膵臓がんは、初期にはあまり症状がありません。
症状が現れてもほとんどは、胃のあたりがなんとなくおかしい、食欲がない、背中が重苦しいといった漠然とした症状です。がんが成長すると、腹部に鈍痛が生じる、背中や腰が痛む、嘔吐・下痢をする、全身がだるい(脱力感)などの症状が現れます。
また多くの患者では、膵臓内を走る胆管ががんによって圧迫されたり詰まったりするため、黄疸が現れます。
膵臓のはたらきが衰えて、糖尿病の症状がいっきに悪化することもあります。しかし、こうした明らかな症状を自覚したときには、すでに膵臓の周囲の組織や臓器、リンパ節にもがんが広がり、手遅れの状態になっていることがふつうです。
なお、まれな膵臓がんである膵内分泌性腫瘍になると、多くの場合、ホルモンが過剰に分泌されます。その結果、ホルモンの種類に応じた症状(低血糖や胃腸の潰瘍など)が現れます。
膵臓がんの原因と発症リスクの高い人
膵臓がんを発症する原因ははっきりとはわかっていません。
日本の膵臓がんの患者は急速に増加しており、アメリカでもやはり急増していると報告されています。そのため、近年の生活環境やライフスタイルの変化に膵臓がんを発生させる要因があると見られています。
確実な危険要因とされているのは喫煙です。喫煙者はそうでない人よりも発症率が2~3倍高いことがわかっています。その他、肉食中心の食生活を送る人、糖尿病患者、慢性膵炎の患者も、膵臓がんになりやすいとする研究もあります。
他方、野菜や果物、緑茶などは膵臓がんの予防に効果があるとされています。膵臓がんの発症には、遺伝が関係する場合もあります。アメリカのカーター元大統領は、父親と3人の兄弟を膵臓がんで亡くしており、家族性(遺伝性)膵臓がんの家系であることが知られています。
家族性膵臓がんの遺伝子はまだ特定されていないものの、近年、遺伝しない膵臓がん(散発性膵臓がん)の発生と深く関係している遺伝子が相次いで発見されています。
たとえば、膵臓がんの細胞の約90パーセントはがん遺伝子のひとつ、kラス遺伝子に変異が生じていることがわかっています。またDPC4遺伝子やp16遺伝子、p53遺伝子も、高い確率で変異が起こっていることが明らかになりました。そこで今後、これらの遺伝子についての研究が膵臓がんの診断や治療に役立つことが期待されています。
以上、膵臓がんについての解説でした。