放射線治療への感受性が高く、適切な治療により症状の改善が期待できます。限局型小細胞肺がんの5年生存率は約20-30%、進展型では約1-2%とされています。
リンパ節転移がある場合の治療選択肢
リンパ節転移が確認された場合の治療方針は、転移の範囲、がんの組織型、患者さんの全身状態などを総合的に判断して決定されます。2026年現在、以下のような治療法が選択肢となります。
手術療法
リンパ節転移があっても、転移が限局的で手術により完全に切除できると判断される場合は、手術が検討されます。
標準的な手術では、がんのある肺葉の切除とともに、リンパ節郭清(リンパ節の切除)が行われます。これにより、転移したがん細胞を取り除くとともに、正確な病期診断を行うことができます。
手術の方法には、従来の開胸手術のほか、胸腔鏡を用いた低侵襲手術があります。胸腔鏡下手術は、傷が小さく、術後の回復が早いという利点があります。
化学療法(抗がん剤治療)
手術前後の補助療法として、あるいは手術が困難な場合の主要な治療法として、化学療法が行われます。
非小細胞肺がんでは、プラチナ製剤を中心とした併用療法が標準的です。また、がん細胞の遺伝子変異(EGFR、ALK、ROS1など)が見つかった場合は、それに対応した分子標的薬が使用されます。
小細胞肺がんでは、プラチナ製剤とエトポシドの併用療法が標準治療です。
放射線療法
リンパ節転移に対する局所的な治療として、放射線療法が行われます。特に、手術が困難なⅢ期の患者さんでは、化学療法と放射線療法を同時に行う「化学放射線療法」が標準治療です。
放射線治療は、原発巣とリンパ節転移を含めた範囲に、通常6週間程度かけて、合計60グレイ程度の放射線を照射します。最新の技術として、IMRT(強度変調放射線治療)などが用いられ、正常組織への影響を最小限に抑えながら治療できるようになっています。
免疫療法
近年、免疫チェックポイント阻害薬が肺がん治療に大きな進歩をもたらしています。
非小細胞肺がんでは、ⅢB・ⅢC期やⅣ期の患者さんに対して、化学放射線療法後の維持療法として、あるいは化学療法との併用療法として、免疫チェックポイント阻害薬(デュルバルマブなど)が使用されます。
小細胞肺がんでも、進展型に対して免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用が標準治療となっています。
免疫療法は、患者さん自身の免疫力を活性化してがん細胞を攻撃する治療法で、従来の治療法では効果が得られなかった患者さんでも、良好な治療効果が得られる可能性があります。
治療後の経過観察の重要性
肺がんの治療後は、再発や転移の早期発見のために、定期的な経過観察が必要です。
特に、手術後2-3年以内は再発のリスクが高い時期とされています。CT検査や血液検査などを定期的に受けることで、万が一再発や新たな転移が見つかった場合でも、早期に対応することができます。
再発予防のための補助療法(術後化学療法や分子標的薬、免疫療法)が行われることもあります。これらの治療により、再発リスクを低減できる可能性があります。
日常生活で気をつけること
リンパ節転移が見つかった患者さんが日常生活で心がけたいポイントをご紹介します。
禁煙
喫煙は肺がんの最大のリスク因子です。診断後も喫煙を続けると、治療効果が低下し、再発リスクが高まります。禁煙は治療効果を高め、生存率を改善するために最も重要です。
栄養管理
バランスの取れた食事を心がけ、十分な栄養を摂取することが大切です。治療中は食欲が低下することがありますが、少量ずつでも栄養価の高い食事を摂るようにしましょう。
適度な運動
体調に合わせて、無理のない範囲で体を動かすことが推奨されます。散歩などの軽い運動は、体力の維持や気分転換にも役立ちます。
ストレス管理
がんの診断や治療は、心理的な負担が大きいものです。家族や友人、医療スタッフに相談したり、必要に応じて心理的サポートを受けたりすることも大切です。
医療チームとのコミュニケーション
リンパ節転移の治療では、複数の診療科(呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、腫瘍内科など)が連携して治療にあたります。
治療方針について疑問や不安がある場合は、遠慮なく担当医に質問しましょう。セカンドオピニオンを求めることも、患者さんの権利として認められています。
また、看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなど、さまざまな職種の医療スタッフが患者さんをサポートしています。治療中の不安や悩みは、遠慮なく相談することが大切です。
おわりに
肺がんのリンパ節転移は、治療方針や予後に影響を与える重要な因子ですが、医療技術の進歩により、治療の選択肢は広がっています。
特に、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新しい治療法の登場により、リンパ節転移がある患者さんでも、良好な治療効果が期待できるようになってきました。
大切なのは、正確な情報に基づいて、患者さん自身が納得できる治療を選択することです。医療チームとよく相談しながら最適な治療計画を立てていきましょう。

