まず、男性の膀胱がん発症率は女性の約3倍で、多くは40歳以上に発症します。
また喫煙者の膀胱がん発症率は非喫煙者の2~3倍に達し、タバコがのどや肺だけにがんをつくるのではないことがわかります。尿路結石をもつ人も、このがんの発症率が高くなっています。
また、ふだんの生活環境の中で触れている物質も問題になります。すなわちゴムや皮革の製造加工業、機械工、金属加工業、美容師、トラック運転手などが統計的に膀胱がんを発症しやすいとされています。
なかでも、さまざまな分野で使われている色素(アニリン系)を扱う職業に膀胱がんが多発することは、20世紀初頭から知られていました。日本では知られていませんが、海外では、特殊な膀胱の感染症からがんになる例も報告されています。
すべての膀胱がん患者に共通するものではないものの、喫煙者で膀胱がんを発症した人には、高い頻度で、代表的ながん抑制遺伝子である「p53」に特定の突然変異が起こっていることが明らかになっています。
そして、喫煙によって引き起こされるこの変異が、膀胱がんのリスクを高める要因になっているとされます。
膀胱のしくみと膀胱がんのタイプ
膀胱は、尿を一時的にためておく袋状の器官です。
その位置は、男性では直腸の前、女性では膣と子宮の前で、いずれも骨盤の内部にあります。排尿直後の膀胱はしぼんで洋ナシのような形をしていますが、尿がたまるとふくらみ、300ミリリットル(cc)から、人によっては500ミリリットル以上の尿をためることができます。
これは、膀胱をつくっている3重の筋肉質の層が、ゴム風船のように伸縮性に富んでいるからです。この筋肉が伸びると尿意が脳に伝わり、筋肉の収縮によって排尿します。膀胱がんの90パーセントは、これらの層のうち、膀胱の内側をおおっている粘膜層に発生します。
膀胱がんは大きく3種類に分けられます。第1は膀胱の壁の内側に突き出すように成長するもので、表面がカリフラワーのようにぶつぶつになります。これを「乳頭がん」または「表在性がん」と呼びます。これは、成長してもがんが粘膜層にとどまっていることが多いので、治療は比較的容易です。
しかしこのがんは、進行すると粘膜の下の筋肉層に入り込むことがあります。第2のがんはこぶのようにもり上がっているものの、表面はなめらかな「非乳頭がん(浸潤がん)」です。膀胱壁を貫通して浸潤したり、他の臓器に転移しやすい悪性度の高いがんです。
そして3番目は、がんがもり上がらず、粘膜層に沿って水平にばらまかれたように広がる「上皮内がん」です。進行は比較的遅いものの、放っておくと粘膜の下の組織にも浸潤します。なお膀胱の周辺ではしばしば、腎臓から膀胱へと尿を送り込む尿管にもがんが生じます。
以上、膀胱がんについての解説でした。