腫瘍マーカーとは、がん細胞でたくさんつくられるタンパク質や酵素のことです。
がんがあるかどうか、どのようながんがあるか、どのくらい進行しているかなどを知るための、有力な指標となります。肺がんでは、つぎの腫瘍マーカーが、有用なものとして使われます。
CEA
CEAは、もともと大腸がんの腫瘍マーカーとして使われていました。その後、肺がんなどほかのがんの腫瘍マーカーとしても有力な指標となることがわかりました。
肺がん全体では、CEAが陽性になる確率は約50%です。したがって、肺がんがあるかどうか(感度)、また肺がんかほかのがんかの区別(特異度)にはあまり有用ではありません。
しかし、肺がんと確定され、抗がん剤治療などを受けたときはその効果があるとマーカー値が低下し、再発すると上昇するので、治療経過のチェックには役立ちます。
SCCとCYFRA21‐1
SCCとCYFRA21‐1は、肺がんの扁平上皮がんの腫瘍マーカーです。SCCでは、扁平上皮がんの約60%が陽性になります。扁平上皮がんだけでなく、ほかの組織型のがんでも20~30%は陽性になります。
CYFRA21‐1は、SCCよりも陽性率が高く、治療効果や再発・進行の経過についても正確に反応を示します。
NSEとPrOGRP
NSEとPrOGRPは、肺がんのうち、小細胞がんに特異的な腫瘍マーカーです。PrOGRPのほうがNSEと比べて、治療効果や再発・進行時の反応において信頼性が高いものです。どちらも非小細胞がんでも陽性を示すことがあります。
ただ、非小細胞がんの場合には、抗がん剤や放射線への感受性が高いといわれています。
SLX
SLXは、肺がんの腺がんに比較的特異的な腫瘍マーカーです。肺がんの進行をチエックするケースでは、より陽性率が高くなります。
このように肺がんの増悪や減少を確認するための腫瘍マーカーはいくつかの種類があります。腫瘍マーカーは、血液検査でおこなえるために使いやすいといえます。
ただし、それはあくまでも補助診断に使われるものです。なぜなら、腫瘍マーカーで陽性と出ても、肺がんではない場合もありますし、肺がんでも陽性と出ない場合もあるから
です。つまり、腫瘍マーカーは陽性率や治療効果、再発・進行の判定などには有用ですが、がん発見のためには必ずしも有用とはいえない限界もあるということです。
肺がんの確定診断のためには、やはり病理生検査などのきちんとした肺がんの検査が必要です。
以上、肺がんの腫瘍マーカーについての解説でした。