エタノール注入療法のおもな副作用は、発熱と痛みです。そのほか、肝臓の機能の低下、胆管閉塞、出血、肝膿瘍などの可能性もあります。
痛み
ほとんどの場合、エタノールを注入したときと針を抜くときに、強い痛みを感じます。とりわけ肝臓の表面や横隔膜、腹膜などにエタノールがもれ出したときには、激痛を感じます。
痛みは腹部に感じることがふつうですが、治療した場所によっては、右肩や腕などにも痛みが広がることがあります。この痛みはたいていはすぐにおさまりますが、エタノールが肝臓の表面などにもれ出したときなどには、痛みが続くことが少なくありません。このような場合は、鎮痛薬を投与して痛みを和らげます。
発熱
治療の翌日、約半数が37~38度Cの熱を出します。熱がそれ以上に上がったときには、解熱剤を投与することもあります。
肝臓の機能の低下
治療後、肝臓の機能が低下することがあります。これまでの報告で、この機能の低下は一時的なもので、まもなく回復することがわかっています。
また、肝臓の門脈にエタノールが流入し、そのために血液が固まって血栓ができることがあります。その結果、肝臓の一部が壊死し、肝臓の機能が低下することがあります。門脈の血栓はとくに治療しなくても自然に治ることが多いので、通常はしばらく経過を観察します。肝機能が低下したときには、治療を数日~1週間ほど休み、機能が回復するのを待ちます。
急性アルコール中毒
アルコールに弱い人は、治療後、酔ったような状態になることがあります。ひどいときには急性アルコール中毒に陥ります。このような場合には、輸液(点滴による水分の補給)などを行って治療します。
出血
エタノール注入療法は、出血の危険が比較的少ない治療法です。というのも、肝臓に針を刺すとはいえ、エタノールには血液の凝固作用があるため、エタノールを注入した部分からは出血しないからです。
しかし、肝臓まで針を通す際に、腸や大網(胃から腸をおおう脂肪の網)を突き刺すと、腹の中に大量に出血するおそれがあります。医師は、あらかじめ針を通すルートを確認しているため、このようなことはめったに起こりません。万一、出血が起こった場合には、血液凝固剤などを投与して、出血を止める処置をします。
胆管閉塞
治療後、まれに胆管が狭くなったりふさがったりして、黄疸の症状が出ることがあります。胆管炎になることもあります。これは、エタノールが胆管の中に流れ込み、胆汁を固まらせるためです。エタノールによって壊死した肝臓の組織が、胆管を詰まらせることもあります。
経過を見て、黄疸が消失しないようなら、胆汁を針で吸いとる、胆管のふさがった部分を押し広げるなどの処置を行います。
肝膿瘍
治療後、肝臓に膿瘍ができることがあります。これは、エタノールによって壊死した肝臓の組織が化膿し、膿や組織からにじみ出た液がたまっている状態のことです。エタノールには殺菌作用があるため、膿瘍ができるのはまれです。
しかし、高熱や白血球の増加から膿瘍が疑われるときには、抗生物質を投与します。膿瘍が確認されれば、針を刺して膿を吸いとる方法で治療することもあります。
以上、肝臓がんのエタノール注入療法についての解説でした。