肺がんの場合、肺以外の周囲にがんが進展する(拡がる)ことで、さまざまな症状があらわれます。
1.肺野型の肺がんは胸膜に近いため、がんが胸膜を侵すと胸に水が溜まり(胸水貯留)、胸が痛くなる(胸痛)ことがあります。
2.肺の1番上の部分(肺尖部。はいたんぶ)にがんができると、近くを通っている腕を動かす神経にがんが拡がり、腕が痛くなったりしびれたりします。これを、パンコースト症候群といいます。
3.胸の真ん中の部分(縦隔)には大きな血管や心臓などが入っていますが、ここにがんが拡がると、上半身から心臓に血液が戻りにくくなり、顔や腕がむくみます。これを、上大静脈症候群といいます。
4.発声をコントロールする神経(反回神経)にがんが及ぶと、声がかすれます(嗅声)。
5.がんが横隔膜にまで及ぶと、呼吸困難になることがあります(横隔神経麻揮)。
6.首の神経にがんが拡がると、がんのある側のまぶたが垂れ下がって瞳孔が小さくなり、顔の半分で汗をかきにくくなるなどの症状が起きます。これを、ホルネル症候群といいます。
また、肺がんは隣りあっている臓器や組織だけでなく、遠くの臓器にも転移することがあります(遠隔転移)。その際、肺がんとはまったく関係なさそうに思える症状が出ることもあります。たとえば、脳に転移した場合は頭痛、骨に転移した場合は肩痛や腰痛などが生じます。
そのほかにも腫瘍ができたときに出やすい症状があります。たとえば肺がんの70%でみられる「ばち指」は、太鼓のばちのように指先が太くなった症状です。また、小細胞がんでは、腫瘍から過剰にホルモンがつくられて、つくられたホルモンによってさまざまな症状が出ます。
ほかにも、神経や筋肉が障害されて筋肉の力が低下したり、皮膚に色素沈着や皮層筋炎がみられることがあります。
以上、肺がんについての解説でした。